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全国支団長会議班別討論



 十五、十六日の二日間にわたって開かれた全国支団長会議(東日本地域)では、世帯数の似た支部が五班に分かれて討論を行った。支部活性化を柱に「財政問題」「総連との交流・和合」「幹部・後継者不足」「団員サービス」などをテーマに、各支部が抱える悩みや成功事例が紹介されたあと、二十一世紀に向けた新しい時代にふさわしい効果的な活動方法について意見を出し合った。


◆第1班◆−財政問題

基本財政、団費だが
 保険代理店などで収入増

 第1班は世帯数百以下の過疎支部で構成。石川県小松支部の韓徳愚支団長を班長に、「財政問題」をテーマに討論した。

 100世帯以下の過疎支部だけに、団費だけで運営していけないという悩みは共通したものがある。団費収入を増やすためにどのような自助努力をはらっているのかに関心が集まった。

 福井・武生支部では、薄く、幅広く集めることで全体の収入アップを図っているという。世帯数が少なければ北海道のように1世帯当たりの負担額が大きくなりがちだが、同支部では逆に団費を引き下げて成功した。月3000円から2000円にしたところ、それまで支払いに消極的姿勢だった団員からも徴収できるようになったという。さらに、朝鮮総連系人士の民団加入も積極的に働きかけている。

 北海道・小樽支部からは最高で月4万円の団費を負担してもらっているという事例が報告された。一方では日本国籍取得者にも働きかけ、友好団員として幅広く団費の徴収を図っているという支部もある。

 一世が民団組織を一身に背負っていたときは、団費を使わずとも、篤志家のポケッマネーで花見などの行事を運営できた。ところが世代交代が進み、2・3世世代が主流になったいまは「世帯によって団費の金額を変えていれば(民団に)入ってこない」(新潟・下越支部)という。このため団費以外の収入源をどう確保するかも問われているところ。

 自前の会館を所有する支部ではテナントの活用が一般的。小樽支部では地元遊技業組合に入居を求めて賃料を確保している。テナントが無理でも、保険代理店業務を営む商工会議所に顧客を紹介することで事務手数料を得るという手段もありそうだ。

 ただし、こうした支部の中からも「民団運営の基本はあくまで団費収入」だとして、いかに団員にメリットを与えられるのかを原点から考えるべきだという意見が大勢を占めた。


◆第2班◆−朝鮮総連との交流・和合

可能な部分から交流
生活者の立場で共同作業

 第2班は世帯数100以上300未満の22支部34人で構成。千葉県船橋支部の李鍾城支団長を班長に「総連との交流・和合」をテーマに討論した。

 各支部から過去の総連との交流実績について報告された。敬老行事、野遊会、ゴルフなどの非政治分野で、多くの合同開催が目立った。

 東京練馬支部では5年前から双方6、7人で食事会形式の定期接触を続けている。また、無尽や合同旅行など政治色を抜いた同じ生活者の立場で共同作業を行っている。

 また、地元支部総連の役員に同世代が多く、顔なじみという立場で組織をこえた老人会活動やバーベキュー大会などの交流や話し合いが進んでいることが述べられた(埼玉西部支部)。

 また、昨年秋から総連支部委員長と接触、2・3世世代の総連同胞が戸籍整理で悩んでいることをうち明けられ、その解決へ民団が協力していくなど、同胞生活者の立場で交流を進めている(千葉船橋支部)。

 一方、地域社会で個人的な面識はあるものの、地方参政権運動で妨害(意見書採択のやりとりなど)を受けており、交流するきっかけがつかめないとの、意見も出された。

 さらに、6月の南北首脳会談を契機に総連側の方から支部レベルでの「祝賀会」の参加要請や交流打診が増えていることも述べられた。

 これらの実例を出し合った後、第2班では結論として、数々のネックはあるものの、各支部ごとに特性があり、同じ在日同胞の立場から今後、支部の実情に合わせた非政治的分野で、可能なものから積極的に交流を広げていくべきとした。


◆第3班◆−幹部・後継者不足

継続活動が集う力に
まず、団員との意見交換を

 第3班は世帯数300以上500未満の17支部29人で構成。愛知一宮支部の朴雪雄支団長を班長に、「幹部、後継者不足問題」をテーマに討論した。

 この問題を解決していくためには、団長一人ではなく3機関役員全員が一致協力し、婦人会、商工会などとの連携・協力のもとに、意識的・持続的に取り組まねばならない。特に青年会の育成・活性化が必要である――というのが、参加者の共通した認識であった。 後継者作りには、青年会を育成、やる気のある若い人を見つけ、支部幹部に積極的に育てていかねばならない。財政的な援助も必要だ(三重県四日市支部)。

