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在日へのメッセージ

小林一博(東京新聞・論説副主幹)



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分断の地にも春は…

 「奪われた野にも春はくるのか」という韓国の有名な詩になぞらえると、「分断の地にも春はくるのか」となろうか。

 南北朝鮮が分断してからすでに半世紀が過ぎたが、ようやく南北首脳会談が開かれることになった。

 その間に朝鮮戦争があり、軍事的な緊張もあった。時に雪解けを思わせる動きもあったが、結局元の木阿弥に終わっている。あまりに長く、むごい歳月が流れた。今度こそは、南北の対話・交流が軌道に乗るように祈らずにいられない。

 いまから15年ほど前を思い出す。南北対話が進み、離散家族の再会が実現した。ソウル郊外のホテル。韓国側の家族がいくつものテーブルに分かれて待っているところへ、北朝鮮からの家族が入ってきた。

 お互いの名前を確認し、兄弟や親戚だとわかっても、しばらくは声がなく、やがて、涙をいっぱいためたまま、相手を呼びつつ抱き合う。

 「お母さんは」「おまえの名前を呼びながら、3年前に亡くなったよ」。こんなやりとりが、あちこちで行われ、会場は興奮と感激、そして涙、涙である。

 おおよそ35年ぶりの再会はあっという間に終わり、離散家族の相互訪問もそのときだけで終わってしまった。再々会は実現せず、さらに多くの人たちが、一度も顔を見ることなく、今日に至っている。

 南北首脳会談を報じる韓国の新聞には、「韓半島平和時代を開く歴史的第一歩」「52年ぶりに対座」「建設分野“特需”予想」などの見出しが踊る。

 これまでも1972年の南北共同宣言、先に紹介した離散家族の相互訪問、92年の「南北間の和解、不可侵、交流・協力に関する合意書」などのたびに、韓国内は高揚し、飲み屋では「南北統一万歳!」などという声が飛び交った。

 果たして今回はどうだろうか。ぬか喜びに終わらないよう、そして対話と交流がこの地域に安定をもたらすよう南北関係改善―統一をライフワークとする金大中大統領に期待する。

(2000.04.19 民団新聞)



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