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| | 男女の運命は−−映画の１シーン
| | | 河瀬直美さん＝撮影・百々武 |
見えない絆在日の想い
奈良・桜井市狛を舞台にした新作短編「狛‐ＫＯＭＡ」を制作した映画作家の河瀬直美さん。この作品は、韓国の全州国際映画祭（４月30〜５月８日）実行委員会から依頼を受けて制作した。在日韓国人３世の主人公が、亡き祖父から託された１本の掛け軸をめぐり、偶然出会った女性との魂の交流が描かれている。河瀬監督に聞いた。
高句麗ゆかりの桜井を舞台に 幻想的な魂の交錯
−−桜井市狛や在日を題材に選んだのは
河瀬 全州国際映画祭実行委員会からオファーを受けたとき、韓国とのつながりを描き、在日の方の心情を捉えたいと思いました。
私は狛に暮らす友人と一緒に、かれこれ１年以上、桜井を歩いてフリーペーパーの「やまとびと」でエッセイを書いています。そのなかで、この土地に対する愛着が湧いてきたことから、映画の舞台に決めました。
−−奈良県は高句麗と深い関係にあるが
河瀬 普段の生活で、それを強く意識することはあまりありませんが、今回の撮影を通して、何か見えないものできちんとつながっているということを実感しました。
−−高句麗王とみられる人物と、三輪山信仰を扱った
河瀬 本当に自分が意識して描いたというよりは、三輪山や高句麗が私に描かせたというほうがしっくりくるほど、それらが私に近づいてきて、一つの作品に昇華できたという感じです。
−−運命や見えない絆は意識したか
河瀬 それはいつも自分のテーマになる題材です。今回に限らず、今後もテーマになっていくでしょう。
−−パンソリを使ったが
河瀬 人の声とは思えない、神の声のような韓国を代表する歌だと思い、使おうと決めました。
−−最も表現したかったものは
河瀬 いくつかありますが、地域を愛するということ、人と人との心がつながっていくということ。そして先祖を崇拝するという気持ちです。
映画制作通し韓国に惹かれ
−−韓国と日本の歴史的つながり、人との交流について
河瀬 韓国と日本の問題や歴史的なつながりを意識することは、これまであまりありませんでした。けれど、映画を制作するようになってから、同じアジアの一員として、一番近くてつながりの深い存在の韓国に惹かれるものを感じています。それに食文化にも惹かれますし、女性の強さや美しさにも憧れますね。
−−望ましい両国の関係とは
河瀬 同じアジア人として、一緒に世界に声を発信していきたいです。
−−韓国での活動について
河瀬 映画制作の現場で、韓国は急成長しています。作品の評価も世界的に高いし、そして彼らは非常に優秀だと思います。政府の補助も日本より多いし、自分が日韓共同制作をする可能性は極めて高いと思います。
神が宿る地で 男女の行方は
在日韓国人のカン・ジュンイルが亡き祖父から、高句麗王とおぼしき人物が描かれた１本の掛け軸を託され、「狛」の地へたどり着く。そこには仏教伝来以前から続く三輪山の信仰と初子の存在。神が宿る「狛」の地で男女の魂が交錯する。 演じるのは、大河ドラマ『天地人』で活躍中の北村一輝、映画『火垂』でストリップダンサー役という鮮烈な主演デビューを飾った中村優子。運命の２人の行方を描く。
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プロフィール
河瀬直美 1969年奈良市生まれ。89年大阪写真専門学校（現ビジュアルアーツ）映画科卒。劇場映画デビュー作「萌の朱雀」（96年）で、カンヌ国際映画祭新人監督賞を史上最年少受賞。同映画祭で07年「殯の森」がグランプリを、09年には監督としての功績をたたえる「黄金の馬車賞」を受賞。10年から開催する「なら国際映画祭」エグゼクティブディレクターを務めている。
（2009.8.26 民団新聞）
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