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日本法務省は3月31日、国内に住む外国人1万8500人を対象にした差別実態の包括的な調査の結果を発表した。こうした調査は地方自治体単位ではある程度行われてきたものの、国が取り組んだのはこれが初めて。2016年には「ヘイトスピーチに関する実態調査」が公表されているが、今回はヘイトスピーチに限らず、入居差別や就職差別を含めた差別全体に焦点をあてた。
入居拒否体験回答者の4割
過去5年間に住む家を探した際、「外国人であることを理由に入居を断られた」経験のある人は39・3%、「日本人の保証人がいないことを理由に入居を断られた」のは41・2%、「『外国人お断り』と書かれた物件を見たので、あきらめた」という人も26・8%あった。
入居を断られた人たちを国・地域別に見ると、上位は1位タイ、2位中国、3位朝鮮だった。逆に入居を断られた経験の割合が最も低かったのはイギリス。
在留期間別では「10年未満」が最も高い。10年を超えると逆に入居を断られる割合が減少していく。これは日本人と良好なコミュニケーションを取れるようになっていくからだろうか。同居している相手が日本人だと、入居を断られる割合が小さい。
50歳代の女性(韓国籍)は自由回答欄に「日本で生まれ育ったにもかかわらず、国籍だけでマンショに入れないというのは、どういうことなのでしょうか、とても不思議で、不愉快な思いをしたことがあります。日本で生まれ育って日本語しか分からないのに、偏見や差別はまだまだ日本にはたくさんあると思います」と書き込んだ。
日本語できても就業門戸は狭く
過去5年の間に「外国人であることを理由に就職を断られた」との回答は25・0%。このうちの95%は日本語の会話能力にまったく問題はなかった。「同じ仕事をしているのに、賃金が日本人より低かった」という人も19・6%あった。
就職を断られた人を国・地域別で見ると、上位はロシア(37・5%)、中国(36・1%)、タイ(34・0%)の順。韓国は22・0%だった。
グローバル会社に勤務する韓国籍女性(40歳代)は「私たちの会社は外国人だという理由での差別は少ないようだが、昇進は事実、日本人よりは大変だと思います」と回答した。
差別全体への取り組み必要
このほか、外国人であることを理由に侮辱されるなど、差別的なことをいわれたという体験者も「よくある」「たまにある」を合わせて29・8%にのぼった。相手は「見知らぬ人」が53・3%、「職場の上司や同僚・部下、取引先」が38%だった。
こうした差別や偏見をなくすため、国や行政に望む取り組みはまず積極的な啓発。また、外国人と日本人との交流の機会を増やすべきだという意見も半数を超えた。
外国人差別のうち法的な対策がなされているのは現在、ヘイトスピーチだけ。今回の調査結果は2020年東京オリンピック・パラリンピック開催を前にして「入居差別」や「就職差別」も含めた差別全体への取り組みの必要性を浮き彫りにした。
(2017.4.12 民団新聞) |
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