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| | 金熙秀氏の5周忌を機に開かれた写真展で説明に立つ申景浩さん（1月20日、秀林日本語学校） | | |
破綻寸前だった韓国中央大学校の理事長に就任するや私財1000億ウォン以上を投じて経営を立て直し、韓国有数の私立大学に成長させた故金熙秀氏（元民団中央本部顧問）。金氏の遺産となった東京の学校法人金井学園を受け継ぎ、理事長兼校長として経営再建に取り組んでいるのが申景浩さん（54）だ。バブル崩壊直後は廃校の危機に見舞われたが、いまはトンネルを抜け出しつつあるという。金氏の遺志は着実に引き継がれている。
廃校危機から建て直す
顕彰碑前で決意新たに
金井学園は秀林外語専門学校と秀林日本語学校の2つの学校を運営する専門の学校法人。
秀林外語専門学校（江東区大島）はアジアの諸言語に特化した学校。日本で韓日と中日、越日の3つの通訳・翻訳コースを置いたのは同校が初めてだ。生徒数370人。卒業生は韓国語、中国語、ベトナム語を必要とする企業に進む。一方、秀林日本語学校（墨田区両国）は2001年に開校し、現在は400人が学ぶ。
秀林外語専門学校が開校したのは88年4月。韓国中央大学校の理事長だった金熙秀氏が理事長を兼任した。だが、開校から間もなく、バブル崩壊で経営に行き詰まる。当時、金氏は東京の銀座をはじめとする一等地で貸しビル業を営み、その収益を中央大学校での教育事業に注いでいた。すべての資産は銀行管理下に置かれ、金氏は金井学園に資金を提供できなくなり、学校は廃校の危機に陥った。
朝鮮族同胞ら誘致に成功
「沈没する船」から逃げるように金氏のもとから次々に人材が離れていった。それでも申さんだけは逃げなかった。中国吉林省に出向き、関係者とバイチュウ（白酒）を飲みつぶれるまで酌み交わしながら必死の思いで親しくなり、朝鮮族同胞を誘致するのに成功した。さらに福建省、ベトナムにも足を運んだ。学生数の回復に金氏は驚き、思わず「奇跡だ」と叫んだという。この勢いで01年には秀林日本語学校（墨田区両国）が開校した。
申さんは83年度に全羅南道から日本に留学。この年の11月、韓国人留学生連合会の役員として2人で金氏の経営する銀座第1ビルを訪ねたのが運命的な出会いとなった。金氏はその場で「君たちはわが民族の将来の宝物」と激励し、「教育事業に役立ててくれ」と100万円をカンパした。
申さんは当時を振り返り、「在日の大企業家だし、さぞやすごい生活をしているだろうと思っていた。しかし、エレベーターもない。びっくりするくらい質素な暮らしぶり。どこにもいる隣りのおじちゃんとしか思えなかった」と述懐している。申さんは金氏に「一目惚れ」して金氏のもとでアルバイトを始める。
あるとき、金氏は申さんに銀座までの通勤経路を聞いてきた。「何線で来たの？」。申さんの住む西大島からは当時の国鉄で120円。しかし、都営新宿線と丸ノ内線を乗り継ぐと早く着くが150〜160円とわずかながら高い。申氏は当初、「なぜそんなことを聞くのだろうか」といぶかしんだ。これは勤勉、節約を旨とする金氏が申さんに課した「厳しいテスト」だと気付いたのはしばらく経ってからのことだった。
義理と忠誠を信条に尽力
申さんの信条は「義理」と「忠誠」。薄給で生活が苦しくとも弱音を吐かなかった。99年から国士舘大学で1コマ8000円の非常勤講師として勤務しながら食いつないだ。専門は日本政治史で、02年から助教授、現在は教授を務めている。金氏は申さんを後継者にしようと決める。申さんが金井学園の理事長に就任したのは05年4月1日のことだった。
金氏は08年に韓国中央大学校を斗山グループに手放し、失意のうちに12年、亡くなった。申さんは金氏について「私の青春そのものだった」と振り返った。これからも金氏の遺志を継いでいく。今年1月に5周忌を迎え、秀林日本語学校の敷地内に建つ金氏の顕彰碑の前でそう固く誓ったという。
（2017.5.10 民団新聞）
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