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栃木県の在日3世・辛麻由さん

県主催の「人権作文」で入選



 栃木県教育委員会(古口紀夫教育長)が毎年、同和対策推進県民運動強調月間の一環として、県内の小・中・高校生と保護者を対象に行っている「人権に関する作文」で昨年、佐野市立天明小学校(寺岡篤校長)3年の在日同胞三世の辛麻由さん(9)=当時小学2年=が佳作に入選した。

 麻由さんが取り上げたテーマは「二つのみょう字」。幼稚園のころ、韓国人でありながら通名を使うことを不思議に思い、本名に変えた麻由さん。名前への愛着や名前がいかにその人にとって大事であるかという気持ちが、素直な感情を綴った文章から伝わってくる。

 「人権に関する作文」は同和問題の早期解決を目指し、同和教育の一層の推進に役立てるため、啓発事業の一環として人権問題を高揚させる目的で同教育委員会が行っている。

 99年度の応募は県内606校の小・中・高校から3601点(保護者から九点)が寄せられた。審査は同県教育委員や教員、保護者などで構成される29人があたり、二次審査で501点にしぼられ、最終的に78点が入選した。

 小学生部門の入選は、最優秀賞1人、優秀賞5人、佳作30人。外国籍児童の入選は韓国籍の麻由さんと、ベトナム籍の男子児童(中学生部門)の2人。

 作文のテーマも「生活経験から生ずる差別」を主眼に、障害者問題、高齢者問題、交友関係、世界の人権問題など、多彩な内容が寄せられた。昨年、日本人児童が外国人を扱った作文は64点に及ぶなど、人権に関する認識は年々高まっているという。

 同教育委員会・同和教育室指導主事の池田哲夫さん(41)は「子どもは大人が思っている以上に前向きに考えています。異質なものを排除するのではなく、共存したいという思いが込められています」と話す。

 また「人権や同和問題は日常生活の中で、弱い立場にある人との関係を通してどこでも学習できます。今後もこの作文は継続していきたい」と人権感覚の優れた子どもたちが輩出されることに期待を寄せている。 なお、入選作品は人権に関する文集「あすへのびる」にまとめられ、教材として活用してもらうため各学校などへ配布された。

 麻由さんの祖父は、民団中央本部の辛容祥常任顧問。


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*** 「2つのみょうじ」 ***

佐野市立天明小学校3年  辛 麻 由

 わたしのおじいちゃんは、かん国人です。おじいちゃんは、子どものとき、かん国から、日本にきました。そのとき、日本のみょう字をもらいました。

 わたしも、ずっとそのみょう字をつかっていましたが、ようちえんの年ちょうの時に、本みょうにかえました。

 わたしは、どうしてかん国人なのに、日本のみょう字を、つかっているんだろうとふしぎにおもったので、かえました。はじめのころは、みんなが、どう、おもうのか、しんぱいだったけど、みんなは、いつもどおりに、あそんでくれたので、よかったです。

 1年生のとき、こういうことがありました。ようちえんのときに、いっしょだった子がだれかに話していました。「まゆちゃんて、前は、ちがう名前だったんだよ」と、言う声がきこえました。わたしは、少しいやな気もちになりました。でも、わたしは、いまの名前がすきなので、すぐ、元気になりました。

 クラスのおともだちの中で、と中でみょう字をかえた子がいます。そのとき、先生が、「みんなは、お父さんのみょう字と、お母さんのけっこんする前のみょう字があります。こんど、お母さんのけっこんする前のみょう字をかぞくのみんなが、つかうことになりました」と、話してくれました。

 わたしは、そういうこともあるんだなあ、と心の中でおもいました。そのおともだちもクラスの子もそれからは、新しいみょう字でよびあい、いつもとかわりなくだれでも、じぶんの名前はたいせつです。お父さんのみょう字やけっこんする前のお母さんのみょう字も、お父さん、お母さんはずっとたいせつにしてきたとおもいます。

 わたしも、もっと、もっとじぶんの名前をたいせつにしたいとおもいます。わたしが本みょうにかえたいと言ったとき、お父さんやお母さんがさんせいしてくれてほんとうによかったとおもいます。

(2000.05.24 民団新聞)



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