民団新聞 MINDAN
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民族史に思いをはせる夏



 韓国(朝鮮)戦争から五十年が過ぎた今年の六月二十七日、民団中央本部の幹部ら一行がソウルの国立墓地にたたずみ、在日学徒義勇軍の慰霊碑にこうべをたれていた。

 折しもソウルでは梅雨が始まり、戦争の犠牲者が眠る広大な墓地全体が雨の中に霞んでいた。雨が緑の芝生を濡らし、平和への祈りが大地に染み込んでいく。それはあたかも映画の一シーンのようだった。

 同族相残の六・二五動乱から平和統一を掲げた七・四南北共同声明、そして南北それぞれの八・一五光復節。夏の数カ月ほどわが民族の歴史に思いをはせ、ため息で見送る季節もないだろう。

 「また夏はこうして過ぎ行くのに、統一よ、おまえはその姿をちらりとも見せない」。そんな感慨にとらわれた。

 統一祖国への期待はその都度裏切られ、不信と諦念が澱(おり)のように溜まっている。統一した暁には南の故郷を堂々と訪ねたい、と強気だった一世も表舞台からだんだん消えていく。「覆水盆に返らず」。郷愁に勝る愛国も思想もないと思うのだが…。

 しかし、今年の夏はその民族史の一ページに六・一五の南北共同宣言が加わった。南北に引き裂かれた離散家族の再会に向けて、準備も進められている。在日同胞の立場からは「北」に帰ったかつての在日同胞の安否を明らかにし、家族の待つ日本への自由往来ができるように求めたい。

 二十一世紀に向けて動き出した大きな歴史の針を冷戦時代に逆戻りさせてはならない。それは民族の英知と威信が世界的な規模で試されているというだけでなく、二十一世紀を生きていくすべての同胞から夢を奪うからである。「夢にまで願う」と歌う統一を、まぼろしのままにしてはいけない。(C)

(2000.7.19 民団新聞)



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