民団新聞 MINDAN
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介護保険で困らないよう

同胞の立場で巡回相談



民団大阪・生野東支部を皮切りに
始まった鄭貴美さん(左)による
大阪市内民団支部巡回相談会(15日)

◆大阪市職員の鄭貴美さん
 民団支部を巡回し説明会

 【大阪】大阪市から配置された在日韓国・朝鮮人高齢者専門相談員・鄭貴美さんが、15日の大阪・生野東支部(生野区、趙文豪支団長)を皮切りに民団支部巡回をスタートさせた。在日同胞の高齢者が介護保険制度導入で不利益を被らないよう、きちんとした情報を伝えるのが目的。行政の広報では十分な情報が伝わっていなかったようで、同胞高齢者は「よく聞いておかなければ」と真剣に耳を傾けていた。

 説明会に集まってきた高齢者は「自分のことだからよく聞いておこう」「国が決めたことだから守らないとあかんやろ」と、わいわいがやがや。介護保険制度に対する関心の高さをうかがわせた。


◆無年金、ぜい弱な生活基盤
 日本語での意思疎通不十分も

 説明会で鄭さんは、「日本人の訪問調査員に気をつかって、何でもできるできると言ってはいけない」としきりに強調した。たとえば、手すりを持たなければ寝床から起き上がれないのに「(一人で)起きられる」と答え「元気である」と判断される例。食事にしても、家族などの手助けを必要としながら「(一人で)食べられる」と答えれば介護認定の対象から外される可能性があるという。

 これは要介護度を調べるための第一次判定が、85の調査項目をもとにコンピュータで下されるためだ。ましてや、日本人の相談員に在日同胞の生活習慣や文化の違いなどについての十分な知識があるわけではない。日本人と同様に扱われるのが普通だ。同胞側でも、日本語でしか話せない相談員では、十分な意思疎通は成り立たないだろうという。

 鄭さんは「(認定調査にあたっては)大阪市に通訳の同行を頼んだらいい。一世は福祉を通しての支援はないとの思いこみがあるようだが、今は何でも相談できる」と発想の転換を求めた。また、民団に対しては、同胞高齢者が不利益を被らないよう身近な相談窓口になるよう求めた。

 介護保険制度は国民年金、厚生年金などの公的年金を受給していることが前提となっている。同胞高齢者の場合はその多くが無年金状態に置かれているだけに、そもそもこの前提が成り立たない。

 保険料を含む自己負担金が、生活基盤のぜい弱な同胞高齢者に大きな負担となっていることは、この日の質疑でもうかがい知れた。「保険料は死ぬまで払うのか」「福祉を通して支払いをしてもらえないか」「民生保護を受けている者も払うのか」―。

 東大阪市内の夜間中学に通うオモニたち60人から聞き取り調査したところ、何らかの「年金」受給者はわずか10人にとどまっていたという。このうち10万円以上は2人、多くは3万円から5万円の範囲にとどまっていた。このうえ介護保険に伴う金銭負担には耐えられないというのが、参加したお年寄りたちの本音のようだ。


◆不利益解消へ行政と話合い

 趙支団長は「生野区の区長には年金をもらえない同胞への対応、不平等を突っ込んでいかなければならない。同胞のヘルパーや通訳の養成、在日同胞のための配膳サービスも必要だ」と述べ、行政と話し合っていくことを約束した。

 鄭さんは今後、大正支部、都支部、東成支部、生野西支部などを順次回っていくという。

 電話相談は06(6534)8181。毎週木曜日、午後1時から4時までを鄭さんが受け持つ。

(2000.03.22 民団新聞)



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