民団新聞 MINDAN
在日本大韓民国民団 民団新聞バックナンバー
難波から世界チャンプを

在日2世の崔勝久さん



韓国でも大人気の
崔勝久さん

□■
亡き父の夢継ぎ名門ジム再興へ

「オールボクシングジム」オーナーに就任

 【大阪】亡き父の後を継ぎ、名門ボクシングジムの二代目オーナーに就任した在日同胞2世が、ボクシング界の内なる変革に意欲を燃やしている。インターネットを使ったきめ細やかなボクシング情報の発信もその一つ。地元のファンと共に難波から世界に通じる歴史に残る選手を育て上げ、地域の活性化にも貢献するのが夢だ。

 大阪の難波から世界チャンプを育てようと、先代の夢を双肩に担って名門ジムを引き継いだのは崔勝久さん(54)。故斉藤八郎会長が解放直後の1945年暮れに設立した「オールボクシングジム」(愛称、「オール〓」)を昨年夏、20年ぶりに復活させた。

 崔さんは、先代が命名した「オール」の由来について「オール・カインド・オブ・ピープル(すべての人々)。つまり『人種や国籍を超えた強さ』を求めたのでは」と解釈している。当時は、「在日」であることを隠さずには生きられなかった時代。ボクシングで実力があれば認められる世界をつくりたかったのかもしれないー。崔さんには先代の思いのたけがずしりと重く伝わってくる。

 同ジムは日本フェザー級王者のベビー・ゴステロ(フィリピン)、同バンタム級王者の大滝三郎ら日本王者4人を輩出した地元オールドファンにはよく知られた老舗。世界フライ級王者のパスカル・ペレス(アルゼンチン)が練習したこともある。しかし、次第に選手が少なくなり、20年前から休眠状態に陥っていた。崔さんは斉藤会長が亡くなった94年、日本ボクシング協会に休会届けを出した。

 崔さんの本業は川崎市内で営む玩具販売。ボクシングとはすっかり縁を切ったつもりだった。ところが昨年夏、難波に所有していた倉庫のテナントを募集したところへ「ここでボクシングジムをやりたい」との照会があり、父親の成しえなかった夢を実現させたいとの思いが強くなった。幸いなことに元WBC世界フライ級王者のヘルマン・トーレス氏がチーフ・トレーナーとして協力してくれることになったのも大きい。


事務所の壁面をおおう
「あしたのジョー」の巨大な看板

■インターネットで情報発信も

 ボクシングジムのオーナーを務める「在日」は多い。崔さんによれば全体の三分の一を占めているという。しかし、あたりまえに本名を名乗っているという例はごくまれだ。崔さんは事実上のリングデビューとなった昨年9月17日、大阪府立体育館でのジム復活のあいさつ席上、「難波から世界チャンプを出したい」と夢を語り、さらに遠回しながら差別のない社会建設を望んでいることも訴えた。

 崔さんが21世紀に向けて取り組もうとしているのは難波の地からインターネットで情報を発信しながら、セン在的なボクシングファンを掘り起こしていくことだという。

 今はよほどの好カードが組まれない限りは、TVで中継されることはない。しかし、毎週四百万部を発行する少年漫画誌でボクシングものが常に人気投票の上位に位置しているように、隠れたフアンは多い。こうした青少年の夢を育てるための具体的なプログラム作りを急いでいる。早ければ1月末にはホームページを開設できるところまで準備が進んでいるという。

 崔さんのもとには現在、金沢ジムから移籍した佐々木功選手(22)が在籍している。練習生も10人前後だが、将来有望とされる選手の移籍話も進んでいるという。いずれこの中から崔さんが夢を託せる「あしたのジョー」が出てくることだろう。

(2000.01.26 民団新聞)



この号のインデックスページへBackNumberインデックスページへ


民団に対するお問い合わせはこちらへ