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<光復節特集>安否確認・往来、早期実現を…北送55年、今なお進行中の悲劇
「北送」は1959年8月13日の「カルカッタ協定」に基づき開始された。写真は同年12月14日、新潟から清津に向け出港する2隻からなる第1次船

「衣食住完全に解決」
9万余人…在日の7分の1が移住


 「衣食住の問題は完全に解決され、何の生活上の悩みもない祖国は地上の楽園」とする北韓当局の意を受けた総連の組織をあげての虚偽宣伝および「人道的事業」だとする日本政府・政党の積極的協力と日本のマスコミあげての北韓体制賛美キャンペーンのもとで推進された「北送事業」(59年12月〜84年10月)。開始から今年で55年になる。同事業で北韓に渡った9万3340人(日本人配偶者含む)を待ち受けていたのは日本でよりもはるかに貧しく厳しい生活だった。90年代の大飢饉ではまっさきに犠牲となった。安否不明者も多数にのぼる。今年2月発表の国連北韓人権調査委員会の報告書でも明らかなように、悲劇は今なお進行中だ。北韓は、「日本人配偶者」に関しては去る5月の日本政府との合意に基づき「全面的な調査」を開始したという。この機会に北韓が、「帰国同胞」家族の安否確認を実施するとともに帰省、墓参、離散家族再会実現へ日本との往来の自由および居住地選択の自由を認めることが強く望まれている。


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「地上の楽園」とだます

 総連中央は、北送事業について「帰国運動は共和国側から提起されたわけでもなく同胞の自主的要求だった」としている。

 「帰国運動の本格的な始まりは、58年8月11日に総連川崎支部中留分会の同胞たちが帰国を希望する金日成主席あての手紙を採択したことだ。そして、13日の祖国解放13周年記念中央大会で手紙の送付が決まった。主席は共和国創建10周年記念慶祝大会で在日朝鮮人の帰国を『熱烈に歓迎します』と表明、『民族的義務である』とまで述べた。総連は帰国を希望する同胞たちの要求をくみ、この運動を大衆運動として展開した」(「朝鮮新報」04年1月20日「総連第20回大会に向け知ろう総連の歩み4」)。

 しかし実際には、中留分会での金日成あての手紙の採択は、北韓当局の指示に基づき、「帰国運動」を扇動するため総連中央があらかじめ準備していたものであった。

 金日成は、中留分会「集団帰国決議」の約1カ月前の7月14日、面会した北韓駐在のソ連臨時代理大使に「我々は、日本在住のすべての同胞が自ら祖国に帰ってくるよう勧めており、この問題について日本政府と合意に達したいと希望している。この点について我々は近く声明を出す」と述べ、「共和国に帰ってきた、すべての朝鮮人たちは、住居と仕事、すべての政治的・経済的権利を得て、彼らの子供たちは共和国の学校、大学で教育を受けるようになることを強調するつもりだ」と表明した。

 その狙いについても「我々はこの最初のステップに大きな政治的意味を見いだす。(略)実現すれば、共和国に政治的、また経済的に大きな利益をもたらすだろう」と明らかにしている。

 こうした北韓当局の巧妙なシナリオに基づき、総連は北韓を「地上の楽園」であり、「医療費はすべて無料。家や希望する仕事もあり、楽園の暮らしが保証される」との虚偽宣伝を大々的に繰り返し、「新国家建設のために帰国して祖国に貢献しよう」などと、組織をあげて「帰国」をあおった。(別掲「総連中央の『帰国』扇動宣伝物抜粋」参照)

 このような北韓と総連の周到な準備のもとに、59年8月13日、インドのカルカッタで北韓赤十字会と日本赤十字社との間に「在日朝鮮人の帰還に関する協定」が結ばれた。この協定に基づき同年12月14日に「北送」が始まり、第1船2隻が975人をのせて新潟を出港。61年までに合計7万4779人が北に渡った。59年=2942人、60年=4万9036人、61年=2万2801人。

 だが、「地上の楽園」などではなく、日本にいた時よりも厳しい境遇を示唆する手紙が、日本にいる身内・親類に届きはじめ、62年には年間約3500人へと激減。その後も一貫して減少し、67年11月で一端打ち切られた。ちなみに、62年には関貴星氏(元総連岡山県本部議長・総連中央本部財政委員)の『楽園の夢破れて 北朝鮮の真相』が発刊されている。

 総連は「地上の楽園」ではないこと、しかも出国の自由などなく、再び日本に戻ってくることはできないことを知りながら、北韓当局の指示に従い、帰還協定延長運動を展開。71年5月から84年10月まで北送事業を継続させ、さらに4729人の同胞を送りこんだ。

