民団新聞 MINDAN
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肉親という存在の重み



 小中学校時代の同窓会に参加したことがありますか?

 中学校を卒業して30年近く経つ。ウイスキー片手に招待状を眺めながら思い出したのは、幼心に淡い恋の炎を燃やした委員長やクラブの同輩、悪ガキだった友人の一挙手一投足だ。

 早くから地元を離れて東京へ出たために、同級生とはほとんど会う機会はなかった。懐かしさに包まれながら訪れた会場で一瞬、愕然とさせられた。

 誰が誰だか分からない。エッ、エッ…。やっと昔使っていた通称名で呼びかけてくれた友人の声に救われた。

 よーく見回して見ると、見覚えのある顔も。酒と話が進むにつれ「あー、お前か」と記憶が蘇る。男性はまだしも、女性陣の変貌の大きさに、顔を見ただけで名前を思いだした人はほとんどいなかった。30年という歳月を改めて考えさせられた一夜だった。

 この8月15日、ソウルと平壌では50年ぶりに南北離散家族が再会した。幸運にも再会の場に立ち会うことが許された人たちは、50年ぶりに会う父母兄弟、姉妹の顔が分かるだろうかと一様に心配していたという。父母や兄弟の名前を書いた看板を高く掲げ、到着を待ちわびた。しかし、そのほとんどが互いの顔と目を見て、相通じたという。半世紀という永い永い別れにもかかわらず。

 抱き合う兄弟、母の死に間に合わなかったことを詫びる息子、いつ帰ってくるかと鍵もかけずにいたと机を叩くオモニ。50年の離別、たった3日間の再会、再び会えるのかという不安。テレビに映し出された光景は、あまりに悲しかった。

 30年で顔を忘れてしまう同級生、50年たっても覚えている離散家族たち。かくも重い肉親の情を、断ち切らせてはならない。(L)

(2000.08.23 民団新聞)



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