 青年会から支部の仕事、さらに県本部の仕事を遂行できる人材を育成していく計画的取り組みが大切。支部や県本部の仕事もこなせるように役職経験者を県本部幹部に送るなどしている。また若手を本部幹部に登用、青年会とのパイプ役をもつとめてもらう(千葉県千葉支部)。

 青年会経験者が支部役員や支部活動の中心メンバーとなっているところが少なくない。「支部団長はじめ役員が、子弟を青年会活動に積極的に参加させるべきだ」との指摘もなされた(東京都北支部、渋谷支部)。

 若者を、民団活動にどう参加させるか。「愛知の場合、いろいろな行事を何十年も行っている。ママさんバレー大会、ソフトボール大会など。参加者が青年会に出るようになり、民団の幹部になっている。持続が大切だ」(愛知県豊橋支部、知多支部)。「婦人会のオモニたちを中心に青年会対象者を掘り起こしていきたい」(静岡県浜松支部)。

 「一番大事なのは団員とのコミュニケーションを図ることである。それが原点。極力時間をつくりながら各家庭を訪問、親睦を図り、民団に対する認識を高めていきたい。それが後継者の育成にもつながるのではないか」(愛知県瀬戸支部)。


◆第4班◆−財政問題

戸別訪問中心に啓蒙
独自サービスで接点掴む

 第四班は世帯数500以上ら800未満で構成、東京の8支部、神奈川の4支部、愛知の2支部の中から東京・豊島支部のペ成烈団長を班長に、「財政問題」をテーマに討論した。

 どの支部も基本財政である団費収入の減少に頭を痛めており、団費だけに依存したあり方から脱し、定期的な収入源を確保すべきだとの意見で一致した。その一方で、民団活動への認識を深め、活動への理解を得るためには、団員宅への戸別訪問を中心とした日常的な啓蒙活動や団員サービスが支部活動の原点であることも再確認した。

 団費以外の収入源では、自動車保険やガソリンスタンドとの提携による手数料収入、支部の空きスペースを利用した自動販売機設置でマージンを生む方法が紹介された。また、商銀とタイアップし、民団からは団費の振り込みを、商銀からは新規契約に結びつけている愛知・春日井支部の事例も報告された。

 このほか、老朽化した支部会館からテナントビルの購入で家賃収入を得る案も東京・江戸川支部から出された。

 戸別訪問の事例では団員とのきずなの大切さが強調された。経済的に苦労している団員から「民団が心の支えになっている」と、気持ちよく団費を出しながら声をかけられたと話す東京・墨田支部の韓斗現団長や、最初は民団に興味を示さなかった2・3世が、外登法改正運動をはじめとした民団の権益擁護運動の説明で変わっていったという豊島支部の李貞淑事務部長の話が注目を引いた。

 団員サービスの面では、韓国ビデオの廉価貸し出しや支部独自の新聞の配布、誕生日カードやプレゼント、新生児にチョゴリのプレゼントなどで団員との接点を設け、支部の敷居を低くする方法も紹介された。


◆第5班◆−財政問題

団費の格差に問題点
集金方法にも工夫必要

 第5班は世帯数800以上を擁する大支部で構成。東京足立支部の洪炳基支団長を班長にテーマを「財政問題」に絞って討論した。

 東京4、神奈川2、愛知4の合計10支部から支団長、事務部長ら21人が参加。いずれの支部も団費収入だけでは運営が困難なために、賛助や保険代理店などの事業収入で補填している状況が報告された。

 特に、団員を対象に損害保険などを取り扱っている支部は東京・足立支部はじめ愛知の各支部など。

 愛知・中村支部は、保険事業で年間100万円から150万円の手数料収入を得ているという。また愛知・東中支部も保険事業を開始した。協力的でない団員に、支部で取り扱っている保険に加入すれば保険料が下がると伝えたところ、「そんないい話があるのか」と加入に至った経過もあわせて報告した。東京・足立支部でも20数万円の火災保険を契約して多額の手数料収入があった状況を述べ、他支部にも保険事業の開始を呼びかけた。

 一方、団費を中心に運営することが組織の基本として、団費収入増の様々な手法が討論された。

 足立支部からは、団費集金をこれまでの年1回から2、3カ月に1回に増やして団費収入の増加につながった事実と低所得層の団員は「毎月来てほしいという要望が多い」と、足を使った頻繁な訪問を呼びかけた。

 また東京・大田支部からは「団費を支払ってくれる団員を増やすことも必要」とした。神奈川・川崎支部からは「豪邸に住んでいる人が1000円、日雇いで暮らす同胞が1500百円。おかしい」と、収入に応じた団費にすべきではないかという声も出された。

 総論として、支部の基本である戸別訪問を強化して団費収入を増やしながら、保険業務も補助的に活用しながら支部財政を確保していく方向性が確認された。

(2000.7.19 民団新聞)



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