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総選挙へ民団の動き急 奮起一番打つ手は多彩
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初めての選挙運動
身近なことから

 7月に入って間もない平日の夜8時頃、民団X支部会館に役員ら約25人が集まり、永住外国人への地方参政権付与を確約する立候補予定者を迎えて懇談した。会議室にはすでに、党代表と並んだ同候補者の顔が大写しになったポスターが貼られている。

 X支部管下の選挙区は、自民党某議員の王国と言われ、今回も当選は手堅いとされる。この多選議員はしかも、地方参政権付与に断固反対の立場を隠さない、いわば頑強派。これに参政権付与に賛同する新人が挑む。

 懇談の場で、新人が選挙支援について民団に要望したのは、ほぼ次のようなことだった。

 ポスター貼り 選挙公示日に、選挙区一帯の数百カ所におよぶ公設掲示板の指定された位置に一斉に貼り出す。候補者の顔と政策をいち早く知らせるために、午前中には作業を完了させたい。

 証紙貼り 選挙中に貼り出しや配布が可能なポスター・ビラには、指定された証紙の貼付が義務付けられている。選挙の公示後、これを速やかに終了させたい。

 公選はがき 候補者本人の顔・名前・政策を知らせる数少ないツールであり、これに応援メッセージや紹介したい有権者名を記載し、返信用封筒で送付する。

 ミニ集会 所定の用紙に知り合いの有権者を記載し、ファクス・郵便等で事務所に送ってほしい。自分の会社や勤め先、知り合いの会社・団体の朝礼の場などで、あいさつの機会をつくってもらいたい。

 総選挙とは縁が薄く、選挙運動のイメージがつかめなかった幹部たちも、「選挙運動って、けっこう身近なところから始まるんだ。これなら自分にもできる」と得心しながら、「ポスター貼りやビラ配りならしたこともある」「日本人とつくっているグループもあるからミニ集会もやりたい」「事務所での手伝いや電話作戦も可能だ」と意気込む。

 幹部らは一方で、「上から、資金関係には一切かかわるな、と厳しく念押しされている。政治資金規正法に引っかかって、ひいきの引き倒しにならないよう、団員たちにはこの点を周知徹底させたい」と戒めることも忘れなかった。

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重要選挙区を特定
徹底して賛否確認…支部単位で地域密着型応援

 昨年秋から総選挙対策を練ってきたという大手のY地方本部は、全選挙区のうち10地区について、支援する立候補予定者を特定し、支部単位で応援体制を整えた。支援対象は民主を筆頭に自民、公明の順(公明は選挙区候補が少ない事情によるとのこと)。これら支援候補に民団本部は「推薦状」を伝達し、候補者は事務所にそれを貼り出すことになっている。

 Y本部はほかに、団員全世帯に対して支援候補者のポスター貼り出しを呼び掛けたほか、自分が居住する選挙区内外の有権者を紹介してもらう依頼書の発送を済ませた。また、光複節記念式典のパンフレットにも推薦候補者のあいさつ文を掲載し、啓発に努める。

 Y地方本部は、地方参政権獲得運動の先駆けとも言える本部の一つで、現職議員や有力な候補者とのつながりが強い。

 支援対象者の選定に当たっては、付与に賛成か否かについて新人には確認を、現職には再確認を徹底した。支援対象となった自民党候補者は言うまでもなく賛成派だ。支援対象をまだ選定できない選挙区についても、候補者本人や所属政党の県連に意思確認を進めている。

 地方参政権の研修を早めに終えた大手のZ地方本部は、今年4月に役員改選のあった支部から優先して、本部役員による幹部研修に入った。支援対象の候補者を特定した支部も増え、それに応じて団員が後援会にも参加し始めた。

 同本部の実務幹部は「有力団員のなかには事業の関係で、自民党とのつき合いが深い人もいる。だが、参政権獲得にいつになく期待感が強く、今回だけは付与推進政党を応援するとの姿勢に転換している」と語り、「選挙区ごとに本部幹部ら活動者を配置することも考えている」と明らかにした。

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保守王国での苦悶
「比例は別」意識広がる

 中堅以下の規模の民団本部では、選挙区ごとに支援体制を組むのは容易ではない。近畿地区のD地方本部もその一つ。同本部では、参政権付与を掲げる政党の候補予定者を研修会に招いただけでなく、それに先立って団長ら幹部が個別に激励して回った。

 D本部そのものは組織の足腰が弱いものの、管下地区には日本人従業員を多数抱える同胞企業がいくつもある。今後の方針として、公示後は候補者が超多忙になることを考え、公示前に規模の大きい同胞企業と連携して候補者の話を聞いてもらう機会を設けたい、としている。

 韓日親善活動が盛んで、民団との関係も良好だが、参政権付与に消極的もしくは反対する議員の多い保守王国とされる地区は少なくない。

 その一つA地方本部は、伝統的に自民党とのつながりが強かった。だが、支部ごとに開催した昨年の忘年会や今年の新年会には、付与推進政党の立候補予定者を全員招き、顔つなぎを済ませた。実務幹部は「これまでは率直に言って、組織だった動きはしにくかった。しかし、今回ばかりは例外になるだろう」と決意をにじませる。

