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<辛口座談会>何がカギに?「韓流」の未来
写真左から、古家正亨、金承福、田代親世
次々と発行される韓流関係の雑誌(左)。 韓流やK-POP関連のスマホ用アプリは数え切れないほど多い
K-文学振興委員会主催の「日本語で読みたい韓国の本−おすすめ50選」の説明会(6月4日、東京新宿区の韓国文化院)

 ドラマ「冬のソナタ」が火を付けた韓国エンタメ・ブームが韓流と呼ばれるようになって10年。現状と展望を専門家が語り合った。


◆古家正亨さん
(ふるや・まさゆき)ラジオDJ/テレビVJ/韓国大衆文化ジャーナリスト
◆田代親世さん
(たしろ・ちかよ)韓流ナビゲーター/脚本家
◆金承福さん
(キム・スンボ)出版社「クオン」代表



■□
「嫌韓でも 本当のファンは…」「愛してくれる人々に配慮を」

メディアに功罪も <古家>
書籍は情報足りず <金>
原作には飛びつく <田代>

▽悪化した韓日影響はどうか
 田代親世 影響のある分野はもちろんある。でも、日本人ってわりとそれはそれ、これはこれと、文化と政治を分けて考えるところがあります。去った人もいると思いますが、すべての面でいろいろふるい落とされて、落ち着いて来ている感じだなと。たぶん、今残っている人はそういうのに左右されずに、本当に好きっていう人たちです。

 古家正亨 ほとんどその通りだと思います。最近、今までK―POPが大好きだった若い子たちの間に少し嫌韓ブームが広がりつつあるようです。それもこの数カ月の間に。その流れで考えると、今は過渡期なのかなって気がします。

 日本人は政治とか歴史とか日韓間問題に関係なく、良い物は良いとある程度、割り切って考えていたと思う。ところが、昨年からの流れはいろいろなところにしわ寄せが出て、僕自身も仕事がぐんと減った時期もありました。

響く政治的発言

 2010年にKARAが上陸してから、それまであまり関心を示さなかった10代、20代前半の若い人たちが興味を持ち始めた瞬間から、こぞって地上波が「韓流、韓流」「K―POP、K―POP」と騒ぎ始め、それまではサブカルチャーとして成り立っていた文化を、大衆文化のひとつのジャンルとして確立させようとする雰囲気が出てしまった。好きな人が好きでいればきっと何も変わることなく定着していたはずです。それが逆に「韓流いいだろ!」みたいな雰囲気が生まれてしまった。

 それがある意味、嫌韓を促すひとつの流れになってしまったという部分で、メディアの功罪って考えた時に、日本のメディアが及ぼした影響ってすごく大きい。フジテレビへの反韓流デモとかよく取り上げられましたけど、流れから言うと起こってしかるべきだったのかなと思います。

 一方、韓国側において残念だったのは、2010年以降のK―POPのブームの中で、特にアイドルが国内向けとは言え、政治的発言をしてしまったことです。国内だけでなく世界各国で活動していて、その中でも日本は一番大きな市場です。そういうところの配慮がなかった。

 過渡期と言ったのは、日韓双方の関係者がこれから、どこに向かって韓流を牽引していくかを考える意味で、すごく大事な時期だからです。

場違いな質問も

 田代 自分のことを愛してくれる人への配慮は必要です。うまくかわしてくれればいいんですよ。ペ・ヨンジュンさんは、そこは上手に答えていました。

 韓国のマスコミに言いたいですね。マスコミは2つの国をもっと仲良くすることだってできるのに、なぜ引き裂くような質問を投げかけるのかって。アイドルも俳優もそうだけど、聞く方も考えるべきですよ。新譜とか何かの制作発表の会見場で政治的なことは聞く内容ではないでしょう。

 金承福 私は日本人の中で仕事をやっていますが、海外戦略のために、アーティストはポリシーをどう発言するか、私も気になっています。もちろん作品発表会などでメディアが聞くのは間違いだと思うけど、場所を選べばそういう質問に対し、アーティストがどう発言するのかはすごく興味がある。ヨン様は「うまく答えた」とおっしゃったんですけど、ヨン様のポリシーがどんなものなのか、やはり聞いてみたい思いはありますね。

 田代 ペ・ヨンジュンさんは、自分の役目は国家領土の間に線を引くことではなく、アジアのファンたちの心と心の線をつなぐことだと思っていますと答えたので、私は感動しました。どちらの立場からも納得だと思える素敵な答えだったと思います。

