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終わりなき北送同胞の悲劇…人権侵害の最たる犠牲者
新潟駅前の民団新潟本部に掲げられた「北送反対」のたれ幕
元在日同胞脱北者の支援を行う日本市民団体
■□
「政治犯」にされやすく
「反韓徳洙」の幹部悲惨

より厳しい処罰


 在日同胞は北韓の人権問題と抜き差しならない関係にある。1959年12月から始まった北送事業(総連による「帰国事業」)で北韓に送り込まれた計9万3340人(日本人配偶者など含む)が、人権侵害の最たる犠牲者とされているからだ。これは過去の話ではなく、今なお進行中と言わねばならない。

 北韓の人権侵害に関する国連調査委員会(COI)の報告書(4面)でも、「(帰国者たちが)罪を犯した場合の処罰は一般住民とは比較にならないほど厳しく、政治犯収容所に送られるリスクがより高かった」と記している。

 そうした実態の一部が公式に確認されたのは、韓国の国家人権委員会が発行した『2012 北韓人権侵害事例集』によってであろう。

 同委員会は1年間にわたって脱北者834人を面談調査し、人権侵害事例と証拠を収集した。『事例集』には、在日同胞社会に衝撃を広げるに十分な「政治犯収容所収監者名簿」が収録されている。

 特定された収監者総278人のうち、元在日同胞であることが明らかなのは25人(家族を含めれば80人以上)。「帰国者」が収監者の1割近くを占めた事実は、「一般住民とは比較にならないほど厳しい」境遇にあったことを示してあまりある。

 収監理由の多くは「北韓体制を批判した」「日本に行きたいと発言した」こと、あるいはスパイ罪の宣告を受けた身内に連座させられたことなどだ。「正確な理由は不明」、「北韓社会への未適応」というものもあった。北送同胞であれば誰もが口にし、陥らざるを得ない状況そのものが重罪の根拠にされた。

 目を引くのは「反韓徳洙派に分類され、粛清」というもので25人中5人がそうだった。ともに「中央委員会教育委員長」「京都支部委員長」などの経歴をもつ元総連幹部である。

 総連議長として専横をきわめた韓徳洙が自身に批判的な幹部を粛清するために、「帰国」を利用したことが改めて裏づけられた。

絶望的な状況に

 この5人のなかで、死亡していながら告知されない「本人行方不明」が4人、「栄養失調で死亡」が1人だった。4人は密かに処刑された可能性が高い。他の20人のうち行方不明が1人、死亡が6人(自殺1人)。釈放は連座して収監された2人だけだ。残る11人はその後死亡したか、今も収監中と見なければならない。

 COI報告書は、「帰国者」とその家族は10万から15万人と推計されているとした。収監されていればなおさら、そうでない場合でも「敵対階層」に分類され、命の綱だった日本からの送金もままならないとなれば、一般住民に比して絶望的な状況にあるのは疑いない。

■□
今も北韓賛美する総連
「人道に対する犯罪」 実態追及し告発継続を

「楽園」とだます


 総連中央はいまも「帰国運動は共和国側から提起されたわけでもなく同胞の自主的要求だった」との立場を崩さず、労働力と技術・資金を求めた北韓当局の指示に忠実に応えつつ、総連組織の財政基盤をも強化する「運動」であったことを隠し続けている。

 「人民経済の発展と共に人民生活は毎年豊かになり、朝鮮人民は共和国北半部を地上の楽園と呼び幸福な生活を楽しんでいる」「在日60万同胞がすべて帰国しても、食糧は十分に保障して余るくらいになった。(中略)第1次5カ年計画期間内に(中略)副食物でも味が良く、栄養のあるものをいくらでも食べて余りあるようになる。(中略)その昔、絹の服を着て白飯に肉のスープを飲んで暮したのが一部の千石持ちの金持だったとすれば、今日すべての農民が万石持ちにも劣らない生活をしているのだから、共和国を『地上の楽園』だというのは決して偶然ではない」

