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在日同胞障害者年金訴訟

京都地裁で第1回口頭弁論
谷間の外国籍救済訴え



 【京都】国民年金法から国籍要件が撤廃されたのにもかかわらず、経過措置が講じられなかったために障害基礎年金の支給を認められなかったことを不服として国に総額1億7500万円の損害賠償、京都府知事に年金不支給の決定取り消しを求めていた訴訟の第1回口頭弁論が12日、京都地裁(八木良一裁判長)であった。

 原告は京都市内に住む織物業、金洙栄さん(48)をはじめとする45〜61歳の在日韓国・朝鮮人の2、3世ら7人。いずれも幼少時からの聴覚障害があり、1、2級の障害認定を受けている。

 訴状によると、金さんらは97年10月から12月にかけて京都府に障害年金の支給を申請したが、不支給処分となった。82年1月を期して国民年金法から国籍要件が撤廃されたが、付則条項では、改正前に年金受給権のなかった者は改正後も同様の扱いとし、撤廃の効力が過去にさかのぼらないと定められていたためだ。

 原告らは、付則条項が、日本国憲法14条や国籍による差別を禁止した国際人権規約に違反すると主張。国には本来受け取ることができたであろう年金と、精神的苦痛に対する慰謝料として一人当たり2500万円、総額1億7500万円の損害賠償を求めていた。

 第1回口頭弁論で金さんは、「なぜ私たち在日外国人障害者が、日本国籍がないなどの理由で年金が支給されず、生活苦に追い込まれなければいけないのか理解できません」と手話で訴えた。これに対して、国側は「年金の支給は国の裁量事項で、日本国籍を持たない人に支給しなくても憲法に違反しない」とする答弁書を提出している。

 この日の口頭弁論終了後原告らは京都府庁を訪れ、障害年金に代わる特別給付金の支給を求める要望書を提出した。


【解説】経過措置無く放置20年

 国籍による障害年金不支給をめぐる同様の訴訟は、最高裁ですでに敗訴が確定している。今回も原告側の訴えが認められる公算は薄いと見られている。それでも訴訟を起こしたのは「声をあげないことには何も変わらない」(原告代理人の池上哲朗弁護士)といういらだちからだった。

 障害基礎年金は老齢年金と並ぶ国民年金の一つ。在日外国人は1982年以前は国籍要件があり制度に加入できなかった。その後、日本は難民条約を批准、法改正で国籍要件を撤廃した。これにより、基準日の同年1月1日以降に成人に達した在日外国人の障害者には年金が支給されるようになった。

 ところが、原告らのように基準日以前に成人に達していた在日外国人については何らの経過措置もなく、切り捨てられた。当時、国会は「福祉的措置も含めて検討する」と付帯決議していたが、現在まで何の措置も講じていない。老齢年金については不十分であっても一定の経過措置が講じられただけに、あきらかに立法府の怠慢といえる。

 制度改正から間もなく20年が経過する。この間、原告らは厳しい生活状況に置かれたまま、放置されてきた。国に代わり全国で500を超える自治体が独自に救済制度を実施しているが、あくまで「緊急避難」にしか過ぎない。国が制度的に救済するのを待っているのだ。

(2000.7.19 民団新聞)



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