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慎武宏のコリア・サッカーレポート

「アジアの虎の鼓動」
本格化するか韓国選手の欧州進出



最も期待されている李東國

 中田英寿、名波浩、城彰二がさらなるレベルアップを求めてサッカーの本場・欧州へと旅立ったように、最近の韓国有力選手たちも「欧州進出」を目指す傾向が強い。

 大韓蹴球協会も有望選手の欧州進出に肯定的で、今年春には『有力選手海外進出プロジェクト』を正式に発動させた。これは、能力のある若手選手を欧州に送り出し、個々のレベルアップを促進させ、2002年W杯の代表チーム強化に直結させようというもの。現在、19人の候補選手がリストアップされている。

 そして、その海外進出プロジェクトの第一弾がついに実現しそうな気配だ。

 7月10日、大韓蹴球協会は韓国五輪代表FWの薛埼鉉の移籍先として、ベルギー一部リーグのロイヤル・アントワープが有力であることを明らかにしたのだ。ロイヤル・アントワープは120年の歴史を誇るクラブ。昨季は二部リーグに甘んじたが、8月12日から始まる新シーズンからはふたたび一部リーグに復帰する。その目玉として韓国人選手獲得に乗り出したわけだが、現在、光云大学3年生の薛埼鉉にとってはまたとないチャンス。まだ正式契約には至ってないが、条件も整っているだけに近日中に韓国人初のベルギー進出プレーヤーが誕生するだろう。

 また、今後の交渉次第ではドイツ・ブンデスリーガ進出選手も誕生しそうだ。韓国の起亜自動車をメインスポンサーにするハンザ・ロストックが、大韓蹴球協会に「FWとMFをレンタルで獲得したい」と要請。協会はこれを受けて、李東國、崔負F、李栄杓、徐東源、金徒均、金相植ら6人のKリーガーを推薦選手に定め、交渉を進めているのだ。

 ドイツと言えば、韓国人初の欧州進出選手である車範根が78年から89年までの10年間活躍したゆかりある場所。

 この車範根を皮切りに、現韓国代表監督の許丁茂がオランダ(八〇〜83年)でプレーし、90年代に入ると、金鋳城(ドイツ)、鄭在權(ポルトガル)、盧廷潤(オランダ)、徐正源、李相潤(ともにフランス)などが欧州へと旅立った。そして、今、韓国人欧州進出の系譜のページに新たな歴史が刻まれようとしているのである。

 二転三転を繰り返した安貞桓のスペイン進出もどうやら近日中に決着がつきそうだ。昨年のKリーグMVPは、スペインの名門クラブ、ラシン・サンダンテールから1年のレンタル移籍を打診され、7月11日現在、正式契約を残すのみとなった。5月にイタリアのペルージャ移籍が白紙になってしまったが、李東國のもとにはオファーが絶えないという。

 韓国は欧州から遠く、世界サッカー市場の中でもマイナーの部類に入るため、欧州進出は決して簡単ではない。

スペイン行きが濃厚な安貞桓

 入団テストを強要され、条件交渉ももつれにもつれる。特に若手選手の場合、兵役を終えておらず、自由に海外渡航ができないなど、法的に制限が多いため、それがネックとなってまとまる話もまとまらないこともある。それだけに正式契約が交わされるまでは油断できないが、前出した選手たちの欧州進出が実現したとき、韓国サッカーは新たな繁栄期を迎えることになるだろう。

 実際に海外を経験した許丁茂もかつて私にこんなことを言ったことがある。

 「海外進出は大きなリスクを伴う。文化、習慣、価値観が違う異国でのプレーは想像以上に厳しい。韓国と生活様式が似ている日本はともかく、まったく文化が異なる欧州となればなおさらだ。だが、得られるものも多い。本場での経験は個々のレベルを高め、強いて言えばそれが代表チームの戦力強化にもつながるんだ」

 かつて韓国では、有力選手の海外流出が国内リーグの空洞化を招く恐れがあるとされた時代があった。

 しかし、今は違う。たとえ移籍先で活躍できずに失敗に終わろうとも、その経験が韓国サッカーの未来に役立つ。

 この不変の真理を、クラブ、選手、そして韓国サッカーに携わるすべての人々が今、ようやく気づき、実行しはじめた。

 21世紀韓国サッカーの未来は明るい。


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(2000.07.12 民団新聞)



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