 同じく保守の牙城とされる地区のB地方本部には、保守系現職の議員を囲む会がいくつかある。そうしたつながりがあるだけに、保守系議員でも民団と参政権付与に理解を示してきた。ある幹部は「選挙区では特定の政党を押すということにはなりにくい」と言う。

 同本部の有力者には高齢者が多く、彼らはやはり自民党との関係が数十年続いている。それに反して、付与推進政党の立候補予定者は若手が多い。世代的な隔絶感が親近感をつくり出しにくい事情もある。それでも先の幹部は「比例については別という意識は広がっている」と指摘した。

 選挙区が極めて少ない地区のC本部では、参政権に理解を示す自民の現職がほとんど当確の選挙区には一切タッチせず、自民現職に推進派候補が対抗する一つの選挙区だけに力を注ぐ考えだ。本部団長は「過疎がゆえに力の足りない民団を補うためにも、市民団体と連携して当たる。自民党との関係が切れない同胞の有力経済人には、比例だけは必ず推進政党に、とお願いしている」と話す。

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55年体制の縛り
自民に託してきたが… 長年のつき合いと葛藤も

 民団が組織をあげて総選挙にかかわるのは、今回が初めて。力のある地方本部・支部と、そうでない本部・支部では、関与の仕方も異なる。また、与野党にかかわりなく、付与に賛成か反対かの色分けが明白な有力議員を抱えている地区と、そうではない地区などによって、支援候補の絞り込みや比例投票への対応もまちまちだ。

 不偏不党の立場で、地方参政権付与を確約する立候補者を支援する、とはいっても、比例投票では政党を選択せざるを得ない。地域事情や組織あるいは個人としてのつき合いも多様なだけに、総論と各論が一致するのは簡単ではない事情がある。

 民団のなかでも、「参政権はノドから手が出るほどほしいが、事業の関係や長年の因縁もあって、付与の賛否だけで対応するのは現実的には難しい」との声は全国で決して少なくない。

 自由民主党が第一与党で日本社会党が第一野党という構図の、いわゆる「55年体制」が長期間続くなかで、民団の組織も有力団員も自民党との関係を最重要視してきた歴史がある。

 東西冷戦や韓半島南北の対立も反映して、朝総連が社会党など韓国に否定的な態度をとる左派政党を強く支持していた以上、民団が保守系を支持するのは当然の成り行きでもあった。その過程で、個人事業の都合からも自民党議員との関係を強める有力経済人が増えたのは自然な流れだ。

 民団が参政権獲得に組織的に立ち上がって以降、保守層と執権党から賛同を得てこそ可能とする筋論と、それまでのつき合いを生かそうとする実績論から、主として自民党に働きかけてきた経緯がある。

 自民党衆議院議員の3分の1近くが付与に賛成と見られており、その面では大きな成果を上げてきたと言えるものの、自民党の党としてのかたくなな姿勢を変えるまでには至っていない。

 付与推進で一貫する公明党が連立与党となってから、公明党の自民党への影響力に期待が集まったが、自民党の牙城は崩せず、現在では公明党も打つ手がない状況という。一方で、政界再編による大きな変化があり、参政権付与を政策目標の一つに掲げる民主党が誕生し、政権獲得を狙うまでに伸張している。

 全国の団員の間では、公明党は言うまでもなく、自民党の反対姿勢を和らげるためにも、同党の付与推進派との既存の関係を大切にする傾向は固い。だが、反対派に対抗すべく、推進政党の候補を応援する機運が明らかに強まってきた。

 自民党候補を個人的に応援する有力者の場合でも、付与に賛成するよう働きかけを強めるだけでなく、「民主党にも頑迷な反対派はいる。それでも、比例では民主党を応援せざるを得ない」との言明が増えている。

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独自色を生かして
7ブロックで婦人会決起…信組は親睦会も動員

 頑張っているのは民団の本部・支部だけではない。婦人会(中央本部・余玉善会長)は6月3日から開始した恒例の大研修会を6ブロックで開いたのに合わせ、付与推進派の立候補予定者を多数招いて参政権早期獲得決起大会を開催した。15日の東北地区を最後にすべての日程を終える。婦人会は民団とともに選挙区での支援に当たるだけでなく、とくに比例投票で大きな力を発揮することになりそうだ。

 東京で1000人規模の「韓国で実現して3年 永住外国人に地方参政権を! 5・31集会」を成功させた青年会(中央本部・金宗洙会長)は、立候補予定者に個別面談し、参政権付与に理解を求め、政策に反映させる運動を全国的に展開している。

 民団や傘下団体だけではない。民団との連携のもとに、在日韓国人信用組合協会に加盟する各信組、個別有力企業の経営者も協力姿勢を明らかにしている。

 民族信組の場合は、日本人の取引先を含む各種親睦会などの活用を柱にする。同胞の有力企業はほとんど、業務提携先や取引先を網羅した協力会などの親睦会をもっており、これらを動員することになる。

(2009.7.15 民団新聞)
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