民団新聞 MINDAN
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在日へのメッセージ

在日が消滅する日
石高健次(朝日放送報道プロデューサ)



 刺激的な見出しは悪い冗談でもシャレでもない、単純に数の計算から導かれる結果なのだ。

 数年前から在日で帰化する人はほぼ1万人で推移している。加えて在日人口の自然減(出生者マイナス死亡者)は1000人近くなっている。(96年は755人)八割以上の在日が日本人と結婚するうえ国籍法改正で、生まれた子供が日本籍を取るためである。今の在日人口からしてあと50年を待たずして在日人口はゼロになるというのだ。「民族消滅」をどうするのか!?

 私は、答えを以前このコラムで紹介した「近江渡来人倶楽部」の発足に見る。この在日市民団体は、民団や総連にある本国志向・依存に縛られず、「自分たちは日本に永住するんだ」という現実から出発。自由公正な日本社会の実現に向け、地域社会への貢献、帰化をしても出自を隠さないでいこうと訴える。

 実は、この設立総会が去る4月大津で開かれたのだが、記念講演を行ったのは法務官僚の坂中英徳氏だった。77年、「在日朝鮮人の処遇」を書いたあの坂中論文の、その人である。当時は「同化政策」「民族消滅を促す」などと批判もあったが、その後の現実は、在日は日本に永住するものとして法的地位を向上安定させよといった坂中論文の通りに運んだ。

 このコラム冒頭部分は坂中氏が講演で語ったものだ。彼は、民族風化の流れに抗して、本名を名乗り自らのアイデンティティを失わないで欲しいと訴えた。今の少子化のままいけば、100年後、日本人口は五千万前後になる。当然のこととして他民族の流入、共生以外に生き残る道はなく、彼らを友人として受け入れることが重要だと説いた。

 日本社会では民族性について熱く語られなくなって久しい。が、それを現実に即して論じ、希求する「近江渡来人倶楽部」のようなエネルギーが誕生した。それは将来の日本を構成する異民族集団のあり方を提示し、かつリードする力になるだろうという坂中氏の話に目から鱗が落ちた。

(2000.06.07 民団新聞)



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