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<主張>慰安婦問題の早期解決、韓日関係の改善を望む…賢明な判断と処置で
慰安婦問題での合意を発表する尹炳世外交部長官(右)と岸田文雄外相=2015年12月末
 慰安婦問題をめぐって韓日関係が冷え込み、硬直し始めた。事の発端は、昨年末の駐釜山日本総領事館前への慰安婦を象徴する少女像設置だ。日本政府は駐韓大使と駐釜山総領事を一時帰国させるなどの厳しい対抗措置をとった。

 事態を重く見た民団は、さる1月12日に東京都内で開かれた民団新年会で、呉公太団長が「釜山の慰安婦少女像をなくすことが、在日同胞の総意だ」と表明した上で、一昨年末の韓日外相による「合意」の早期履行を重ねて求めた。それが、慰安婦ハルモニの尊厳と名誉回復につながるものと確信したからである。また、同問題のこじれによって韓日関係が再び悪化しないことを願っての発言だった。

 韓日関係が冷え込めば、その影響をダイレクトに被る在日韓国人のリーダーとして当然の意思表示だ。韓日関係は、在日韓国人にとって非常に大きな関心事である。関係が良好であってこそ、在日社会も安定でいられるからだ。

 「韓日合意」で日本側は、「当時の軍の関与の下に多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた」とした上で、「日本政府は責任を痛感」し「安倍首相が心からおわびと反省の気持ちを表明する」と発表した。

 24年もの長きにわたって両国間で交渉した末に、「最終的かつ不可逆的に解決される」ことを謳ったものであり、民団は両国の地道な外交努力がもたらした歴史的な合意であると、中央団長名の談話を発表した。

 翌年1月には、韓国を代表する主要3紙に「未来志向的韓日関係構築…私たちは信じる‐韓日間『日本軍慰安婦被害者問題』妥結に対する在日同胞の訴え」との意見広告を出した。同問題に対する民団の立場を初めて本国に対しても公式に鮮明にしたものだ。

 韓国と日本の冷え込んだ関係が、この「合意」を契機に徐々に改善されつつあった。「合意」に基づいて、韓国政府が設立した「和解・癒やし財団」に日本政府は国庫から10億円を拠出し、現在生存している元慰安婦ハルモニ39人中、34人が支援金の受け取りを表明したという。

 民団としては、ハルモニらに静かな余生を送ってもらうことが何よりも大切なことだと思ってきた。その矢先の釜山の慰安婦少女像問題である。

 もちろん、「韓日合意」の内容そのものを否定する声が韓国内にあることも承知している。韓国政府が日本政府に対して「努力」を約束したソウルの日本大使館前の少女像の適切な場所への移転が進まないのも、こうした声を配慮したものと理解している。

 いわゆる少女像は、慰安婦問題を訴えるための象徴として制作・設置された。被害者であるハルモニの人権救済と支援、旧日本軍の非人道的な蛮行を世界中にアピールし、日本人の良心にも充分訴えてきた。

 「合意」後も韓国内には慰安婦少女像が設置されたが、外交的に問題視されなかったし、民団もその事実を特に問題としてこなかった。あえて釜山の日本公館前に設置したことを、問題だとしているのである。

 日本公館を標的に慰安婦少女像存続に固執することは、日本をことさら刺激する行為に他ならない。さらに新たな日本公館前での少女像設置の動きもあると聞くが、それは火に油を注ぐことにしかならない。領土問題とからめようとする動きについては言語道断であり、問題解決から逆行する行為と言わざるを得ない。

 さらに、国際社会も「公館の安寧・威厳の維持」を定めたウィーン条約の義務事項の観点から、非難の目を向ける恐れがある。

 日本側の10億円拠出と韓国側の公館前慰安婦少女像移転が前提条件でなかったとしても、少女像をめぐる紛糾が長引けば、「韓日合意」の精神は後退し、国家間の約束は宙に浮いてしまう。韓日関係は泥沼化しかねない。

 民団は、当事者の元慰安婦ハルモニの一部が「合意」内容反対の意思表示をしている事実を尊重しつつも、同時に多数のハルモニは受け入れを表明している事を重く受け止めている。

 たとえ、「合意」の中身が最善でなかったとしても、両国政府が外交交渉で決めた「約束事」であることは、厳然たる事実として認めなければならない。万一、国家間の約束を反故にすれば、その非は韓国にあるとの国際世論が形成され、その国際的な信用を損うことは明らだ。

 北韓の常軌を逸した核の恫喝、THAAD(高高度防衛ミサイル)をめぐる中国との緊張関係、同盟国である米国の新大統領就任による先行き不透明感等、韓国をめぐる情勢は極めて不安定な要素をはらんでいる。このような情勢下に日本との外交的摩擦が拡大してはならない。

 何としても避けなければならないのは、韓日関係の悪化であり、韓国側の行為を口実に日本の一部が嫌韓感情へとエスカレートし、ヘイトスピーチにつながる事である。レイシストらに付け入る隙を与えてはならない。それは、ヘイトスピーチ対策法を勝ち取った努力が水泡に帰すことにもなる。

 元慰安婦ハルモニ被害者には残された時間があまりない。

 両国政府が歴史的な「韓日合意」を滞りなく履行することを強く期待し、民団としても、ともに解決に参与していく所存である。改めて韓国国民と日本政府の冷静かつ賢明な判断を望んでやまない。

 一衣帯水の隣国が、友好親善を軸に今後も対話と協力を重ねながら、様々な分野で未来志向のよりよい安定した関係づくりへ進むことを望み、民団としてこれまで以上に韓日の懸け橋としての役割を果たしたい。

(2017.1.25 民団新聞)
 
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