 こうして、累計で9万3340人(うち日本人妻1831人を含む日本人6839人が家族として随伴)となり、在日同胞の7分の1もが北韓に渡ったことになる。

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「帰省」すらも許さず

 「帰国者」は悲惨な運命をたどった。「地上の楽園」と喧伝された北韓の生活水準は極度に低かった。第1次、第2次船での移住者の多くは、定住地や職場などで特別に優遇されたが、その後はそうではなくなった。

 本人の経験や能力、希望とはまったく関係なく、ごく一部の総連幹部やその家族・子弟、多額の金品を献上した商工人家族・子弟、「利用価値」のある著名人や特別な技術・技能を持つ者などを除き、大多数の貧しく金もない家族は、辺境や山奥に配置された。

 ほとんどが「南地域」出身者であり、北韓には地縁も血縁もない。そのうえ「資本主義国から来た」という理由で、「動揺階層」ないし「敵対階層」として北韓の身分体制の最下層に置かれ、日常的な監視対象にされた。そして、一般の北韓住民からは「帰胞」などとさげすまれ差別された。

 「南への帰郷も、日本との往来も遠からず可能になる」「日本人妻は3年後には里帰りできる」との総連幹部らの話も、虚偽情報だった。「日本に帰りたい」と言えば、政治犯用の精神科病院へ強制入院させられ、少しでも不満を口にしようものなら政治犯収容所に送られるか抹殺された。

 厳しい状況のもとで日本の親族と連絡が取れず、その後、消息がわからなくなった人も多い。90年代の大飢饉ではまっさきに犠牲になった。(別掲「国連北韓人権調査委の報告書抜粋」参照)

 総連中央では、79年8月から始まった「在日同胞短期祖国訪問団事業」で大型旅客船が新潟を往来するようになり、家族や親族訪問の道が開かれたとしている。だが、日本からの一方通行でしかない。

 北韓当局は、現在まで一貫して、国際法的原則である「出国の自由」および「居住地選択の自由」を無視している。「帰国同胞」の日本への自由往来はもとより、一時帰省や墓参りすら、いまだに認めていない。

 裕福な商工人親族が日本にいる者や総連幹部の家族らは、巨額な寄付・補償によって監視人同伴で、あるいは訪日代表団のメンバーの一員として帰省している。この場合も、家族ぐるみの帰省は許していない。「帰国家族」を、総連の活動から離脱させないための「人質」にするとともに、在日家族・縁者からの巨額な送金や献金を促して利用するためだ。

 総連中央は「祖国への自由往来は在日朝鮮人の権利である」と日本政府に要求してきた。しかし、「帰国同胞」家族の生死・住所の確認と在日家族・親戚との自由な再会・相互訪問の実現については、北韓当局に対して一度も要求することなく、今日に至っている。

 「帰国1世」と在日離散家族らに残された時間はわずかしかない。20代だった人も今では80代前後の高齢者となった。

 北韓当局者は「帰国事業の出発点は同胞愛だ。在日同胞に対する熱い愛と温情は変わらない」と機会ある度に強調し、喧伝している。

 北韓は、現在推進中だという安否確認を「日本人配偶者」だけでなく、「帰国同胞」をも対象に実施するとともに、基本的人権の一つである出国・帰国の自由を尊重し、日本に行き、親・兄弟、親類らと再会できるように自由往来を認めなければならない。「同胞愛」を力説してやまない総連中央は積極的、明示的に、そのことを建議するべきだ。

◆国連委も勧告

 国連北韓人権調査委員会は報告書で「北送同胞」問題と関連して、「拉致その他の手段による強制失踪者のすべての家族及び母国に対して、これらの人々の安否情報、また、生存している場合にはその所在に関する完全な情報を提供すること。生存者及びその子の母国帰還を速やかに許可すること。家族及び母国との連絡を密にし、死亡者の物理的な遺骨等を特定し、送還すること」に加えて、「国民が望む場所に旅行し、移住できるようにするなどして、離散家族の再会を実現させること」を北韓に対して勧告している。


農民も絹の服・白飯・肉スープ享受
子女には外国留学など国家で保証

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総連中央の「帰国」扇動宣伝物抜粋

■総連中央常任委員会宣伝部
『帰国者のための資料』第2集(59年11月)

