民団新聞 MINDAN
在日本大韓民国民団 民団新聞バックナンバー
永住帰国のサハリン同胞

祖国で新たな難題に直面



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安山市の「故郷の村」
生活費ぎりぎり、医療体制にも課題

 サハリンから60数年ぶりに永住帰国したサハリン残留韓国人が、安山市内に完成したばかりの真新しい「故郷の村アパート」で生活費の不足に悩み、介護問題を含む医療体制の不備に困惑している―。


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日本人支援会が聞き取り調査

 これはサハリン残留韓国・朝鮮人を支援する会(代表・高木健一弁護士)が4月21日からの3日間、現地で419世帯836人を対象に聞き取り調査をした結果、明らかとなった。サハリン残留韓国人は、今春までに約1000人の永住帰国が完了し、「当面の願い」は一人残らずかなえられたが、「生活上の不安」という懸案があらためて浮き彫りになったかっこうだ。


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諸雑費は持ち出し

 「故郷の村アパート」で生活していくうえで必要最低限の食費・光熱費は1世帯当たり上限が50万ウォンとされる。これに対して個人収入は調査の結果、約25万ウォンだった。夫婦2人の手当でなんとか賄える金額だ。

 しかし、その他の諸雑費は帰国時の所持金で毎月補てんせざるを得ないのが実状。その所持金も50万ウォン以下が多数を占めており、底をつくのも時間の問題と見られている。また、万が一の葬儀の際には300万ウォンの費用がかかるが、国からの補助金は50万ウォンにしか過ぎない。


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家族との同居望む

 今回の調査には790人が回答(回答率94%)した。

 このうちの約82%は老人性疾患など健康上の不安を抱えて、通院生活を送っていた。周辺の水原などの病院に入院している人も34人を数えるが、入院や手術を必要としながら経済上の問題で見送っている人たちはもっと多いと見られる。本人負担額は少ないとはいえ生活費以外に回せるお金は限られている。

 敷地内には15坪程度の物理治療室も備えられているが、運営費予算が計上されていないため空き部屋として放置されたままだという。社会福祉奉仕団による善意のマッサージと、指圧サービスが週3回行われているだけにしか過ぎない。

 このほか、高齢者のための永住施設でありながら、ほとんど利用者のない広大な地下駐車場に比して、福祉余暇施設と呼べるのは広場1カ所と四坪ほどの男性用老人房しかないという問題点も指摘されている。

 「故郷の村アパート」入居者の74%が65歳以上。将来、身体的に不自由になったときの介護のことを考えて、サハリンに残してきた家族との同居を望むという回答は100%に達していた。

(2000.08.02 民団新聞)



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