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在特会元会長返り討ち…過去の言動ヘイトスピーチ認定 |
名誉毀損訴訟東京地裁判決 差別扇動解消の規範に
在特会(在日特権を許さない市民の会)の元会長、桜井誠氏が有田芳生参院議員のツイッターへの投稿で名誉を傷つけられたとして損害賠償500万円を求めた裁判の判決が9月26日、東京地裁であった。小野瀬厚裁判長(梅本圭一郎裁判長代読)は原告である桜井氏の過去の発言を次々ヘイトスピーチと事実認定し、差別的言動解消法に違反すると断罪した。
有田氏は2016年4月、岡山市内で実施が計画されていた「拉致被害者奪還ブルーリボンデモin岡山」に桜井氏が参加の予定だと知り、ヘイトスピーチが行われると懸念。これを防止、反対する趣旨から1,桜井誠の存在がヘイトスピーチ=差別扇動そのもの2,差別に寄生して生活を営んでいるのだから論外と投稿した。これに対して桜井氏側は「人格そのものを否定するもの」と訴訟に踏み切った。
小野瀬裁判長は桜井誠氏の存在自体が差別扇動そのものとの論評に対して、「その前提事実の重要な部分において真実」と認めた。「差別に寄生」についても「(有田議員が)真実であると信じるに相当な理由がある」とした。
神原元弁護士は投稿で「被告の立場からすればこれ以上の成果は考えがたい、完全で完璧な判決である。訴えられ、被告となることで、かえって相手方にダメージを与えたとすら言える。この判決はリーディングケースとなるだろう」と論評した。
今回の判決の認定によって、ヘイトスピーチ解消法の定義にあたる多数の例が示されたことにより、行政や市民が、何が同法のヘイトスピーチにあたるのかの貴重な判断材料となる。
法務省は、解消法7条の啓発活動の一環として、今回の判決を人権擁護局のサイト内の「ヘイトスピーチに焦点をあてた啓発活動」の頁に全文を紹介し、同法の定義にあたるヘイトスピーチの例示として広く社会に示すべきであろう。そして、本判決などを参考に、速やかにガイドラインを作成し、提示することが不可欠である。
ヘイトスピーチ解消法が施行されているにもかかわらず、いまだに憲法学者を含めてヘイトスピーチの定義がない、もしくは明らかでないと主張する人々がいる。しかし、解消法は、国際人権基準からするとかなり限定的ではあるが、具体的な定義規定をおいている。今回の判決で、その定義規定にあてはめて具体的な言動がヘイトスピーチと認定された。すでに日本の法律において定義規定は存在し、ヘイトスピーチか否か判断は可能であり、解消法により認定されるヘイトスピーチが多数存在するという現実が議論の出発点とされなければならない。
ヘイトスピーチ解消法はヘイトスピーチか否かを認定する機能があることが今回改めて確認された。理念法ではあっても裁判の基準となり、ヘイトスピーチ解消のために役立つことが実証されたともいえる。
ただし、同法には禁止規定や制裁規定がなく、認定してもそれを止め、終了させる実効性が極めて弱い。特に、ネット上のヘイトスピーチや選挙活動に名を借りたヘイト街宣がマイノリティーに深刻な実害をもたらし、社会に差別と暴力を容認する空気を醸成し続けている。国及び地方公共団体は、「喫緊の課題」(解消法1条)として、ヘイトスピーチ解消法を実効化する法整備を直ちに行うべきである。
(師岡康子弁護士、寄稿)
(2017.10.11 民団新聞) |
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