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「学生無年金障害者訴訟」で東京地裁は「国は立法不作為による損害賠償責任を負う」という画期的な判決を出しました。これを受けて、無年金障害者問題が今国会の焦点の一つになっていることを率直に歓迎します。
ところが、日本の政府・与党で構成されている年金制度改革協議会の合意文では救済対象を「学生等」としており、在日外国人を含めることには自民党内部で根強い異論があることがうかがえます。
坂口試案に反する与党案
これはどういうことでしょうか。もし、在日外国人を排除した法案が今国会で成立するならば、それは坂口力厚労相が2年前に示した「試案」の趣旨に反するばかりか、今回、東京地裁が判決で示した「法の下の平等」をも踏みにじることにならないのでしょうか。
坂口試案が示されたのは、全国9カ所に広がった学生無年金訴訟がきっかけでした。当初、試案の救済対象には在日外国人が含まれていませんでしたが、「法制上からも対象者は無年金障害者をすべて同様に取り扱うことが妥当である」との結論に達したと聞いています。
しかしながら、国民年金の未加入、未払い者まで対象に含めるなど、救済の範囲を拡大したことで、かえって実現性が遠のきました。その点、制度の欠陥により無年金となった蓋然性が高いとして「在日外国人」、「学生」、「主婦」、「在外邦人」の4類型をまず優先して救済するとした民主党案は現実的といえます。制度の不備で無年金者を生み出した以上、制度でこそ是正を図るべきなのです。
「学生等」より被害は深刻
これに対して自民党内には「学生、主婦は年金制度の枠内にいた。加入資格がなかった在日外国人とは違う」という意見があると聞きます。在日外国人排除のためならば、いかなる理屈も許されるというのでしょうか。「加入資格がなかった」のではなく「入りたくても入れなかった」のです。
今判決の趣旨に添っていうならば、在日外国人障害者も学生無年金障害者と同様に救済されるべきなのです。いや、国民年金制度発足以来、長年にわたって放置されてきたことを考えるならば、被害の実態は学生無年金障害者よりも一層深刻といえるでしょう。
なぜならば、私たちは障害者ばかりか、戦前・戦中・戦後と辛酸をなめさせられながら無念金状態に置かれた高齢者も抱えており、二重の負担を強いられているからです。
私たちは国民年金制度発足時から一貫して制度の不備を指摘し、その是正を求めてきました。にもかかわらず自民党は検討するとしながら解決を引き延ばしてきました。
今国会でこうした立法不作為状態を制度として是正されるよう求めます。
(2004.4.28 民団新聞)
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