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在日へのメッセージ

「異色のパフォーマンス」
明珍美紀(毎日新聞社会部記者)



「異色のパフォーマンス」

 ステージと客席の最前列に、韓国と日本の演劇人が集まり、舞台構成を練っている。「天井からの照明は」「器財は」―。専門用語も飛び交い、緊張した空気がただよう。

 東京の青山劇場。日本に初上陸したコリアン・ビート・パフォーマンス「NANTA(ナンタ)」の初日の前夜、会場を訪れた。通し稽古の後も、韓国側のスタッフから細かい注文が続く。日本側の舞台制作スタッフも遠慮なく意見を述べ、一つのものを作り上げている。「いいな」と思った。国境を越えた友情は、きっとこういうところから生まれるのだ。

 ソウルで1997年10月に初演されて以来、韓国全土で20万人を動員した人気のパフォーマンス。けれども、企画立案した宋承桓さん(43)の狙いは、初めから世界だった。せりふがほとんどないのもそのため。伝統打楽器アンサンブル「サムルノリ」のリズムをベースにして、万国共通の「厨房」を舞台に異色のパフォーマンスを展開する。「韓国の演劇を世界に紹介したい」と試みた初のワールドツアーの皮切りが日本だ。

 「ひとつ残念なのは、韓国の若者が日本の音楽やアイドルに関心を持っているのに比べ、日本の若者はそれほどでもない」と宋さん。「こちらのレベルの問題もあるでしょうね」

 だが、私からみれば、社会や体制へのメッセージ性を持ち、ハングリー精神があることこそ、韓国や他のアジアのよさ。そして、その精神に「自分を模索する心」が加わったのが「在日コリアン」ではないかと思っている。

 宋さんに「在日の方々にひと言」と問うと「祖国の文化に積極的に接してもらえたらうれしい。私たちは一つなのですから」という答が返ってきた。

(2000.01.19 民団新聞)



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