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KOREAN SOCCER REPORT・アジアの虎の鼓動

「ソウルW杯スタジアム」
慎武宏(スポーツライター)



急ピッチで工事が進む
ソウル上岩洞のソウルW杯スタジアム

■□
統一チームVS日本代表戦で
歴史的なこけら落としに

 4月26日の韓日戦の朝、私はソウル市麻浦区上岩洞に位置する2002年W杯スタジアムの建設現場にいた。1998年10月から工事がスタートしたその場所を訪ねるのは、今回で三度目だったが、その現況を見て驚かずにはいられなかった。というのも、昨年8月に訪れた際にはゴール裏のスタンド設置工事に着手したばかりの段階だったが、もはやスタジアムの骨格はしっかりと出来上がっており、屋根の取り付け作業に入っていたのだ。

 工程率にして約43%。現場では2001年12月の完成を目指して連日の徹夜作業が続いているという。七万人近い収容規模を誇るそれが完成したとき、アジア最高のサッカー専用スタジアムが誕生すると確信した。

 その建設現場で話題持ちきりだった4月26日の韓日戦は、韓国が1-0で勝利した。が、“アジアの虎”は勝利の余韻に浸る暇はない。翌々日には今年10月にレバノンで行われるアジアカップ本大会の組分け抽選会が開かれ、韓国は中国、クウェート、インドネシアと同じB組に属することが決まった。韓国国内では早くも40年ぶりの優勝に期待が膨らんでいる。

 アジアカップは文字通りアジア圏のサッカー最強チームを決める4年に一度の大陸別選手権だ。サッカーの世界ではW杯に次ぐ権威を誇る大会であり、開催国の特権で2002年W杯の予選を免除された韓国にとっては、数少ない“真剣勝負”の場所でもある。

 そのアジアカップで、南北統一チーム結成の可能性が出てきた。来る6月、韓国と北韓が歴史的な首脳会談を実施するが、その会談を足かがりに南北統一チームを結成したいとの意向を大韓蹴球協会の鄭夢準会長が発表したのだ。それが実現すれば、ポルトガルで行われた91年世界ユース選手権以来の南北統一チーム結成となる。韓半島に住む人々はもちろん、在日コリアンにとっても、これほどうれしいことはないだろう。

 ただ、南北サッカー交流そのものは歓迎できるが、アジアカップでの結成となると疑問符がつく。

 前出した通り、アジアカップは真剣勝負の場。韓国がその機会をみすみす逃してしまうことは惜しい。すでに北韓は一次予選での敗退が決まっているだけに、AFC(アジアサッカー連盟)加盟諸国からの反発もあり得る。仮に結成が実現したとしても、南北が呼吸を合わせる準備期間は少なく、北韓は長らく国際舞台を遠ざかっていた。“最強”チームを作るとなれば、北韓選手の南北統一チーム入りはひいき目に見ても2〜3人が限界だ。それで果して、真の南北統一チームと言えるだろうか。

 6月の首脳会談実現で加速するであろう南北交流ムードに水を差す気は毛頭ない。私自身も首脳会談実現の第一報を聞いて鳥肌が立った一人だ。ただ、サッカーが政治の道具として利用されることには少々の違和感を覚えるし、双方にとってさほどメリットがないアジアカップでの統一チーム結成は時期尚早に思えてならない。

 真の南北サッカー交流を推進するのなら、その足取りが緩やかでも両国が長期的視野に立って確実に接近し、前進していくほうがいい。それが韓半島サッカーの発展に大きく寄与するはずなのだ。

 しかし、南北統一チームは我々民族の共通の夢でもある。私もぜひ見てみたい。そこで浮かび上がるのが、ソウルの2002年W杯スタジアムだ。そのこけら落としとして、南北統一チーム対日本代表の親善試合を行うのはどうだろう。

 それが実現すれば、2002年W杯への機運が高まることはもちろん、南北及び日本を含んだ極東アジア新時代を切り開くことができる。サッカーで政治を動かすこともできるような気がするのだが……。

(2000.05.17 民団新聞)



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