◆されどキムチ
ある民放局で先日、日本人と在日を含む韓国人数10人が相互に抱く感情、意見をぶつけ合う番組があった。その中で紹介された街頭インタビューで「韓国からイメージするもの」との質問に対し、日本人の回答で圧倒的に多かったのは『キムチ』。
予想通りだが、それまで舌鋒鋭く日本の現状を批判していた韓国人男性が「自国のイメージをタクワン、と言われて喜ぶ日本人はいないでしょう」と戸惑っていたのが印象に残る。
一方、韓国人による日本のイメージの一位は、やはり「植民地支配時代の残虐さ」だった。
歴史的に深いつながりのある隣国の国民が、これだけ噛み合わない印象しか抱けないのは不幸この上ない話だ。
日本は韓国のことを意識的に知ろうとしてこなかったとさえ言えるし、韓国はそんな日本の「歴史教育の欠如」を批判し続けてきた。その視点は確かに必要だが、将来をにらんで文化交流を重ねようとする最近の潮流は、相互理解を深める上では欠かせず、いずれ在日を取り巻く環境にも影響を与えるだろう。
その韓国からやってきた映画「シュリ」が評判だ。ストーリー自体には随所に不自然な部分もあるが、「アクション物」という点では確かに面白い。
映画館はガラガラなのに、なぜかシリーズが続いている日本の任侠映画などでは到底及ばない迫力があった。
熱心に見ていた茶髪の中高生らが、急に南北分断や在日の問題を勉強し始めることはないだろうが、潜在的にせよ韓国文化に好印象を持つはずだ。「シュリ」の果たす役割は大きい。
それにしても、先の番組では、ある韓国人青年が「日本のキムチは本当のキムチじゃない」と熱っぽく語るなど、迫力面で日本側は完敗だった。
自戒を込めて言えば、日本人は日本語で日本文化を語る素養があってこそ外国にも理解される。英語の公用語化を急ぐのは本末転倒だろう。
(2000.03.22 民団新聞)
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