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地方参政権付与法案

衆院特別委で実質討議



趣旨説明する公明党の冬柴幹事長
(後ろは右から中野、西野、松本の各議員)

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採決は次期国会へ
衆院解散で廃案、再提出

 与党の公明、保守(自由)両党から提出されていた永住外国人に対する地方参政権付与法案の審議が23日午後、衆議院の政治倫理・公職選挙法改正特別委員会で行われた。自民党以外は今国会での採択を強く望んだものの自民党が一定の結論が出ていないことから、採決は次期国会に持ち越される格好となった。法案は、衆議院解散によって一旦廃案となるが、次期国会に改めて提出される見込み。

 法案提出者の冬柴鐵三公明党幹事長は、趣旨説明で日本国内の永住資格を有する外国人は約63万5000人(うち在日同胞は55万5000人)に達しているとし、@地方のことは地域住民が自主的・自立的に決定するのが好ましいA成熟した民主主義国家として、地域に密接な関係を持つ外国人住民の意思を、地域の公共的な決定に反映すべきB特に、日本で生まれ育ち、生計を営む在日韓国人など特別な歴史的背景がある人々には日本国民に近い扱いがされるべき−と強調し、昨年10月の与党三党合意を踏まえて今国会での成立を強く求めた。

 このほか、野党の民主党(中野寛成議員)、保守党(西野陽議員)、共産党(松本善明議員)、政府から保利耕輔自治大臣が答弁に立った。

 提案理由に対して自民党の中谷元委員(党選挙制度調査会事務局長)は「法案はきわめて重要な問題として認識している。党内で10数回真摯に検討してきたが、いまだに結論を得るに至っていない」と前置きし、特に「憲法上容認できるか十分な論議が必要だ」などと消極的な慎重論に終始した。

 これに対して冬柴幹事長は「最高裁の第三小法廷の判事5人全員が一致して、憲法上禁止されていないとしたのは重みがあり、論旨も納得できるものがある」と答えた。

 また中野議員も「違憲ではないと最高裁が明確に言っている。これは立法上の問題である。在日韓国人の歴史的経緯からみて、前向きに人権保障し、開かれた日本にしていくべき」と強調した。

 続いて質疑に立った民主党の田中慶秋委員は「自民党にしっかりしたポリシーがないから結論が出ていない。政権政党の自民党がうやむやにしているのはよくない。他の政党は一致して立法化しようとしている」と述べ、保利自治大臣に政府見解をただしたが、自治大臣は明確な答弁を控える一幕もあった。

 さらに田中委員は「自民党だけが結論を出していない。今委員会で採択すべきではないか」と詰め寄った。また公明党の遠藤利良委員は「欲しければ帰化せよ」「外国人に地方参政権を与えるのは亡国の始まり」という暴論が一部にあることを取り上げた。

 この発言を受けて冬柴幹事長は「帰化はその人自身が決めること。帰化しないからといって不利益を与えるのはおかしい」と答えた。「亡国…」についても「そのような考え方自体が国を滅ぼす考えであり、受け入れがたい」と述べた。

 審議は2時間半にわたって行われ、自民党以外の政党は今議会での採択を求める声が強かったのに対して、自民党の消極的な姿勢が目立った。

 次回の審議日程を決めないまま委員会は終わったが、6月2日に予定されている衆議院解散までに採択されなければ、法案は廃案となる。

 公明党、民主党などでは、選挙後の特別国会を経た後の国会に改めて法案を提出することで一致している。


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早期成立目指す
冬柴鐵三・公明党幹事長がコメント

 今国会で審議を始めねばと思い、ねばり強くやってきた。審議においては提案者として趣旨を説明し、各政党から質疑も受け、一定の前進をみた。解散が近づき廃案になるのは残念。しかし審議内容、答弁は永久に残る。選挙後、3党が連立することを確信し、政策協議合意に文言を入れる。必ず近い将来に成立させる覚悟でのぞむ。

(2000.05.31 民団新聞)



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