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共感呼ぶ、民団の総連への提議

在日社会に期待感、メディアも注目



 分断後、初めて実現した歴史的な南北首脳会談の成功は、在日同胞社会にも和合をもたらすのでは、との期待感が内外で高まっている。同会談を前後して統一問題シンポジウムやワンコリアフェスティバルなどが民間レベルで実施されるなど、韓半島の平和定着と祖国の南北統一に向けた在日同胞からの発信が続いている。

 民団中央本部は15日の記者会見で、金宰淑団長が在日同胞社会の和合に向けて朝鮮総連(総連)に「会って忌憚なく話し合おう」との提議書を発表した。韓・日・在日の報道機関も「在日の南北対話」の可能性を取り上げ、提議書の伝達に関心を示している。首脳会談と記者会見に呼応する動きが15日夜には早くも見られ、民団・総連の川崎支部が一緒に祝賀宴を開いた。

 とはいえ、両団体間で見解が違う地方参政権問題をめぐり、これまで和合の道が閉ざされてきたのも事実だ。この問題で金団長は「協議のネックにはならない。総連は参政権について誤解しているので、話し合いを続ければ理解を得られるものと信じる」と、条件をつけずに会うことが大前提だと語った。

 民団の提議書は現在、総連からの返答待ちになっているが、民団では総連からの提議があればいつでも受け入れると伝達している。同胞社会の各界各層は民団の提議をどう受け止めているのだろうか。


<<各界在日同胞の声>>


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和合と信頼を深めていこう
具謨俊・民団兵庫県本部団長

 すばらしいことです。無条件で虚心坦懐に朝鮮総連と対話をすることは望ましい。交流はまず、政治、イデオロギーを抜きにして、例えば囲碁大会など非政治色のものから始めて、和合と信頼と築きながら進めて欲しい。何よりも、在日を生きる同胞として在日同胞社会の発展を考えながら交流をすべきでしょう。


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在日同胞から統一ムードを
李鉉済・民団京都府本部団長

 何も条件を付けないことがすばらしい。朝鮮総連と和やかに対話できればと思う。特に、一般の同胞はそれを望んでいるはず。光復節、10月マダン、野遊会など政治的でない行事から共同開催できればいい。すでに91年には世界卓球で南北単一チームを共同応援した実績があるのだから。そして在日同胞社会の壁を無くし、祖国統一のムードを盛り上げていきましょう。民団と総連が力を合わせれば権益擁護問題でももっと大きな力になろう。


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紆余曲折にも独自性で対処
鄭大聲さん(滋賀県立大学教授、東京、67)

 南北首脳会談を契機に、和解と相互協力で緊張緩和と平和統一の道に進むことを期待している。同時に、在日同胞社会の和合を急がなくてはならない。

 民団の提議を歓迎する。たとえ、南北間に今後う余曲折があっても、その度に本国の指示を仰いで協議を中断させるのでなく、在日をいかに生きるかという独自性、主体性を出すべきだ。参政権を理由に協議が成立しない訳はない。ネックになるというなら棚上げにして、結婚や帰化、同胞経済や互いの故郷を自由に訪問する問題など、交流を土台に協議できることから始めればいい。


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両組織と織者加え協議会を
金東勲さん(龍谷大学教授、奈良、65)

 日本に38八度線があるわけでもなし。民族という次元で、在日という共通の土壌で取り組まなければならない課題は多い。

 日本にはまだ不条理な差別が残っている。こうしたなか民族的マイノリティーの人権をより確実にしていく問題。中でも民族教育の保障は焦眉の課題だ。

 一方、本国に対しても、在日の立場から和解と協力を呼びかけていかなければならない。できれば、両組織のトップに在日の識者も加え、緩やかな協議会をつくってほしい。その中で南北の双方に建設的な提議をしていくべきだ。


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歴史のうねり総連も快諾へ
李進煕さん(和光大学名誉教授、東京、71)

 すばらしい提議で、韓議長も喜んで受け入れると思う。金正日国防委員長の意表をついた出迎えも冷戦構造と対決という20世紀の遺物が崩壊し、歴史が大きくうねりを見せていることの反映に他ならない。総連下部組織でも個々に祝賀会を開いていると聞くが、これも民主サイドの受け止め方だ。

 在日同胞の人権、財産を守るのが、本来の在日組織のあり方であり、今までは冷戦構造のあおりを受けて対決してきた民団と総連が、今後団結して事に当たるのは時代の趨勢。すでに21世紀を迎えた感がする。韓議長にもわかってもらえると思う。


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条件無い対話高く評価する
全在紋さん(桃山学院大学教授、大阪、54)

 民団が総連に対し、なんらの条件なしに虚心坦懐に対話と交流を呼びかけたことを私は高く評価したい。

 日本における南北協力体制が組めたら大きな力になる。北に帰った10万人にのぼる同胞の家族再会問題、それに民族教育の問題も急がれる。こうしているうちにも、同胞子弟の民族性がどんどん風化していっている現状を見過ごすわけにはいかない。

 民団と違って総連には中央集権的な体制が残っており、返事はすぐには出ないだろう。それでも、あせらず、ねばり強く総連に呼びかけを続けていくことを民団に望みたい。


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統一へ在日の真価問われる
河信基さん(評論家、東京、53)

 祖国統一推進のために在日同胞社会の力の結集をはかることは当然のことだ。民団と総連は積極的に和合と交流を図っていかなければならない。すでに在日社会は、個々のレベルでは南北の壁を越えて動いている。

 在日の組織は、祖国南北の後について騒ぐだけであってはならない。南北より国際社会に通じているはずなのだから、むしろ在日の方が祖国に働きかけねばならぬ。南北の和解と融和を側面支援、時には先取りするような大胆なビジョンを提示するくらいでなければならぬ。そこにこそ在日の真価が問われている。

 祖国と在日同胞のために民団と総連は、そのような動きを顕在化させ、ある意味では調整する役を果たさねばならぬ。

(2000.06.21 民団新聞)



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