 金 日本人にとっても、韓国人にとっても満足できる答えはたぶんないと思います。

 古家 韓国のアイドルたちは徹底してダンスとか歌とか語学の教育を受けていますが、社会教育に関してはどうでしょうか。10代のもっとも感受性の豊かな時期に、1日13時間、14時間も踊りや歌の"完璧"を求めて練習をしているのはいい。ただその分、まず家族から離され、学校にも行かない。結果的にその中で社会教育を担うのは、所属事務所です。もちろん、ファンを失望させないという教育はしているでしょう。ただ、歴史や政治的教育に関しては、若すぎて個人の感情がうまくコントロールできるはずがありません。だから、その場の答えがポロっと出てしまうことも。

 それをうまく処理できたのがKARAだったと思います。彼女たちは"答えなかった"ことに対し、韓国からバッシングを受けましたが、でも日本的にはすごく良かったと思うんです。

 今、世界市場をターゲットに韓流は広がっています。当然それに併せて俳優や歌手も世界化していかなければいけない時期で、その教育という部分でポリシー、プライド、アイデンティティー、この辺をどう築くかというのがすごく難しい。

▽苦戦する文学…質は高いのに

初読者を大切に

 金 出版社を立ち上げて3年です。現状は今、日本で韓国の文芸作品は多い時で年間20点、少ない時は10点くらしか紹介されません。その中でも多いのは映画やドラマの原作です。韓国では年に900から1000点、日本の文芸作品が紹介されています。ここまで韓流が定着したというけれど、出版物・文学に関してはまだまだこれからだと思います。

 書店やネットで販売していますのでお客さんの顔が見えません。それで、裏付けを取るために読書感想文大会を全国でやってみました。300点以上の感想文が来ましたが、80%以上が社会人です。その中でも半分以上が男性。小説は、20代、30代女性が多く読むということを聞いていたのですが、社会人男性が多かったので驚きました。

 うちの会社では「K文学」を読む人を4パターンに分けてマーケティングをしています。まず、もともと小説を読むのが好きな人。次は在日の方で、韓国語は読めないけど韓国文学に接したい方。それから日本人でもともと、韓国が好きな人。年配の方が多いですね。それと韓流ファンですね。この人たちは親しみを感じて、文学にまでたどり着いたのではないでしょうか。

 これから注目したいのは、韓流ドラマやK―POPが好きで、韓国の小説が初めてっていう人たちです。そういう人たちは発言もするので声がすぐ届きます。この人たちに向けて、ポップな感じのものを提供したいと対策を練っています。

 古家 韓国はノンフィクション関連でも面白い作品がたくさんありますよね。本の文化自体、全然違うから、それ自体を知らせる方法をもう少し考えたらいいですね。

読者層広い日本

 金 そうなんです。日本は読者層の幅が広いので、いろいろなジャンルを紹介したい。うちは韓国文学をメーンでやっていますが、日本の出版社向きに韓国の書籍情報を発信するため「K―文学振興委員会」をつくりました。実は「情報がないから出せない」という編集者が多かったので、韓国の面白い本を集めて『日本語で読みたい韓国の本―おすすめ50選』というガイドブックを作って説明会もやりました。そしたら150人くらい集まった。ほとんど出版関係者です。説明したらすぐその場で仲介して欲しいっていう本も決まったりして。だからこれからかな。

 古家 情報を欲しているのでしょうね。結局、ネットって、何かきっかけの情報がなければ自分で調べられないので、そういうきっかけ作りって大事かもしれない。

 金 そう思います。韓国文学に関して情報発信をすることに力を入れたい。本を出すのはもちろん大事ですけどその前提になりますから。

 古家 韓国にはこんなの絶対、日本で出せないよなという面白いものがたくさんあります。個人的には漫画家のカンプルさんが好きですが、全部インターネット漫画を本にしています。これも日本にない文化です。

働くオタク心理

 田代 最近、韓流ファンは映画やドラマの原作があると知ったら、そこから調べてたどり着くっていうのは多いですね。ドラマを見てすごく良かった作品の原作というのは、やっぱり読んでみたいなって手に取るというパターンです。

 制作発表会で俳優たちが、原作を面白く読んだけれどドラマも面白いって言う。そうするとドラマはドラマですごく面白いけれど、原作とどう違うのかなって。オタク心理が働くわけですよ、比べてみたいなと。

 金 漫画も文学も情報がないというのは本当にそうです。あと、今まで出版された文学作品からヨン様クラスが現れていない。それで、ほかの出版社も火が付かない気がします。早くヨン様のような人が出て欲しい。

