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「立法裁量権」を追認

地方参政権「100人訴訟」最高裁判決



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「被選挙権」認定で前進も

 定住外国人に地方参政権を認めない現行の公職選挙法や地方自治法は憲法違反だとして、国を相手取り損害賠償などを求めていた大阪府内の在日韓国・朝鮮人31人を原告とする訴訟に対して6月27日、最高裁は原告側の上告を棄却した。

 判決理由で千種秀夫裁判長は同種訴訟でのこれまでの最高裁判例を踏襲、「普通地方公共団体の議員及び長の選挙権を有する者、並びにその被選挙権を日本国民たる住民に限っている公職選挙法と地方自治法の各規定は違憲ではない」と述べ、2審・大阪高裁判決を「正当」とした。

 この裁判は1995年、大阪府内の在日韓国・朝鮮人118人が大阪地裁に提訴して始まった。この大半が2、3世の特別永住資格者で通称「100人訴訟」と呼ばれている。訴えの中で原告らは、「住民の選挙権」に関して定めた地方自治法11条や「選挙人名簿の登録資格」に関する公選法21条などに「国籍条項」があるのは、「法の下の平等を保障した憲法14条などに照らして違憲である」と主張していた。

 今回の裁判で原告らは「長年日本国内で生活し、納税義務を果たしている」ことから、地方参政権について定めた憲法93条の「地方公共団体の住民」に含まれると主張、「国には原告らに地方参政権を付与する立法措置を取る義務があるにもかかわらず、それを放置しているのは憲法違反」と主張してきた。

 これに対して、最高裁は「参政権を日本国民に限っている公職選挙法などの規定は憲法に違反するものではない」と原告側の訴えを退けたが、これは被選挙権を含めた参政権を立法措置で実現できるとした1審、2審判決まで否定したものではない。

 むしろ、地裁判決では、これまで論議されてこなかった被選挙権も立法裁量に委ねるとした初の判断が示されており、前進ともいえる。

 今回の判決だけをとって「参政権を『国民固有の権利』とする憲法15条の規定を明確に示し、永住外国人の参政権問題に決着を示した」(産経新聞6月28日付け社説)と決めつけるのは論理のすり替えだ。

 なぜなら、1995年の最高裁判決で示された「法律で永住外国人に、自治体の長、議員の選挙権を付与することは法律上禁止されていない」とした判断は、今回の判決でも依然として変わっていないからだ。

(2000.07.05 民団新聞)



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