民団新聞 MINDAN
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同胞の交流と和解の契機に



 韓国動乱勃発から50年。分断以来、初めての南北首脳会談が電撃的に実現しようとしています。

 韓国と北韓は、金大中大統領が6月12日から14日まで平壌を訪れ、金正日総書記と会談することで合意しました。まさに劇的なできごとです。

 私たち在日同胞は、首脳会談によって韓半島の緊張緩和が進み、平和と安定が保たれ、ひいては統一への大きな一歩を踏み出す契機となることを期待し、会談の成功を心から願います。


■包容政策の最大の成果

 韓国では政府、国民が一体となって経済危機をみごとに克服しました。間髪を置かず南北関係の関係改善に向けた取り組みにまでこぎつけたことを、海外同胞として素直に喜びたいと思います。

 首脳会談は、金大統領が粘り強く進めてきた包容政策が功を奏したものです。韓国内には包容政策に対して若干の異論もあったようですが、日米と協調しての路線が正しかったことが証明されたと言えます。

 この度の会談は、祖国が分断されて以来初めて南北の首脳同士が直接会うことに大きな意義があります。失われた信頼関係を取り戻す上で、首脳同士が個人的に面識を深めるのは非常に重要なことです。

 会談の成功に向けて乗り越えていかねばならないハードルがあるのも事実です。予備接触が順調に進むとは、決して断言はできません。

 韓国では総選挙で野党ハンナラ党が第一党の座を占めました。韓国内で金大統領の政治基盤が揺らいでは、指導力が十分に発揮することができません。

 これまでの北韓の対応を見ると、韓国からの一方的支援を求めてくるだけの可能性もあります。北韓のねらいは経済危機、食糧不足からの脱却にあることは誰の目にも明らかだからです。

 首脳会談では、経済支援の問題が優先的に論議され、政治問題、軍事問題などの本格的な論議は、息の長い交渉が必要になるだろうと思われます。韓国政府の粘り強い対応を期待したいものです。


■同胞社会に大きな影響

 在日同胞社会に対しては、かつてなかったような好影響を与えるに違いありません。民団・総連の交流は、91年に千葉で行われた世界卓球選手権大会のあと数年間は各地で活発に行われました。

 その後、民団が進める地方参政権運動に反対する総連中央の一部幹部らの手によって、交流事業も途絶えがちになっています。最近では民団の提起によって、ごく少数の地方で続けられているに過ぎません。

 両組織間の交流推進と地方参政権の問題は本来、まったく次元の違う事柄です。同胞が望む交流に、総連中央が意識的にブレーキをかけているのです。残念至極と言わざるを得ません。

 在日同胞は民団系であると総連系であるとを問わず、同じ歴史と居住経過を持っています。日本社会で苦しい時代を過ごしてきた同胞として、交流をより積み重ねていくべき間柄なのです。

 民団と総連の間に相互不信が根強くあるのも事実です。本国の政治状況が同胞社会に色濃く反映されていることが、その原因のひとつと言えます。それだけに、会談の成りゆきによっては同胞社会に大きな変化をもたらす可能性があります。

 私たち在日同胞は、南北首脳会談を能動的に捉え、同胞社会の交流と和解の決定的な契機としていきたいものです。

(2000.04.19 民団新聞)



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