民団新聞 MINDAN
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サムルノリ・リーダーの金徳洙さん

民族の魂、サムルに込めて
現代に“エネルギー”供給



金徳洙さん

 10年ぶりに日本を湧かせたパーカッショングループ・金徳洙サムルノリの公演―。浜松では600人、大阪の枚方でも1400人、東京でも1000人以上のファンが会場を埋めた。リーダーの金徳洙氏(48)にサムルノリの原点を探った。


 ◆   ◇   ◆


 「サムルノリ」はケンガリ、チャンゴ、チン、プクという4つの打楽器を使った演奏自体を指すと思われているが、本当は「サムルノリ」自体は彼自身が創作した名前だ。

 韓国に古くから伝わる農楽。そこから伝統のサムル(四物)を使ったノリ(遊戯、遊撃)を創造したのが78年。伝統のリズムを再構築した圧倒的な演奏は、衝撃的に迎えられた。世界50カ国で3600回以上の公演を行うなどの実績はよく知られた事実だ。

 人形劇、綱渡り、農楽など様々な大道芸をひっさげて韓国の村々を巡った「男寺党(ナムサダン)」は千数百年の歴史を持つ。4歳の頃から、メンバーだった父から演奏や舞踊をたたき込まれた。子役でデビューしたのがこの世界の第一歩だった。

 男寺党の芸には、社会、宗教、性、政治にいたるまで民衆の目で見た風刺が全てが含まれた。そういう環境で育ったから、必然的に民族の伝統に対する思い入れは深い。

 産業社会に入り、民族文化は無くなってしまったと指摘する。生活文化が完璧に代わり、子供が産まれて死ぬまでに行われた伝統文化が今はない。「民族的」という言葉が叫ばれていたが、楽器製作など最も民族的なものを無視してきた。民衆の中の民族文化的空白が生じたと強調する。失われた生活文化の形を復元しても意味がない。その精神、つまり魂を取り戻すことが今の社会に必要だと語る。

 それを担当してきたのが芸人だった。男寺党の一世代上がいなくなる中で、世代を次いだ責任を痛感させられた。どうすればいいか。絶体絶命の時期にぶつかった。サムルは誰にも負けない。そんな思いが、民族の演戯を残すために立ち上がらせた。民衆で最も原初的なわが民族の音楽がサムルを使ったもの。歴史あるサムルにノリを加えたのが今日の始まりだった。

 サムルノリが音楽、舞踊に大きな影響を与えた。サムルを認定させた功績は大きい。後継者指導にも余念がない。3年前から伝統演技、大道芸能の演技と理論を教える韓国唯一の伝統芸術学院を設置した国立の韓国芸術綜合学校で教鞭を執る。教師には人間国宝が当たっている。

 ミュージシャンであることを強調する。いいものは世界中の皆で楽しみたい。世界の楽団にサムルが組み入れられること。これが今の思いだ。そのための文化センターをつくろうとする「乱場運動」を始めている。乱場というのは、市場が立つと見せ物や食べ物やが並び、村人の総合的な交流が行われる、祭りの場を指す。

 伝統と魂という文化的な活動を続ける半面、インターネット放送の分野にも踏み出している。


観客を魅了したサムルノリ公演(東京)

◆パワフルさで観客圧倒
 金徳洙サムルノリ、東京で公演

 韓国を代表するパーカッション・グループ「金徳洙サムルノリ」の東京公演が14日、港区の赤坂ブリッツで開かれ、圧倒的な力を持つ演奏に会場を埋めた観客たちは酔いしれた。

 この日は「ムンクッ」「サムド・ソルチャンゴカラク」「サムド・ノンアクカラク」「パンクッ」の四曲が披露された。

 開演と同時に場外で始まった勇ましい伝統楽器サムルの演奏に、観客は騒然。チャンゴ、ケンガリ、プク、チンの打楽器から打ち出される力強い音色が会場一杯に鳴り響いた。

 「ムンクッ」は、村の入口で農楽隊の到着を告げ、中に入ることの許しを請う伝統的な儀式。

 舞台では九台のチャンゴによる一糸乱れぬ連打の迫力ある演奏に、新生「サムルノリ」の底力を見せつけた。

 「パンクッ」は頭にかぶるサンモからのびたチョリ(韓紙のテープ)で円を描きながら宙を舞い、踊りながら旋回する妙技に、会場から大きな拍手が送られた。

 また、アンコールでは楽器を操る「サムルノリ」を中心に、舞台に駆け上がった観客が思い思いの踊りを存分に楽しんだ。

(2000.7.19 民団新聞)



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