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泣き寝入りさせない…人種差別撤廃へ民間基金
あいさつする代表理事の菅充行弁護士
全国初 訴訟費用貸し付け

 【大阪】ヘイトスピーチ(憎悪扇動)や入居、就職、結婚などで人種や国籍による差別を受けた人を民間レベルで救済する「人種差別撤廃サポート基金」が24日、大阪市内で発足した。被害者からの申し入れを受け、加害者との問題解決を目的とした交渉へ専門家を派遣するほか、慰謝料や権利回復を求める訴訟の際には、弁護士費用を無利子で貸し付ける。これ以上、被害者を泣き寝入りさせない仕組みづくりが目的だ。

大阪市内で設立総会

 基金の直接的なきっかけとなったのは、「大阪市ヘイトスピーチへの対処に関する条例」(市条例)から当初案に含まれていた被害者への訴訟支援が削除されてしまったこと。救済の責務を負う国や地方自治体による公的なサポートが実現するまでの間、民間レベルでセーフティーネットを立ち上げた。

 主な支援内容は、加害者(団体)に対する責任追及と被害の拡大防止、および被害者の救済。このほか、人種差別撤廃を目的とした法令などの制定を求める活動も行っていく。

 被害者に貸し付ける交付金は、訴えが正当でも敗訴したり、勝訴しても慰謝料が少額の時は、理事会の判断で一部または全額を免除することもある。事務局を兼ねるNPO法人多民族共生人権センターの文公輝事務局次長によればこうした基金の創設は全国初。すでに複数の弁護士や専門家から協力の申し入れが届いているという。

 発起団体はNPO法人多民族共生人権教育センター(朴洋幸理事長)、部落解放同盟大阪府連合会(赤井隆史執行委員長)、NPO法人ぱだ(宋貞智理事長)の3団体。代表理事には菅充行弁護士とぱだ理事長の宋貞智氏が就任した。

 基金の目標額はとりあえず500万円とした。

国や行政動かす

 代表理事の宋さんは「ヘイトスピーチ被害者の状況は深刻だが、泣き寝入りは許さない。民間から発信し、国や行政を動かせるようにしていきたい」と述べた。

■□
「被害者に心強い援軍」
当事者の李信恵(フリーライター)さん談話


 「人種差別撤廃サポート基金(仮)」のニュースを聞いて、まず素晴らしい取り組みだと思った。

 日本で裁判を起こそうとすることはとてもハードルが高い。弁護士を選ぶこと、金銭的なこと、家族や職場、もしくは学校などで理解や協力を得ること、二次被害の可能性…。問題は山積みだ。

 そのハードルを越えられずに、泣き寝入りさせられる被害者も多い。私は運がよく、さまざまな問題を乗り越えて提訴することが出来たが、提訴した2つの裁判(対在特会と桜井誠元会長、対保守速報)の陰には、沈黙させられてきたマイノリティーたちがいて、その悔しさや無念さといった思いも背負っていると感じている。

 また、提訴してからこの夏で3年になるがその間裁判を継続できたのは、多くの支援者のおかげだと思っている。差別と闘うことや提訴することは、当事者にとって被害の再現でもあり、辛いことでもある。私自身も何度も孤独感を味わったが、その度に皆が支えてくれた。金銭面はもちろん、被害者が真に救済されるために、心のケアやサポートが出来る体制づくりも必要だ。

 報道によると、この基金はまず、ヘイトスピーチはもちろん、それ以外の国籍や人種を理由としたさまざまな差別(就職や入居)についての相談も受け付けるとあった。被害者にとって、とても心強いものとなるだろう。

 大阪市では昨年7月、全国初となるヘイトスピーチ抑止条例が完全施行された。大阪市は当初の条例案では、被害者が提訴した場合には訴訟費用を支援するとしたが、最終的には盛り込まれなかった。本来なら、国や行政がすべきことを、民間の組織がせざるを得ないこの社会の状況が気に掛かる。

 4月23日に京都で開催が予告されていた差別主義者らの街宣活動は、主催者側から直前の18日になって、中止との発表があった。その知らせを聞いて、心の底からほっとした。差別へのカウンター活動は重要なことであるが、その一方で、差別を起こさせないこと、カウンターをしなくてもいい日常を過ごせること、この社会が誰にとっても安寧であることが大切だと思う。

 差別による、新たな被害者を生み出さない社会をつくるために、国や行政による啓発や再発の防止に向けた今後の取り組みにも期待したい。

(2017.4.26 民団新聞)
 
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