 これは総連中央常任委員会宣伝部が1959年11月、北送開始直前に発行した「帰国者のための資料 第2集」から抜粋した。翌月に発行した「在日同胞の帰国実現のために‐帰国問題に関する資料及び問答集」には「自分が住みたいところに暮らし、技能に応じてしたい仕事ができる。(中略)これは人民自身が主人公であり、人民自身が自己の運命と幸福を開拓していく政治社会制度の優越性から出発している」ともあった。

 6・25韓国戦争(50〜53年)による特需で急速な経済復興を遂げた日本社会にあっても、ほとんどの同胞たちはその恩恵に浴すどころか経済構造の底辺に押し込められていった。一方、59年ごろの北韓経済は、社会主義諸国の連帯に基づく経済支援などもあり、韓国を優に上回る活力を見せていた。

 それでも、「帰国」願望とためらいを同居させる同胞は多かった。総連の「地上の楽園」キャンペーンはそうした同胞の願望を煽り、ためらいを片隅に追いやった。それだけではない。人道主義を掲げる日本の官民挙げたバックアップも大きな推進力をもった。

 COI報告書でも、「帰国運動の専門家で人道活動家」の日本人が「総連ばかりでなく日本のメディアもこれらの夢をおだて上げて、10万人にもおよぶ人々を北朝鮮への移住に掻き立てた」と述べたと紹介されている。

熾烈に北送反対

 民団は東京・品川や出港地の新潟などで、「帰国」予定者を乗せた列車の運行阻止をはかるなど熾烈な北送反対運動を展開した。総連の支部が地域単位で「帰国」を思いとどまり、その同胞の多くが民団に加入したケースもある。総連機関や朝鮮学校に在籍しながら、「帰国」しようとする家族や友人・知人を押しとどめた同胞も数多い。

 総連は当初、「在日朝鮮人60万人のうち、約10万人は韓国民団の傘下だから残るでしょうが、50万人は北朝鮮に帰りますよ」と豪語していた。それよりはるかに少なかったからと言って、阻止運動が成功したと総括できるわけではない。10万人は民団に挫折感を抱かせずにはおかない数値だった。自責の念と総連に対する憤りが募ったのは言うまでもない。

民団の取り組み

 民団はその後、総連の指導部と傘下の一般同胞とを峻別して対応する姿勢を強めることになる。南北対立の中で故郷を訪れることも肉親と再会する機会もない総連同胞を対象に、個人もしくは小人数グループでの訪韓を推進し、75年9月からは母国墓参団事業を本格的に展開した。1世から4世まで5万人を超す総連系同胞が韓国・故郷を訪れている。

 過去の対立を超えた人道的課業であり、肉親の情を回復させる和合活動でもある墓参団事業は、参加する総連系同胞や引率する民団幹部に、北韓の凍土で悶え苦しみながら、父祖の地である韓国にも、ともに生活した家族・友人のいる日本とも断絶を余儀なくされた北送同胞の境遇を強く意識させることにもなった。

 民団は2003年、脱北して日本にたどり着いた元北送同胞を支援する「脱北者支援民団センター」を設立した。これまでに日本入りした対象者は200余人。民団はそのうち170余人に対し、定着・自立のための各種支援を行ってきた。また、脱北者が心身とも安らぐ交流会を関東、関西で定期的に開催している。

 北韓の人権問題に対する民団の取り組みは現行水準でとどまるわけにはいかない。言うまでもなく、北韓の人権侵害は公訴時効が適用されない人道犯罪であり、1998年の国際刑事裁判所(ICC)のローマ規程で定義された「人道に対する犯罪」そのものだ。

 カンボジアのキリングフィールドの張本人たちが35年後に、ボスニアの良民虐殺の指揮者が21年後に、それぞれ重刑を科されたように、金正恩ら北韓の中枢指導者をICCの法廷に立たせねばならない。民団は元在日同胞にかかわる人権侵害を追及しつつ、韓日両国の市民団体とともに北韓・総連を告発し続けていかねばならない。

(2016.8.15 民団新聞)
 
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