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金大統領と同胞社会の和合懇談

民団中央役員が本国要路を訪問



青瓦台を訪れ金大中大統領(左)と
固い握手を交わす金宰淑団長(右)

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韓半島の平和定着、在日同胞の役割確認
総連に対話呼応促す…金大統領にも表明

 民団中央本部の金宰淑団長、姜永祐議長、洪性仁監察委員長ら三機関役員と傘下団体長ら22人で構成する本国礼訪(訪問)団は、6月27日から30日までの4日間、青瓦台(大統領府)や政府省庁、報道機関など24カ所を訪れた。

 2年ぶりの訪問団では、今年3月の中央大会で選出された新任三機関の人事報告の後、南北首脳会談の成功に伴う在日同胞の役割や民団への継続支援などについて意見を交わした。本国訪問団はこれまで中央委員会後の5月に、関係部署に民団の新年度方針伝達と要望を中心に実施してきたが、今年は歴史的な南北首脳会談開催のために延期されていた。

 訪問団一行は6月27日、青瓦台で金大中大統領と面談した。中央団長として初めて金大統領を表敬訪問した金団長が、一行を代表して南北首脳会談の成功を歓迎する挨拶をした。金団長は6月15日の記者会見で発表した総連に対話と交流を求める民団の提議書に触れ、「総連からの回答はないが、同胞社会の和合に向けて対話に応じるよう継続して働きかけたい」と述べた。

 また、在日同胞が出資して設立した新韓銀行をはじめ、在日同胞の本国投資などの経済活動を保障、育成することを訴えた。

 金大統領はソウル五輪や外貨危機克服など、在日同胞のこの間の支援に謝意を示した後、先の南北首脳会談について言及。離散家族の問題で何度か協議が決裂しかけた危機的状況を、両首脳が民族の運命をともにする立場から乗り切ったことを紹介しながら、民団にも冷戦時代そのままの朝鮮総連との関係を超え、和合への努力を促した。

 さらに、韓国からの吸収統一も北韓からの赤化統一も戦争につながるとの考えを金正日国防委員長に示し、「1回きりの人生の中で、いつまで権力の座にいるかが重要でなく、何をするかが重要だ。統一には時間がかかるが、大事なことは南北の平和的共存と平和的交流」との認識で一致したと話した。

 金大統領は安保面について、「ソ連が崩壊してもNATO(北大西洋条約機構)がヨーロッパの和平に必要なように、駐韓・駐日米軍も太平洋圏の平和の安定に欠かせず、南北統一後も必要だ」と駐韓米軍の撤収論を一蹴し、金国防委員長もこれを「理解した」ことを明らかにした。

 北韓との経済交流の面では、北の土地と優秀な労働力、南の資本と技術を合わせて共同で自動車産業などを展開すれば、双方の軍事削減が可能になり、統一への道が開けると述べた。また、北韓の経済が安定して国民が食べられるようになれば、内部に緊張緩和がもたらされ、開放につながると説明した。

 金大統領は最後に、「政府は在日同胞のみなさんのことを忘れていない。地方参政権問題では森首相に年内解決を求め、首相も総選挙後に着手すると答えた。みなさんは日本にいながら韓国を代表する大使の役割をして、安定と待遇を受けるようにならなければならない」と激励し、「韓国籍の在日同胞として文化的プリ(根っこ)を日本に残し、日本人との共生を」と締めくくった。


金大中大統領(左から2人目)から
南北首脳会談について説明を受ける民団幹部

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総連との和合・交流で統一参与
「地方参政権」継続サポートも

■雨の中、国立墓地に在日学徒の碑が霞む

 6月27日、訪問団一行はまず6・25動乱(韓国戦争)の犠牲者が多く眠る国立墓地を訪れた。北韓によって同族相殺の戦争が引き起こされてから今年で50年の節目を迎えたが、南北首脳会談が成功したことを反映してか、墓地の入り口には「祖国とともに統一へ、世界とともに平和へ」と書かれた大韓民国在郷軍人会の未来志向の横幕が掲げてあった。

 雨の中で慰霊碑の参拝を終えた一行は、祖国存亡の危機に自らの生命を賭した在日学徒義勇軍の墓前にこうべを垂れ、首脳会談で「戦争の危機」が消え去ったことを胸に刻んだ。


■国会議長と統一外交委員長面談

 続いて一行は国会を訪れ、李萬燮議長や朴明煥・統一外交通商委員長と面談した。6月15日の民団の記者会見をテレビで観たという李議長は、「再び戦争は起こらないと両首脳が確認したことが、南北会談の大きな成果だ。民団も総連を包容し、祖国の平和統一のために助力を」と求めた。

 また、「東方礼儀の国」と繰り返す金正日国防委員長に、金大中大統領が「ならば目上の者が先に訪ねて来たのだから、礼を尽くしてソウル訪問を」と働きかけた事実を明かした。

