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ホームヘルパー養成の研修・講座

川崎市が「青丘社」に委託



第1回講座で講義する
青丘社の李仁夏理事長
(7日、ふれあい館)

■担い手を育成、ねっと化も視野に

 【神奈川】社会福祉法人青丘社(李仁夏理事長、川崎市桜本)が、川崎市からの委託を受け、在日韓国人をはじめとする外国人高齢者へのホームヘルプサービスの提供を想定した養成講座を7日、川崎市ふれあい館でスタートさせた。神奈川県でホームヘルパー養成の権利を在日韓国人法人に委託したのは、青丘社が初めて。在日同胞高齢者の歴史的、社会的、民族的背景を踏まえた介護サービスを提供できる担い手づくりへの第一歩として期待されている。

 青丘社では、在日同胞高齢者の生活実態に見合った介護サービスを提供していくための社会システムを行政と一体となって作っていきたいと、昨年6月から川崎市に申し入れていた。今回のホームヘルパー養成研修講座の委託は、市が青丘社からの要請に具体的に応えたものといえる。昨年12月28日、青丘社に正式に伝えてきた。

 1月25日から受講者を募ったところ、川崎ばかりか隣接の横浜市内からも申し込みを受け、早々に定員の30人が埋まった。青丘社によれば、このうち約半数が在日同胞だという。 講座は3月25日まで週3回のペースで進む。合計52時間の講座履修生には家事援助のできる3級修了証が贈られる。

 7日は開講式に続いて青丘社の李仁夏理事長が「在日高齢者の生活実態」と題して総論的な講義を行った。今後も各講座で同胞高齢者の歴史的、民族的、社会的背景や特質を学びあい、あるべきサービスを考えていくことになる。

 青丘社では、今後、市内各地に居住する同胞高齢者が豊かな老後を送れるよう、きめ細かい相談サービス事業を展開していきたい考えだ。そのため、講座修了生をゆるやかな福祉ネットで結んでいくことも視野に入れている。

 在日同胞高齢者に非識字者が多いことから、とりあえずは、介護保険申請手続きにあたっての補助や、事業者との契約の際の仲立ちなどでサポートしていくことになりそうだ。具体的なことは3月の青丘社理事会で決まる見込み。


■□
川崎は無年金同胞老人が多数居住

 青丘社が昨年6月にまとめた「川崎市在日高齢者実態調査報告書」によると、在日同胞の集住地区となっている川崎区田島支所管内では、在日一世の高齢化が進み、無年金に加えて不安定な就業状況のため、不安な老後を過ごしていることが明らかになっている。

 調査はフェリス女学院大学講師の石坂浩一氏が中心となって調査部会を作り、98年7月から99年3月にかけて実施した。対象となったのは、青丘社が中心となって98年にスタートした高齢者交流クラブ「トラヂの会」のメンバー56人。ライフヒストリーを含め、すべてインタビュー形式で聞き書きした。

 対象者のうち、22人(39%)が配偶者と死別して独り暮らしだった。1996年の厚生省「国民生活基礎調査」では、65歳以上の世帯数のうち独り暮らしは12・7%でしかない。単純比較はできないが、同胞高齢者の独り暮らしの割合は著しく高いといえそうだ。

 しかも年金があるわけでもなし、自治体からの福祉手当月額1万8000円(99年10月、2万円に増額)だけでは心もとない。「トラヂの会」が始まってわずか1年余りで生活に関する相談は30件を超えたという。

(2000.02.09 民団新聞)



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