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「ガツンと一撃」



■ガツンと一撃

 韓国であの「タイタニック」の動員数を超えたという話題の映画「シュリ」が、ついに日本に上陸した。テレビや新聞でもかなり宣伝していたから在日同胞だけでなく、多くの日本人の目に留まったことだろう。

 「シュリ」のホームページには、上映を待ち望む若い人の熱気が溢れていた。韓国の"素材"に対して、市民レベルでこれほど関心が高まったことが、かつてあっただろうか。韓国文化がようやく日本で陽の目を見ると思ったら、自然とうきうきしてきた。

 内容は一言で言うと、韓半島の分断がもたらす悲劇を描いたものだ。平和な日本のすぐ隣にいまだ冷戦の爪痕を残す国があること自体、よほど意識しない限りなかなか気づかない。そのぼくたちの日常に「シュリ」はガツンと一撃をお見舞いした。

 昨年8月中旬、エキスポが開かれる直前の江原道に下見に行ってきたが、立ち寄った東海沿いのおしゃれなカフェで見たものは、美しい風景とは不釣り合いの北に向かって延々と伸びる鉄条網だった。

 言葉を失うぼくに、江原大学の哲学教授は「これが韓国の現実ですよ」と力無く笑った。外国から来た人は一様にショックを受けると付け加えながら…。

 平和の大切さは、誰もが知っているはずだ。なのに解放から50余年が過ぎても祖国では今も38度線をはさんで南北韓の緊張状態が続く。

 「シュリ」を観て「映画の世界の話」と切り捨てるのは簡単だが、一人の「指導者」の狂った判断で罪なき同胞同士が争い、双方ともに犠牲になったのは、まぎれもない事実。

 あなたの大切な人と一緒にぜひこの映画を観てほしい。あなたの中できっと何かがはじけるはずだ。(C)

(2000.01.26 民団新聞)



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