民団新聞 MINDAN
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金大中大統領の談話(要旨)



 国民の皆さん。安定が国政発展の基礎です。安定なくして何事も成されず、まず政治的安定を達成しなくてはなりません。総選挙での民意は、与野党が協力して国の政治を安定させるという厳粛な命令を下したものだと思います。私はこのような民意を心から受け止め、尊重する決心を持っています。

 今や与野党が国政のパートナーとして相互に尊重し、対話と協力の大きな政治を一度やりとげなくてはなりません。与野党ともに大きな跳躍と使命感を持って、民意に従い国民と歴史の前に任された責任を成し遂げなくてはなりません。

 このような過程で、今後の協力関係、特に経済問題、南北問題など重要な国事を協議するために、李会昌総裁と近い内に与野領袖会談を持つようこの場を借りて正式に提起する次第です。

 国家の安定のためには、政治の安定だけでなく、法と秩序が確立されなければなりません。私は大統領として合法的な示威、集会、デモに対しては、すべての権限をはっきりと保障します。しかし、不法と暴力に対しては、断固として厳重に処罰します。

 世界のどの民主国家にも不法と暴力を容認する国はありません。万一、これを容認すれば社会秩序は壊れてしまいます。大統領は強い決心を持ち、法と秩序を守ることをこの場でせん明する次第です。これにともなう集団利己主義も徹底して排撃し、せっかく回復途上にあるわが国の経済を再び墜落させようとする行為には、これ以上容認しないことも国民の皆さんにはっきり申し上げます。

 また、一方では不正腐敗をより一層剔抉(てっけつ)します。「国民の政府」の元では、政権次元の非理はなくなりました。しかし、いまだに多くの不正が残っていると思います。不正腐敗を最後まで追跡し、えぐり出し、澄んだきれいな国政を実現しましょう。

 兵役の非理と不正選挙の問題は、厳重に罰します。迅速で公正な捜査を進行します。しかし、どのような政治的差別もそこには決してありえないことを大統領として国民の前ではっきり誓うものです。

 国政が安定した中で改革を推進しなければなりません。確固とした意志を持ち、今後3年間中断なく改革を推進します。

 まず、改革立法を継続します。人権法を制定します。反腐敗基本法を制定します。そして、政治関係、選挙関係法をこのたびの選挙の経験を生かし、完璧に補完、改正するようにします。

 二つ目の改革としては、経済改革を一貫して推進します。最大の力点をここに置きます。金融、企業、公共部門、労働、この四大改革を年内に確実に成し遂げます。そして、これに併行して第二段階の改革を推進しており、今後もそのようにします。

 金融と企業の外形的改革から今や質的改革、ハードウェアからソフトウェアに、すなわち専門性と世界的経済力を持つ方向へ改革を推進していきます。

 公共部門の効率化を高めます。そして民営化改革は予定通り支障なく推進していきます。

 改革と共生の新労使文化を発展させていきます。

 伝統産業と尖端産業、この新旧産業が知識基盤経済で発展させていくよう、二つを併行して発展させていきます。

 このようにしてわが国を世界一流の国家に創るという目標のために、確実に成功裏に前進していくということを国民の皆さんに約束します。

 特に、強調することは外国人投資に対する政府の約束を遵守するということです。韓国は世界のどの国よりも投資に適した国だというような国を創るという大統領の約束はきちんと守っており、今後も守っていきます。

 外国人投資がどれほど重要なのかは、英国でわが国の資本が設立した工場が竣工式をした時、女王が来てテープカットをしたり、このたび私がフランスに行った時、フランスの大統領が、わずか1000名しか雇用しないわが国の企業体の工場が東欧に移転しないように特にお願いしたことなど、このような点だけを見ても先進国さえも外国投資をどれほど重視しているかを私たちは知ることができます。

 その次は、国民生活に直結している物価、金利、為替レート、株価などを安定させるのに全力を尽くします。

 特に、株価安定については米国の株価暴落の影響を最小化し、わが国の株式市場安定に期すよう特別な指示をしたことがあります。

 三番目には、生産的福祉を実践する計画を確実に進行します。今や私たちは中産階級と庶民が待遇を受ける時代を創らなければなりません。このような約束は今後3年間、必ず守り、任期末にはOECDの20カ国先進国中、最上位圏の社会的保障を実行する国に創ります。