実力歌手に注目

 古家 そう考えると実は、音楽も一緒です。K―POPが日本で流行っているとかブームだとか言っていますけど、僕、今まで1回もK―POPがブームだって言ったこと自分の中でないんですよ。それは自分なりにポリシーがあって、そもそもK―POPってなんなのって話ですね。

 日本におけるK―POPの定義って、アイドル音楽です。でも僕からしてみたらK―POPは、アイドルではなくて、韓国の大衆音楽の事を指すべきだと思います。それから考えると文学と同様で、ブームと言える状況になっていない。

 韓国の本当の音楽の魅力や文化に触れたいのなら、実力があって、日本人にはないものを持っているバラードをはじめとするソロ歌手たちにもっと注目すべきです。ソロ歌手の皆さんも日本にたくさん進出していますが、ほとんど成功は収めていません。完全にアイドルに偏っているから。旧態依然としたビジネスモデルのままというか、10年前と一緒です。

 例えば、アメリカやイギリスのアーティストが、日本で活動する際、日本進出とかいちいち言わないですよね。ただ普通に来て、ライブをやって帰ればいいだけです。好きな人は好きだし、ブームになるときはブームになるでしょ? それが今まで、日韓関係の中でちょっとおかしなビジネスモデルが形成されてきた。日本でこれだけ映画とかドラマが受け入れられているのに、本質的な音楽は、本当にまだまだ受け入れられていません。この10年間で文学はこれからっておっしゃっていますけど、音楽もこれからというのが現状です。

■□
「裾野は広がった。淘汰が進む」「ドラマや映画は一流ぞろい」

しのぎ削る作品群 <田代>
音楽も本物志向を <古家>
文学に力 必ず定着 <金>

▽POPに逆風 ドラマは強い

アイドルに偏り

 田代 韓国においても同じ現状で、アイドル頼みで作った作品とかもあまりヒットはしないけれども、日本にくるとヒットすることもある。それは嗜好性の違いだと思います。音楽はアイドルに偏っているとは思いますが、ドラマは時代劇からラブコメ、若者向けまで幅広く入ってきているから、そこまで問題という感じではないですね。

 古家 映画は本当に魅力的ですよね。ドラマもいろいろなジャンルがあって、「飽きてきたなこの復讐物」と思ったら、違う変化球で来たり、もう手を変え、品を変えてきますよ。

 でも、音楽はワンパターンだから飽きられ、ブームの低下に結びついている。映画とかドラマが10年をかけて築いてきたものを、音楽はたった3年で、10年分のことをやろうとしたわけです。そりゃ、定着はしませんよ、絶対。大衆文化は本来、自然に広がっていくものです。

 田代 ドラマも映画も韓国で一流を目指して作られたものが日本に来ます。K―POPは韓国でデビューする前に日本に来たり、十分なレベルに達していないのに日本で稼ごうとしているみたいな、そういうところが透けて見える。ちょっとそういうのが増えて来ましたよね。

 金 やっぱりビジネスとしてだけ見ているわけですね。

 田代 金儲けだよねっていう感覚でとらえる方も当然、いますよ。ドラマとか映画はしのぎを削って作られた作品が来るわけです。またたとえ、韓国で数字が低くても面白かったりします。

 K―POPはドラマや映画と入って来方が違うと思います。だから、好感が持てなかったりするときもありますよ。いきなり武道館でやるのはいかがなものかと。ミュージシャンの憧れの殿堂の地で、一から頑張ってきた人がようやく武道館だっていう場であってほしい、日本人として。それが、「えっもう武道館でやっちゃうの?」みたいな複雑な気持ちは感じます。

 金 確かに、武道館の価値に対するその認識がまだ無いですね。世宗文化会館大劇場でやるっていうのは、韓国ではすごく名誉なことだけど、それくらいのものと思っていない。

 田代 東方神起はそのストーリーがちゃんとありました。本当に小さい会場から始めて、みんなが今も応援しているし、武道館で涙を流す彼らを見て、ファンも一緒に良く頑張ったと思えたのはすごく大事です。

若い子が離反し

 古家 若い子が持っている嫌韓の理由はK―POPです。例えば、ドラマや映画の好きな層が今、嫌韓の方に流れていったかというとそうでもない。

 金 そういうことを韓国のメディアや関係者に提案したりはしないのですか。

 古家 僕はかなり働きかけてきました。韓国で行われるフォーラムなどでもしっかり日本人の立場で言ってきました。昨年も一昨年も。その時は話を聞いてくれるんですけど、改善が特に見られることもなくて。

 金 メディアに向けてどんどんやりましょうよ。

 古家 メディアにも言ってはいます。でも結局「なんだ、あいつ」みたいな、そういう感じですよ。ただ僕は韓国側だけを否定しません。日本側にも当然、問題はある。それがお互い、ウィンウィンだからビジネスでつながっている。でもその前に、文化としてドラマや映画が築いてきた10年間をもう一回、見直してほしいですよ。

 まずは何をやるべきなのか。それは、東方神起がどういう道筋をたどって成功を得てきたのかを見れば分かります。今の進出組には、活動の歴史に起承転結がないですね、起結みたいな感じが多すぎる。そこをどうにかしていかないと、やっぱり次の10年は、僕は見えないと思います。特に音楽に関しては。でも映画は全然、心配はいらないと思うんですね。

映画は大丈夫?

