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総合学習で広がる多文化共生教育

同胞最多校の生野区の北巽小



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深まる相互理解、民族学級認知も

 【大阪】在日同胞児童の在籍数では全国一を誇る大阪市立北巽小学校(小林薫校長)が、大阪市内の他校に先駆けて昨年度から「総合的な学習の時間」(総合学習)に取り組んでいる。テーマに選んだのは「国際理解」。韓国の文化を体験的に学ぶ多文化共生教育が全校レベルで行えるようになった結果、特別な存在と見られていた民族学級があたりまえのものとして認知されるようになった。

 北巽小は生野区にあり、韓国・朝鮮籍児童が在籍児童数の約半数を占めている。国や民族固有のものを互いに認め、尊重しあいながら相互理解を深めることが欠かせないと、4年前から「国際理解教育」に力を入れてきた。


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日常あいさつ、韓日両国語で

 「国際理解教育」では各教科の枠組みの中で取り組むため、時間的な制約が常につきまとっていた。しかし、「総合的な学習の時間」ではこうした制約は一切ない。同校では「かえって国際理解教育がやりやすくなった」と喜んでいる。民族学級があり、民族講師という人材に恵まれたことも追い風となっている。

 対象は3年生以上。毎週2時間を「総合的な学習の時間」にあてている。ちなみに昨年、3学年の授業実践では、日本の子どもたちが民族学級を訪れ、チョゴリを着てチャンゴやプクを演奏する一方、在日同胞子弟は和太鼓や笛の演奏をした。練習の成果は運動会でそれぞれ発表、喝さいを博した。

 民族学級はこれまで、日本人の子どもたちや保護者からは特別なものとして見られてきたという。ところが、「国際理解教育」から「総合的な学習の時間」と一貫して多文化共生教育に力を入れてきた結果、この目に見えない垣根が取り払われつつある。

 民族講師の李ミンピさんはいまでは日本人の児童からも「ソンセンニム」と呼ばれている。李さんは「民族学級が日本の学校にあってあたりまえなんだということが、みんなの共通認識になりつつあるようだ」とうれしそうに語った。

 同校で外国人教育を担当する小堀千砂子教諭は「取り組みを通してお互いの文化を知ることになり、子どもたちや保護者の間にも浸透してきた。日常生活で日本人の子どもから韓国語のあいさつが自然に出るのも、民族学級があるからこそ」だという。同校では朝礼や給食の時間、各クラス担任とのあいさつでも韓日二カ国語が自然に飛び交っている。

 同校に6年前に赴任してきた李相文教諭は「これからは総合学習の中で障害者、高齢者とも交流するなど、地域に開かれた学校として体験学習にも力を入れていきたい」と意欲を燃やしている。

 これに対して、小林校長も「国際理解教育を通じてあたりまえに本名を名乗れるようにしていくのが総合学習のもう一つの狙い。地域から講師を呼ぶのも良いアイデア」と後押ししている。今年度からも新たなカリキュラムのもと、週2回の「総合的な学習の時間」が行われている。

 北巽の取り組みは今後、他校にも広がりそうだ。

(2000.07.12 民団新聞)



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