 朴委員長は自身を「血統主義者」と紹介し、在日韓国人が韓国籍を保持し続けていることに意味があると高く評価しながら、他の在外同胞と立場が違うことを政府がきちんと認識し、民団が自負心をもって活動できるようにと継続支援を約束した。


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政党や閣僚などと意見交換
民団の役割、強くアピール

■政府の各部署を精力的に訪問

 金大統領を表敬訪問した一行は、続いて行政自治部の崔仁基長官に面談し、在日同胞の地方参政権に関連した在韓外国人の地方選挙権の推進状況について意見を交換した。黄迎満事務総長は「韓国が他のアジアの国に先んじて定住外国人に選挙権を認めれば、アジアでリーダーシップを発揮することができ、在日同胞の運動支援にもなる」と話した。辛容祥常任顧問も続けて、「法案が通過しなかったと聞いているが、この問題に対する政府の関心はどうなのか」とたたみかけた。崔長官は「議員立法で提出したが、任期切れで成立しなかった。民団の要望が実現されるまで継続努力する」と答えた。

 民団への支援金問題を扱う窓口になった在外同胞財団の金奉奎理事長は、「在日と在米は成立過程も組織形態も違う」と明言しながらも、在米同胞を中心に「韓民族共同体」構想が進んでいると話した。金団長は「民団が主導してきた海外韓民族会議との整合性をどうするか、民団と協議が必要だ」と迫り、金理事長は7月4日から始まる「世界韓人会長団ワークショップ」で意見調整すると答えた。

 6月28日、外交通商部の藩基文次官は、「分断の悲劇は日本がもたらし、民団は日本で総連と対立してきた。しかし、金大統領の訪日時に日本が文書で過去の植民地支配を謝罪し、今や両国は未来志向の関係にある。在韓外国人の地方選挙権を必ず次期国会で成立させ、在日同胞の参政権も獲得できようにしたい。崔相龍大使は日本をよく知り、内外から尊敬を受ける政治学者だ。みなさんのサポートをお願いする」と語った。

 これに対して、金団長が「日本が先進国にふさわしい人権大国になるよう本国政府の関心を」、辛常任顧問が「在日同胞の実情に即した民族金融機関の存続に支援を」、姜永祐議長が「韓国人として生きる手段は参政権の獲得であり、民族金融機関の育成だが、その精神は民族教育で培われる。日本の1条校と同等の資格がないと国家試験が受けられない現状を念頭に」と求めた。

 統一部の朴在圭長官は、「南北共同宣言に金国防委員長のサインが記されたことが重要だ」と述べ、対南誹謗・中傷放送が委員長の指示後1時間でストップした実例を挙げた。

 兄弟が在日同胞だという民主平和統一諮問会議の金ビン河首席副議長は、40年間の学者生活を終え、統一に関する考えを同じくする金大統領から「ともに統一運動を」と要請されたという。「和合しなければ地域感情から脱することはできない。平統を最大限活用して子孫に統一祖国を」と訴えた。

 財政経済部では李憲宰長官に面談し、李煕健常任顧問(韓信協会長)が「銀行化への側面支援」を強く求めた。

 29日には文化観光部の金順珪次官に会い、洪性仁監察委員長が、青少年交流の一環として韓国の学生も日本に修学旅行をする機会をと提案した。金次官は2001年の「韓国訪問の年」には、300万人の日本人観光客が訪れるよう日本国内でもキャンペーンを実施する計画だと話した。

 国家報勲処の崔圭鶴処長に対して金団長は、「在日学徒義勇軍の貢献が国民に知られていない。教育内容に組み込むべき問題だ」と問題提起した。


■政党や報道機関へ「在日」理解を

 一行は政党と報道機関も訪問した。ハンナラ党は金守漢・韓日親善協会会長と李会昌総裁、自由民主連合(自民連)は金鍾泌名誉総裁と金宗鎬総裁権限代行、新千年民主党では金玉斗事務総長が対応した。

 ハンナラ党との面談の中で金団長は、「日本や在日同胞のことを知らない議員が増えている。韓日議員連盟の構成を注視している」と話した。自民連の金名誉総裁は「南北関係で双方が欲を出したり、負担を感じては駄目だ。誠意と信頼で可能な範囲から受け入れればいい」と話し、民主党の金総長は「両首脳の握手だけでも成功なのに5項目の宣言で合意した」と喜んだ。

 報道機関は大韓毎日の金幸洙常務理事、東亜日報の呉明社長、韓国日報の張明秀社長、朝鮮日報の方相勲社長、ソウル放送(SBS)の朴刮i専務、韓国放送公社(KBS)の朴権相社長、文化放送(MBC)の盧成大社長らが応対した。金団長は「常に本国と歩調を合わせてきた在日同胞の実態を広く国民に知らせる役割を」と強調した。


■在日同胞の本国経済の拠点激励

 このほかにも一行は過密日程を調整し、在日同胞が韓国で立ち上げ、国内最優良行との評価が内外で定着している新韓銀行を訪れ、羅応燦副会長、李仁稿銀行長らを激励した。

(2000.07.05 民団新聞)



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