 金 でも映画はものすごく数字が悪いとか、全盛期は去ったという話を聞きますが。

 田代 ドラマの方が人気だからですよ。男性は分かりませんが、たぶん、メーンターゲットであるべき女性はドラマを見るのに忙しいですから。それに、映画も待っていればすぐにDVDになるので、経済的な理由もあって、DVDで見ようと思っている方も多いと思います。

 古家 興行成績として大当たりした作品は「シュリ」「私の頭の中の消しゴム」「僕の彼女を紹介します」くらいしかなくて、結局、映画って当たってないのかという感じがします。でも実はそうでもなくて、単館とか、少ない劇場数での公開作品は、確実にお客さんが入っている。大きなビジネスにはならないかも知れないけど、いい作品も多いから固定ファンがしっかりついています。国際映画祭やハリウッドでも評価は高い。

 田代 映画もドラマも心配はないと思います。

▽ユーチューブ活用効果絶大

 古家 じゃ、PSYが救うかというと無理ですね。PSYは日本では受けないですから。PSYが評価されたというよりも、「江南スタイル」が評価されたという気はしますね。あとはユーチューブです。

 金 いつも古屋さんはK―POPの勝利はユーチューブだったと話していますね。

 古家 ユーチューブがなかったらK―POPは絶対、売れていなかったと思います。韓国が良くも悪くも凄いと感じるのは、日本の先を行くネット社会が定着している国だということ。僕は大学院で著作権研究を行っていたのですが、韓国の人たちが著作権のことに関して正直、無頓着なところがありますよね。でも、その感覚とネット社会がうまく融合した結果、この成功があった。

 ユーチューブがカルチャーとして定着したのは、日本の方がはるかに早かったのですが、韓国の人たちはその魅力を知って、世界で最も巧みに活用した人たちだったと思います。でも日本人は活用しきれなかった。権利の問題でアップロードされた映像をどんどん削除されていって、残ったものはほとんど、素人の映像しかないという状況に一時期陥りましたよね。

 でも韓国の人たちは、プロモーションツールとして絶大な力があるということを07年の時点で把握していて、そこから5年間かけて培ってきた。その影響力は果てしなく大きい。あとは、音楽とは"観て楽しむモノ"と再定義したのが誰もが認める韓国の凄いところだと思います。そういうカルチャーは日本にはなかった。日本人は音楽を聴くものだと思っているから、ライブでも日本人はよく大人しいって言われますよね。韓国人は、一緒になって騒ぐじゃないですか。

 金 韓国のアーティストが日本に来て、なんでこんなに静かなんだって言いますよね。

 古家 つまり、K―POPに求めるものはその音楽的なところではなく、「分かりやすい。簡単そう。でもやってみたら難しい」という振り付けやノリ。これに若者たちははまってしまい、アイドルたちのダンスをコピーする人が増え始めた。そういった"新しい"文化をつくったという部分では、韓国のアイドルたちの功績は大きかったですね。

入り口はできた

 金 文学は多分、火が付くと思います。必ずしも楽観的な見通しではありません。私、小さい時から「キャンディキャンディ」や「マジンガーZ」を見て、私たちは韓国のものだと思いました。そういうふうに育って、日本の小説にたどりつくんです。だからアニメーションや漫画などといったものをサブカルチャーとするならば、本格カルチャーとはどういうものなのかって考えるとやっぱり、文学ではないかと。韓国ではそうやって10年、20年をかけて日本の小説ファンが出てきた。そういう読者がいるから本が出てくる。日本での韓流は10年になり、この間に入り口はできた。ちゃんと準備をすれば広く提供できると思います。

相互の交流こそ

 古家 韓国の教保文庫や永豊文庫に行くと、ベストセラーは日本の小説ばかりだったりします。韓国側からすれば相互交流になっていないというのが本音ではないでしょうか。

 金 韓国文学も好きな人が好きになってくれればいいと思っています。「K―文学振興委員会」をつくる前から10年、20年と同好の士が集って、いろいろなところで韓国の文学や原作を読む勉強会って結構あります。

