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ルーツ隠さず堂々と生きよう

「近江渡来人倶楽部」が設立



このほど設立された
「近江渡来人倶楽部」の総会

 【滋賀】古代から韓半島と縁が深い近江の地から、「在日」と日本人が「包容力と多様性を持った共生社会の構築」に努力し、全国のモデルになろうと1日、2年間の構想を経て「近江渡来人倶楽部」が誕生した。

 大津市内のホテルに発起人ら約130人がかけつけた設立記念会では、在日同胞がルーツを隠すことなく、堂々と暮らすことのできる「自由で公正な開かれた社会」の実現などを掲げた会則を承認するとともに、8人の幹事と3人の監査を選出した。記念パーティでは滋賀県知事らの祝辞に続き、韓国のカヤグムと日本の琴が共演して同倶楽部の門出を祝した。

 河炳俊発起人代表はあいさつで、「日本の制度的同化政策が差別と偏見を植え付けた結果、在日同胞は日本の中でありのままの姿を見せなくなった」と政策の不当性を指摘した上で、弥生時代にすでに農耕文化を持ち込み、日本の繁栄をもたらした渡来人の足跡を顧みつつ、「私たちの子供たちが日本社会に貢献することで目に見える存在になり、アジアや世界に打って出るよう一助となろう」と呼びかけた。

 記念会に招かれた前田憲二映画監督は、20代から日本全国をくまなく回り、祭りを250余本も撮影した。映画「神々の履歴書」や『百萬人の身世打鈴』の近著でも知られる前田監督は「奈良・飛鳥の墓の形は高句麗系で、飛鳥川の源流には鉄文化をもたらした加耶の集落があり、加耶鳴海神社が建てられている。滋賀県愛知郡上蚊野には297の加耶式古墳のうち60余が現存している」と明かし、「朝鮮三国時代の文化なくして日本の文化はない」と断言した。

 1日付けで名古屋入国管理局に赴任した坂中英徳局長は記念講演で、年間一万人の帰化者と同胞同士の婚姻減少により、あと50年で「在日」は自然消滅すると持論を展開。

 100年すれば日本の人口も半減する状況から「日本民族を中心とした多民族国家になることが予想される将来の日本にとって、異民族の先達になる『在日』のような独自の民族集団が消滅するのは、日本にとっても損失」と語った上で、「在日」が名前と出自を明らかにして生きること、帰化者をいかに民族陣営の中に取り入れるのか、「近江渡来人倶楽部」が民族再生の司令塔になって全国に旗揚げし、在日のアイデンティを凝縮した具体的方策を、と提起した。

 パーティ会場では、30年前に新婚旅行でソウル、釜山を訪れたという國松善次県知事が、「日本は韓国を通じて文化を学んできた。一時期の不幸な関係を払拭し、友好関係を近江の地から立ちあげようとする趣旨に限りない喜びを感じる」と祝辞。

 大津市の山田豊三郎市長は、韓国の慶州、日本の奈良・飛鳥、京都、近江に連なる古代からの縁を、これからは観光を通じた関係強化にと、具体案を提示。

 日韓親善協会大津・志賀支部の細川源太郎支部長は、「定住コリアンのバイタリティが日本の活力の源流。すばらしい共生の活動を」と語った。滋賀県立大学で食文化論を教える鄭大聲教授は、「被害者意識を乗り越え、日本社会に存在感をアピールする」必要性を強調し、「在日」の生き様が問われていると結んだ。

(2000.04.05 民団新聞)



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