 今や生産的福祉を通して、今年から国民の基礎生活を保障し、すべての国民が生計の安定と医療、教育の保障を受ける時代が始まっています。

 情報と教育を通して、全国民が情報化社会に適応することのできる新知識人になります。このようにしてこそ、就職が楽になり高い所得を得ることでき、中産階級よりも上に上ることができます。サラリーマンの所得が向上し、社員地主制度や成果級制度を実践していきます。

 昔は衣食住だけ解決すれば、この世の春と言いました。しかし、今は生活の質が重要な時代です。生活の質を向上させるために、文化、観光、レジャー、スポーツ、環境など、すべての分野を改善していかなければなりません。

 南北関係について一言申し上げます。皆さんもご承知のように、近づく6月12日、南北の両首脳間で歴史的な会談が開かれます。分断55年ぶりに初めて実現する頂上会談です。その意義は、どれほど高く評価しても評価しすぎることはありません。

 このような会談の実現は、南北間の平和と協力を望む国民の皆さんの期待がこれを具現したと思います。また、1300年間、統一国家を維持してきたこの民族の歴史の底力がこれを実現させたと考えます。

 この問題は本当に超党的かつ汎民族的な課題です。この問題の成功のために、国民の皆さんの積極的な声援と指導鞭撻を願います。そして、与野党が協力して超党的にこの対話を成功させていきます。

 南北頂上会談の当面する目標は、ベルリン宣言で提示した四大原則を中心に話そうと思います。それは南北間の経済協力、韓半島の平和定着、離散家族再結合、そして南北間の常設機構設置などです。

 私たちは北韓に対して、今まで人道的支援をしてきましたし、今後も支援をしていきます。

 しかし、私たちが今着手しようとする経済協力はどこまでも経済論理によって達成しなければなりません。ここには両者が共同で利益を取得するため、相互主義が実現されなければなりません。南北双方がともに利得を得る経済協力をしなければなりません。私たちは北韓に対し、政府次元、民間次元または国際的な次元での経済協力が相当な水準で実現できるよう展望しており、それは韓国の経済にも大きな影響を与えると見られます。

 私たちは共産主義も戦争も願っていません。共産主義の挑発を防ぐための安保態勢は今後もみじんも揺らいではだめです。しかし、戦争を防ぐための南北間の和解協力努力は、それと併行して成さねばなりません。これがこの民族が平和的に生き、将来統一を達成するために必須不可欠な条件となります。

 頂上会談に臨む私の態度はこうです。欲張らず、落ち着いて対処していきます。当面の実際的な成果を得ることに目標を置きます。1回ですべてをやりとげようとはしません。私一人ですべてのことをしようとは考えてもいません。次の政権が行う仕事も考えながら実施していきます。

 この過程で国民と野党、関係市民団体の皆さんの積極的な協力が絶対的に必要です。このような挙国的な協力なしではこの問題は、成功が難しいと思います。また、この問題は必ず成功させなければならない国民的課題であり、民族的な課題だと思います。

 私はあと3年、残りの任期について私なりに固い決心を持っています。大統領の重責を支障なく遂行するのに最善の努力をします。全力を尽くし、任務を遂行します。謙遜で誠実でありながら、毅然として剛直な姿勢で国政を引っ張っていき、国民を天のように仰ぎ、民心に従ってすべてのことを決定していきます。歴史の中での評価を考えながら行動する大統領になります。

 19世紀の歴史から教訓を学ばなくてはなりません。その時期、わが国はいち早く開国し、近代化を急がなくてはなりませんでした。しかし、これに背きついに国が滅びました。その結果、日帝の統治、国土分断、6・25戦争、そして現在までの武装対決など、100年以上の歳月をかけて災いを子孫に与える結果になっています。1時期の祖先の過誤がこのような不幸を招いているのです。

 21世紀は人類の歴史上最大の激変期です。大革命期です。ここに私たちが正しく応戦しなければ、私たちは19世紀の歴史を繰り返すこともあり得ます。しかし、きちんと応戦すれば、私たちは世界の一流国家になることができます。情報化時代の挑戦に、私たちが賢明に成功裏に応戦しなければなりません。世界化時代の挑戦にも正しく応戦しなければなりません。  今、国土を分けているこの分断時代の残酷な挑戦にも私たちは、一方で安保、一方で和解協力を通して応戦していかなくてはなりません。このような試練を克服しなければなりません。それを通して私たちは世界の一流国家と祖国の平和的統一を達成することができるのです。

(2000.04.19 民団新聞)



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