 私たちはそういった人たちに、もっと新しい作品を提供する、それから読書感想文大会を開く、書店で韓国文学フェアを行うなど、1社だけではできないので多くの出版社と組んで一緒にやるとか、仕組みをつくっていきます。また、韓国の作家を呼んで、日本の作家とコラボでトークイベントをするとか、いつもそうして私たちはやってきました。これはすごく効果があります。大きくするより小さくて継続する方法を考えます。

 日本にはとても優れたナビゲーターがいます。田代さんもそうだし、古家さんもそう。各方面に優れた方がいるので、この人たちが力を合わせればいける気がします。翻訳者も結構います。私たちがすべきことは、優れたナビゲーターをしっかりとポジショニングすることだなと思います。

▽待たれるのは第2のヨン様

 古家 この10年で、いろんなことがすごく変わりました。まず、韓国語が普通に飛び交っても違和感なく、韓国人の名前があちこち聞こえても不思議じゃない世の中になりました。在日の方は特に、そう感じているのではないでしょうか。

 でもその一方で、これだけ近いのに本当の韓国というか、韓国人が本当に考えていることとか、内面的なもっと深いところが全然、伝わっていない気がするんです。さらに深めるにはやはり、文化の力を借りるしかないと思います。文化を通じた1対1の交流。それを実践したのが、ヨン様です。ですから次の10年を担うには、次の親善大使が誰なのかっていう部分で、韓国カルチャー界をリードしていけるオピニオンリーダーみたいな人たちが必要になってくる。ただ、それを生み出すといっても、自然と発生したヨン様人気に対して、そういう人をつくるというのは難しい。でもヨン様のような日韓間における、ある意味中立的な、象徴的な存在というのは欠かせないでしょうね。

 聞いたところによると、ファンが選ぶ「韓国ドラマ大賞」はすでに3万人以上の投票があるようですが、今の時期にこれほど関心をもって韓流を愛している人がいるということを韓国側ももっと理解すべきでしょうね。こういった人たちを決して逃さないようなオピニオンリーダーというのは絶対に必要です。それを輩出できるかどうかというのは、韓国側もそうだし、われわれのような立場の人間もキーになってくるのかなと思います。

見る目は厳しく

 田代 誰かがいて牽引してくれるのが理想だろうけど、あの時は「冬のソナタ」しか入ってこなかったから、自然にペ・ヨンジュンに集まりました。今はこれだけたくさんいて、皆、好みがばらばらだから難しい面もあるでしょうね。

 これからは自然淘汰だと思います。裾野は確実に広がりましたけど、韓流が起きた最初の頃は韓国のものであれば何でも受け入れられたところがありましたが、すでに10年が経過して、さまざまな事柄に対して見巧者が増えて来ました。その人たちのなかでいいものは残っていくし、きちんと作り込まれたイベントはお金が高くても集まるけれども、そうじゃないなと思ったら自然に廃れていく、という感じですよね。見る目が厳しくなっていますから。

 金 韓国の文学に関しては韓国文学だからということではなく、多くの人たちと良い文学作品を共有していくというスタンスを大切にしたいですね。

 田代 面白いなと思って手にとったら、それが韓国のものだったというのが理想です。自分の好きなのは、日本のドラマでも韓国のドラマでもなく、そのうちの1本みたいな感じになっていくと、ごり押し感もないだろうし。やっぱり、ごり押し感はまずいと思いますよ。K―POPはけっこう、それできましたからね、反動が。

 古家 13年前に番組を立ち上げたときの夢が、普通の番組で、違和感なく韓国の音楽がかかる環境をつくるというのが僕の目標でした。それができないから当時は専門番組をつくるしかなかった。たとえば、マイケル・ジャクソンの次に東方神起がかかってもいい。それがいちいち、「韓国スーパースター」という紹介ではなく、自然と聴けるような環境。それができれば僕自身、今も専門番組をやっていますが、必要はなくなると思っています。専門番組が無くなったときが韓流の終わりではなくて、本物の文化として日本に定着した瞬間と判断できるのではないでしょうか。だから韓流という言葉が無くなっても僕はいいと思っている。

 それより、さきほど田代さんがおっしゃっていた通り「これ、韓国だったんだ」と。それがもうできる時期じゃないのかな。

 金 目指すところはそこだと思います。

 田代 だから韓国側も韓流はいつまで続くのかとか、別にもう思わなくてもいいのではないでしょうか。自然に入ってきているのだから自然でいいの、みたいな感じで。

(2013.8.15 民団新聞)
 

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