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在日へのメッセージ

釈然としない北の態度
(大田明彦・大阪国際大学教授)



 金大中韓国大統領と金正日北朝鮮国防委員長(総書記)による分断後初の首脳会談は、両国民の悲願である「統一」へのきっかけを作った。しかし、今なお続く祝賀ムードに水をさすようだが、北朝鮮の態度になお、釈然としないものを感じる。

 まず、6・25の朝鮮戦争記念日に「朝鮮日報」が北朝鮮の南進を正しく指摘したのに対し、平壌放送は「反民族的、反統一的新聞だ」などと非難、北朝鮮が依然として独裁的な言論統制の姿勢を露骨に見せたことだ。

 そればかりではない。「南北共同宣言」で最大の疑問は安全保障だ。92年の「南北基本合意書」に盛り込まれた「相互不可侵」「武力放棄」に全く言及しないまま、第1項目で「自主的解決」に合意したが、これは北朝鮮にとって「在韓米軍撤退」と、同義語であることは論を待たない。

 第2項目の「緩やかな連邦制」案は、韓国に親北(容共)政権が樹立されることを前提としており、自由民主主義体制の韓国とは同床異夢もはなはだしい。さらに言えば、韓国の「連合制」にしても大統領私案の段階で、これが政府の正式な「韓民族共同体統一案」に代わり得るだろうか。

 第3項目は韓国の「国家保安法」改廃問題に直結する。北朝鮮が赤化革命の綱領とも言うべき「労働党規約」を堅持している以上、赤化革命を阻止する国家保安法の機能を一方的に緩和するのは、時期尚早だ。

 第4項目では、破綻した北朝鮮経済を韓国の一定レベルまで引き上げようという意図は分かる。しかし、北朝鮮のインフラ整備資金は今後10年間で1000億ドルと推定され、当座だけでも50億ドルが必要となるのに、韓国が用意している支援式は九億ドル。残りの巨費をどこから、どうやって調達するのか。

 先日、在日韓国婦人会中央本部の依頼で、講演する機会があったが、本国の欣喜雀躍ぶりとはやや趣を異にして「嬉しいけど、今後の北の態度を見なければ」と、比較的冷静な反応に、何故かホッとした。

(2000.07.26 民団新聞)



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