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KOREAN SOCCER REPORT・アジアの虎の鼓動

台頭する韓国ヤングパワー



在日同胞初の韓国代表となった
朴康造(右)はエジプト戦で
初得点を上げるなどの活躍を見せた

■□
格上のユーゴを圧倒
シドニーで躍動期待

 「韓国サッカーの未来は暗い」。昨年9月の韓日五輪代表壮行試合二連敗や、ベテランに頼った今年4月の韓日戦の戦いぶり見て、そんな危惧の声をよく耳にする。

 しかし、心配は無用だ。韓国ヤングパワーは順調に育ち、頭角をあらわしている。5月下旬に行われたユーゴスラビア代表との2連戦などはそのもっともたる例だった。

 この2連戦、韓国は五輪世代中心の若い布陣で、98年W杯メンバーを多数揃えたユーゴと戦った。私も韓国まで足を運び、彼らの戦いぶりを見守ったが、2試合連続〇対〇という結果以上に、韓国の善戦が目立った2連戦だった。

 韓国ヤングパワーは伸び伸びとプレーし、世界トップクラスのユーゴ代表を何度も脅かした。むしろ決定機は韓国のほうが多く、それをキッチリ決めていれば勝てた試合。『格上相手に大善戦』というよりも、『残念な引き分け』だった。

 試合後、視察に訪れていた中国代表監督ボラ・ミルティノビッチ氏とお茶を飲む機会があったが、世界的名将も「韓国の若い選手の才能は素晴らしい。特に李天秀は今すぐ欧州でプレーしても遜色ない」と大絶賛。

 チームを率いる許丁茂監督も、「昨年の韓日壮行試合はチーム状態が最悪だっただけ。あの敗戦がいい刺激となり、ただでさえサッカーに対して純朴な選手たちがより意欲的になった」と目を細めていた。そして、その許丁茂監督が、「キミも同じ在日として誇らしいだろう」と、褒めちぎったのが朴康造(20・城南一和)だった。

 朴康造は昨年までJリーグの京都パープルサンガに所属した在日3世だ。が、J公式試合出場回数は一試合のみ。今年から韓国プロリーグ・城南一和で在日初のKリーガーとなり、今回のユーゴ戦で在日初の代表選手となった。からだは小さいが、威風堂々とプレーする彼の姿に私は鳥肌を覚えずにはいられなかった。

 しかも、その口から飛び出す言葉が力強い。「在日同胞六十万のために頑張りたい。僕が突破口になって、もっと多くの在日プレーヤーが韓国でプレーできるようになればうれしいですね。ウリナラは僕に自信をくれました。その自信をもっともっと大きく育てるためにも、ひたらす前進していきたい。それが僕の役目だと思う」

 身長165センチの小さな体だが、在日コリアンとしての誇りは人一倍強い。深夜のソウル。激励するつもりで彼に会ったが、勇気づけられたのはむしろこちらのほうだった。

 そんな頼もしい朴康造に韓国サッカーの将来はあるのかと聞いてみた。彼は間髪入れずに即答した。「未来は明るいですよ。サッカー環境は良くなる一方だし、若手選手の技術や意識レベルも僕が思っていた以上に高く、競争も激しい。毎日がサバイバルですよ。絶対負けたくないですね」

 激しいサバイバル競争は今も続いている。若き韓国代表はユーゴ戦直後にイラン遠征へと出発。現地でマケドニア、エジプト代表を下し、そのままヨーロッパ合宿へ。9月のシドニー五輪を見据えたチーム強化を着々と進めているのだ。

 そのシドニー五輪で、韓国はスペイン、モロッコ、チリと一次予選を戦うことになった。決して楽な相手ではないが、ユーゴ戦で見せた、はつらつプレーが炸裂すれば、目標の決勝トーナメント進出も夢ではないだろう。

 韓国ヤングパワーを取り巻く環境は決して恵まれているとは言えない。学歴偏重主義社会ゆえに、技術をもっとも磨ける時期に徹底した勝負根性をたたき込まれ、伸び盛りの時期に誰もが兵役問題に直面し、それが解決するまでは精神的不安がつきまとう。最近は、成長著しい日本の若手と比較され、ネガティブに扱われることも少ない。彼らに原因があるのではなく、未整備のサッカー環境そのものに責任あるのに、だ。

 そうした逆境にもめげず、台頭してきた韓国ヤングパワー。まさに、頼もしいかぎりだが、まだまだ発展途上。真価が問われるのはシドニーだ。そのシドニーの舞台で躍動したとき、彼らは正真正銘の“アジアの虎”になれるだろう。それを思うと、今から胸がワクワクする。その中に朴康造の姿があれば、感激の極致に達すること、間違いないだろう。


(2000.06.21 民団新聞)



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