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在日同胞の旧軍人・軍属

補償の道開かれたが…不満消えず
東京で支援者と集会



集会で「国はまず謝罪を」
と訴える姜富中さん

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40年以上も放置…日本人との格差残す

 在日同胞戦傷元軍属とその遺族らが、日本の与野党による補償のための特別立法案について、「同じ境遇にある日本人への給付に対して著しく均衡を欠く」「新たな差別の拡大につながる」としてより一層の見直しを求めている。

 民主党が国会に提出した「特別永住者等である戦傷病者等に対する特別障害給付金等の支給に関する法律案」は、永住資格を持つ旧軍人・軍属に日本人同様の年金(特別障害給付金)を支給しようというもの。これまでは戦傷病者戦没者遺族等援護法(援護法)の戸籍・国籍条項に阻まれ、同制度の発足以来一貫して放置されてきただけに、遅きに失したとはいえ一歩前進だ。遺族に対しては特別給付金を支給する。

 しかし、これだけで当事者の国への根深い不信が解消されるわけではない。日本人として徴用されたのにもかかわらず、日本の敗戦後は一方的に国籍を戻され、年金を受給できないできたことが心の傷となっている。旧海軍軍属として従軍し、右手の指四本と右目の視力を失った姜富中さん(ジ賀県在住)は「いまさらお金が欲しいわけではない。いままで日本人と差別してきたことに対して、国はまず謝罪してほしい」と話している。

 被害当事者が援護法を適用されていれば受け取れたであろう年金額は、米軍の機銃掃射を受け、右腕を15p残して切断した石成基さん(第3項症)の場合で5770万8250円に上る。(1952年4月〜94年3月までの試算、95年10月31日日本厚生省答弁)。こうした過去の不支給分について言及していないことも、当事者の不公平感を強くしている要因の一つだ。

 ましてや、連立与党案のように260万円から400万円までの弔慰金や見舞金だけで解決を図ろうということであれば、拒否者も出ると予想されることから、被害当事者の間を分断しかねないと、憂えられている。

 しかも、両法案とも対象者を特別永住者に限っており、韓国国内に在住する遺族は現行のままでは対象外となってしまう。済州道にいながら、鄭商根さん亡き後、原告として裁判を受け継いでいる息子の鄭ピルチンさんもその一人だ。鄭さんは「父の遺志を継いで裁判をしているのに除外は矛盾している」と驚いている。

 司法もこの間、一連の裁判で戦傷病者戦没者遺族等援護法(援護法)の戸籍・国籍条項は「法の下の平等」に反するとの判断を示し、立法を通じて在日韓国人にも援護法適用の道を開くか、同等の措置をとるよう求めてきた。それだけに弁護士や支援団体からは、「9年間にわたる裁判で切り開いてきた地平を一歩たりとも譲ってはならない」(故・鄭商根さんの弁護を担当している丹羽雅雄弁護士)とする声が強い。

 石成基さんと故・陳石一さんの裁判を支援している「在日の戦後補償を求める会」の共同代表である李仁夏さんは、@日本人と同等の「年金」支給A過去の不支給分については、適正な「1時金」の給付Bこの間の長期にわたる放置に対しては何らかの謝罪の意思表示を被害当事者共通の要求としている。また、鄭商根さんのように「在日」の当事者がすでに亡く、遺族が「在外」の場合は、例外的に補償の対象とするよう求めている。

(2000.05.17 民団新聞)



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