 「人民経済の発展と共に人民生活は毎年豊かになり、朝鮮人民は共和国北半部を地上の楽園と呼び幸福な生活を楽しんでいる」

 「在日60万同胞がすべて帰国しても、食糧は十分に保障して余るくらいになった。(略)第1次5カ年計画期間内に(略)副食物でも味が良く、栄養のあるものをいくらでも食べて余りあるようになる。(略)その昔、絹の服を着て白飯に肉のスープを飲んで暮らしたのが一部の千石持ちの金持ちだったとすれば、今日すべての農民が万石持ちにも劣らない生活をしているのだから、共和国を『地上の楽園』だというのは決して偶然ではない」

■総連中央常任委員会宣伝部編
『在日同胞の帰国実現のために−帰国問題に関する資料及び問答集』(59年12月)

 「法令で1日に8時間だけ働くようにし、(略)残りの時間は自分の思うがままに自由に過ごせるよう保障している。このほか労働者、事務員たちに1年に2週間ないし1カ月間有給休暇を保障している。(略)賃金を賃金通り受け取りながら、家で休息することができ、倶楽部、民主宣伝室、図書館、劇場、映画館、公園、競技場で娯楽を楽しみ、国家の保障で有名な温泉地、名勝地にある休養所、静養所に行って休息する権利も保障されている」

 「自分が住みたいところに暮らし、技能に応じてしたい仕事ができる。(略)これは人民自身が国の主人公であり、人民自身が自己の運命と幸福を開拓していく政治社会制度の優越性から出発している」

 「帰国する同胞の子女はその希望に従い、祖国の各級学校と外国留学を国で保証するだろう」


「敵対層」と規定、辺境へ…90年代飢饉 最初の犠牲に
「北送同胞」関連項目抜粋;国連北韓人権調査委の報告書

 国連北韓人権調査委員会は今年2月17日に発表した報告書で、「北韓では、過去にも現在にも、国やその機関、当局者による組織的、広範かつ重大な人権侵害が存在する。調査委員会が人権侵害と認める事案の多くは、人道に対する罪に相当する。これらは、単なる国家の行き過ぎた行為ではない。国が根ざす理想からかけ離れた政治制度の不可欠な要素になっている。こうした侵害の重大性、規模、本質は、同国が現代世界に類をみない国家であることを露呈させている」と強調するとともに、国際刑事裁判所(ICC)への付託を含め、北韓の人権状況に対する国際社会の緊急の行動を求めている。

 以下は、「北送同胞」と関連した項目の抜粋。

 ▼北韓においては、生活すべき場所及び働くべき場所を国家が強制し、国民の選択の自由を侵害している。さらに、国家が指定した居住地及び雇用の強制的な割り当ては多分に社会的階級を基礎にして行われる。指導部に対する政治的忠誠があるとみなされた人々は良好な場所で生活し、働くことができる。一方、政治的に疑いがあるとみなされた人々の家族は周縁地域に追いやられている。

 ▼北韓は国民を統制する道具として食料を使っている。当局が政治体制の存続に不可欠と考える者を、犠牲にしてもかまわないとみなされた者よりも優先する。この論理に従って、困窮している者から食料を没収及び奪取し、他のグループに食料を供給している。国家は食料へのアクセス及び配給に関して、出身成分を基礎にした差別を行っている。また、平壌など国内の一部の地域には特権を与えている。

 ▼北韓は、飢えた人々に食料を与えるために、入手可能な資源を最大限活用する義務を一貫して怠った。軍事支出、主に機械設備並びに兵器システム及び核プログラムの開発に係る支出が、大量飢餓の期間でさえ、常に優先された。

 ▼拉致及び強制失踪の大部分が、韓国戦争及び1959年に始まった在日コリアンの帰還事業に関連している。1960〜80年代に、韓国や日本、他の国々の数百人の人々も拉致及び強制失踪させられている。

 ▼強制失踪者の中には自発的に北韓に渡航した者も多い。物理的強制力または騙されて拉致された者もいる。その結果、彼らは皆北韓を離れる権利を否定された。さらに、自由及び北韓国内の移動の自由も大幅に奪われ、法の下において人として認められる権利、及び拷問やその他残忍、非人道的または名誉を傷つけるような処遇にさらされることのない権利も否定されている。

 ▼韓国や日本から北韓によって強制失踪させられたコリア系の人々は、その素性及び背景に対して差別を受けている。「敵対階層」と分類され、北韓辺境の炭鉱や農場で働かされた。社会的地位が低かったため、彼らの多くが90年代の飢饉における最初の犠牲者となった可能性が高い。

 ▼その政治システムは監視、弾圧、恐怖、処罰を戦略的に用いることにより、いかなる反対意見の表明も排除する、巨大な政治・治安機構が鍵となっている。究極の手段は、公開処刑や政治犯収容所による強制失踪である。

(2014.8.15 民団新聞)

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