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<寄稿>外国人被災者支援に携わって…RAIK所長 佐藤信行
仙台市内の「とうほく移住者フォーラム」で講演する佐藤信行さん

自治体が実態調査を

 「こんな辛い目にあうのなら、あのとき(3・11)死んでいればよかった」と、彼女は言う。12年6月、被災地の市役所で面接した時のことである。私は彼女に応える言葉が見つからなかった。長い沈黙のあと、一緒に面接していた在日3世の研究者が、「民団に生活支援を頼もうか」と言った。すると彼女は「みんだんって何?」と聞く…。

 彼女の父親は在日2世の韓国人、母親は日本人だが、彼女が生まれて間もなく両親は離婚。母親のもとで育てられた彼女は、地元の学校に通って就職し、地元の日本人青年と結婚して3人の子どもを育てていた。しかし、夫の暴力が繰り返され、友人宅に身を寄せていたとき、彼女は3・11に遭遇した。

 子どもや彼女の分の義援金を手にした夫は、震災の年の秋、離婚に同意した。彼女は夫の暴力からやっと脱することができたが、無一文のまま被災地に放り出されたことになる。しかも、頼るべき親族もなく、また、外登証の国籍欄に「韓国」と記されているだけで、同胞社会から隔絶されて生きてきた彼女には、同胞に頼る術もなかった。

地域社会では不可視の存在

 東日本大震災は、日本人と同様に、日本に住む外国人にも甚大な被害を与えた。とりわけ、災害救助法が適用された149市町村に住む外国人、7万5281人に対しては、安否確認をはじめ、その窮状の全容を把握できないまま、私たちは救援活動を始めなければならなかった。

 「外国人住民基本法の制定を求める全国キリスト教連絡協議会(外キ協)」は11年9月、地元の教会・NPOと共同で「外国人被災者支援プロジェクト」を立ち上げ、翌年4月、仙台に「外国人被災者支援センター」を設置した。

 しかし、支援活動は困難を極めた。それは、被災地域があまりにも広大であり、外国人被災者が点在していること。被災地の外国人の多くは地域社会において周縁化されてきたからである。

 90年代以降、日本人との国際結婚で東北の農村・漁村へ移住して来た中国人女性、韓国人女性、フィリピン人女性たちが多くいた。外国人住民の10年の構成比を見ると、「女性100人」に対して男性の比率が、岩手県34、宮城県69、福島県47となっていて、女性の割合が圧倒している。それは、国際結婚の移住女性が急増したためである。しかも、彼女たちのほとんどは、先の在日女性と同様に、地域社会では不可視の存在とされてきた。

生活再建から取り残されて

 震災から3年が経過した今も、生活再建から取り残されている移住女性、在日高齢者も少なくない。そのことは、私たちが自治体と共同で実施した石巻市調査(12年)と気仙沼市調査(13年)で実感させられたことである。両市の調査では、移住女性の多くが「日本語学習の場」を求めている(石巻73%、気仙沼84%)。また、「就労のための学習の場」を求める声も切実である(石巻74%、気仙沼75%)。

 一方、震災を機に、各地に移住女性のコミュニティが生まれた。それは福島県白河、福島、いわき、会津若松、宮城県仙台、石巻、南三陸、気仙沼、岩手県陸前高田、大船渡……と、被災地に点在するまだ小さなグループに過ぎないが、移住女性たちが「ザイニチ」10年、20年から得た叡智を傾けた自助組織でもある。

 昨年11月、私たちは東北学院大学で「とうほく移住者フォーラム」を開催した。そこでは、被災地の各地から集まった移住女性たちが、3・11以降の苦闘を語り、共通の思いと願いを宣言として採択した。その宣言は、政府と自治体、日本社会に「取り組むべき課題」を示すものである。

 すなわち、1,被災した自治体において外国人実態調査を行うこと2,震災で配偶者を失った移住女性や職を失った移住女性に対する就労支援と、その子どもへの就学支援と進路保障が急務であること3,在日コリアンをはじめ被災した外国人高齢者のほとんどが無年金であり、彼ら彼女らへの生活支援が何よりも必要であること4,移住女性に対する日本語教室・就労支援教室を、各地域でくまなく実施していくこと。

 私たちは今後も、被災地において「移住者の自助組織化」と、それを支え協働する「地域社会」のネットワークをめざして活動を続けていく。そのキーワードは「人権」と「協働」である。

(2014.3.12 民団新聞)
 

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