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「あの虐殺の残響 今も」…生活者の感性で聞く修正主義が再生する「悪玉」論
加藤直樹著『九月、東京の路上で』 定価1800円+税。問い合わせは「ころから」(03・5939・7950)。

 「関東大震災は過去の話ではない。今に直結し、未来に続いている」

 痛切にそう「感じる」著者は、朝鮮人が虐殺された東京の路上で当時さまざまな人々が経験した現実を「感じる」こと、姿かたちが大きく変わった今も街や人の心のなかにある虐殺の「『残響』を聞き取る」ことを訴えかける。

 関東大震災(1923年9月1日)から90年の節目だった昨年、「良い韓国人も悪い韓国人もどちらも殺せ」などと叫ぶヘイトスピーチ(憎悪表現)の街宣が勢いづいていた。著者はこれへの抗議行動に参加するため、東京・新大久保の路上に毎週のように通った。

 ここは著者が生まれ育ち、在日コリアンとも親しんだ街である。聞きしにまさる醜悪な街宣プラカードのなかに「不逞朝鮮人」の文字を見つけたとき、関東大震災時の虐殺を思い出し、ぞっとしたという。「『殺せ』という叫びは、90年前に東京の路上に響いていた『殺せ』という叫びと共鳴している」

立体像結ぶ路上の視点

 著者は仲間に呼びかけ、虐殺があった東京各地を訪ねて写真を撮り、そこで起きたことを当時の証言や記録をもとに伝えるブログを開設した。これがレイシズムの台頭に危機感を抱く多くの人の反響を呼んだ。本書はそれに加筆し、まとめたものである。

 特に残酷な事例を集めたわけでも、新事実や新証言を掘り起こしたものでも、まして新たな切り口で歴史学的な論争を挑んだものでもない。著者自身、「歴史的事件の全体像を『解説』するものではない」と念を押す。

 だが、大きな流れを踏まえたうえで、虐殺の経緯と実態を現場となった街ごとに簡潔に記述し、軍・警・自警団など加害者、朝鮮人や中国人、日本人被害者、目撃者のほか有識者の証言を適宜に織り込み、全体像を立体的に浮かび上がらせたのは間違いない。

 凄惨な歴史的大事件だからと言って、詳細に全容を解き明かすものだけが秀作ではなかろう。敬遠されがちな重いテーマだけに、若い世代にも「読みやすい」「身近に感じとれる」ものがあってしかるべきだ。著者は膨大な史料・文献を丹念に読み解き、それを人々が今も生活する「路上」の視点から再構成するのに成功した。

 著者は震災当日の朝刊(東京朝日新聞)に載った「怪鮮人三名捕はる/陰謀団一味か」の記事を重視する。朝鮮人を悪玉にする当時のマスコミにおける「誇張的筆法」の典型であり、こうした風潮が虐殺に結びつかないわけがないからだ。

 韓国併合(1910年)の過程でつくられた朝鮮蔑視の風潮が3・1独立運動(1919年)によって「恐怖」に変わり、「暴徒」「爆弾」「陰謀」といった言葉とともに「不逞鮮人」への憎しみを凝固させ、その4年後には東京のど真ん中で白昼堂々の「朝鮮人皆殺し」に帰結したと指摘する。

 そして現在、日本人をして韓国を嫌悪させる本や雑誌が反乱し、韓国政府への批判を超えて民族的な憎しみとレイシズムが膨張する現実がある。

 3・1運動以降、「不逞鮮人の陰謀」を毎日のように書きたてたかつての新聞と何ら変わるところがない。「私たちはいまだに植民地支配がつくり出した『黒き幻影』の時代、朝鮮人虐殺の残響が続く時代を生きている」と著者は言う。

 関東大震災時の虐殺や強制労働現場での犠牲同胞を慰霊・追悼する碑が日本各地にある。だが、「虐殺」や「強制」など都合の悪いものはなかったことにする歴史修正主義が政治指導者やオピニオンリーダーにとどまらず、草の根レベルでも広がり、碑の廃棄や字句改変を求める圧力も強まっている。

 日本人自らがこれに抗い、歴史の負の側面をこそ照射して、戒めを導きだそうとする動きもそれに負けてはいない。この一冊は生活者の視点でその気概を示した。

(2014.8.27 民団新聞)
 

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