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第55周年光復節慶祝式

金大中大統領の演説文(全文)



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平和と跳躍の韓半島時代開こう

 敬愛する国民の皆さん!

 今日は光復55周年を迎える日であり、新しい1000年に初めて迎える8・15慶祝日です。

 この意義深い日を迎え、まず祖国の独立と民族の解放のため犠牲になられた先烈を追慕し、冥福をお祈りいたします。遺族の皆さんにも慰労と感謝を申し上げます。また、生存しておられる独立有功者の皆さんにも心より尊敬と感謝の言葉を申し上げます。

 今この時間は、離散家族の南北間同時相互訪問が初めて行われている瞬間です。どうして感激の涙を禁じることができるでしょうか!


 尊敬する国民の皆さん!

 55年前、日帝からの解放は、わが民族にとってまたとない喜びでした。しかし同時に、とてつもない悲劇と試練の始まりでもありました。国土の分断、同族相殺の戦争、そして経済の荒廃化が続きました。半世紀もの間、休戦ラインを挟み、同胞の胸に銃口を向ける敵対と反目の歳月を送らなければなりませんでした。

 しかし、わが国民は決して挫折しませんでした。確固たる安保態勢のもと戦争を防ぎ、国民の生命と安全を守ってきました。

 戦争による灰の山の中から、再び立ち上がり経済を立て直しました。世界が注視するなか漢江の奇跡を成し遂げました。

 また、われわれは独裁体制の厳しい弾圧と横暴のもとでも民主化の実現のために犠牲と献身を惜しみませんでした。1997年、ついに憲政史上初めて国民により与野党間の政権交代という大業を実現するのに成功しました。実に誇らしい国民の力と言わざるをえません。

 でも、試練は終わりませんでした。政権交代が成し遂げられたその瞬間からわれわれはIMF(国際通貨基金)からの管理を受けねばならない経済危機を迎えたのです。

 わが国民は再度立ち上がりました。「金集め運動」に代表されるように全国民が一つになり、国家危機を克服するのに力を集めました。そして、われわれはやり遂げたのです。全世界は、またもやわが国民の驚くべき底力と不屈の意志を確認し、高く評価しています。私は、この席をかりて偉大なわが国民に限りない誇りと感謝の意を表す次第です。


 親愛なる国民の皆さん!

 今日、55周年光復節を迎え、われわれは祖先と先烈の精神が宿っているこの独立記念館で、どんな時よりも恥ずかしくない心情でその霊前に報告することができるようになりました。わが民族史に永遠に残る大業を、われわれがいま成し遂げつつあるからです。

 2カ月前、われわれは分断55年目にして初めて南北首脳会談を実現させました。南と北の首脳が会い、膝をつきあわせ民族の和解と協力、そして平和的統一のために努力していくことを7000万民族と世界の前で宣布しました。

 わが民族自らが民族の運命を開拓していく6・15南北共同宣言こそ、今日の光復節に対する最大のプレゼントになるだろう、と私は確信いたします。

 南と北は、今2人の首脳の合意によって離散家族の再会と長官級会談など、後続措置を着実に進めています。このような進展は、今後いっそう加速化されるでしょう。


 尊敬する国民の皆さん!

 皆さんの声援と支持によって国民の政府が出帆して2年半になりました。政府は国民と一つになり、短い期間の間多くのことをしてきたと思います。

 この間、われわれは人権と民主主義を発展させるのに最善の努力をしてきました。言論の自由が最大に保障されています。示威・集会・結社の自由も保障されています。すべての労働運動が合法化され、労働者の政治参与が許容されました。催涙ガスがなくなりました。

 女性差別禁止と性暴力根絶のための法が制定されるなど、女性の権利も大幅に向上しました。市民団体の活動が、かつてなく活性化され、国政と社会全般に非常に強い影響を与えています。韓国は、いまや世界的な人権国家の列に並んでいます。

 経済分野でも、われわれは目覚ましい成果を上げています。何よりもわれわれは、切迫した経済危機を賢明に克服しました。38億ドルにすぎなかった外貨保有高が、現在900億ドルに達しました。金利、為替レート、物価が大いに安定しました。貿易収支と経済成長も堅実な基調を維持しています。失業率がOECD(経済開発協力機構)国家のうち最低値を記録しています。一部で何度か提起された経済大乱説の憂慮も、すべて克服しました。われわれは経済の体質を頑丈にするため金融・企業・公共部門・労使関係の四大改革を強く推進してきました。

 それだけでなく、われわれは四大改革と並行して知識情報化革命を推進するのに全力を尽くしました。情報インフラストラクチャー構築と全国民を対象にした情報化教育の拡大、ベンチャー企業の育成に力を注いでいます。いまやアジアで最も進んでいる情報化国家となりました。

 政府は通貨危機の過程で少なくない低所得層が生計をたてるうえで困難に直面したことを、心痛く思ってきました。これをただすため、政府は画期的な決断を下しました。

 新たに制定された「国民基礎生活保障法」により、4人家族を基準に月92万ウォンまで生計費が保障されます。もうお金がなく食事を抜いたり、どこか悪くても病院へ行けなかったり、子どもに教育を受けさせることができないといったことは、これからなくなる、と皆さんにご報告いたします。

 施行過程において一部問題もありましたが、国民年金、雇用保険、産災保険、医療保険など四大保険をすべて実施することによって先進福祉システムを整えました。現在問題になっている医薬分業も、国民に1時的な苦痛と不便を与えていることは胸痛むことですが、国民の皆さんと子孫の健康を守るために、必ず施行していかねばならない政策であります。

 一方、われわれはどんな時よりも確固とした安保体制を備えています。わが国軍は最高司令官の大統領を信頼し、平和と和解のための南北首脳会談の結果を全幅的に支持しています。韓米間の安保協力も揺るぎありません。


 尊敬する国民の皆さん!

 私は、国民の皆さんが国政に対し大変案じていることをよく存じています。倒れかけている国を再び立て直すことは、実に大変なことでした。国民の政府は最善を尽くしましたが、いろいろ問題点が露出しているのも事実です。四大改革の未完成、道徳的弛緩、改革疲労症候群と集団利己主義、そして政治の不安定など、国の発展の妨げになっていることもたくさんあります。

 いまや改閣の断行と共に国政第二期に入りました。今後、より固い改革意志と透明で一貫した効率的な政策執行を通じ、市場と国民を安心させ信頼と希望を持てるよう総力を尽くします。


 尊敬する国民の皆さん!

 私は今日この席を借り、すでに設定した民主主義、市場経済、生産的福祉の三大国政哲学のもと、今後の任期中に必ず成し遂げたい五大目標について申し上げたいと思います。

 その第一は、世界に誇れる人権国家、模範的な民主主義国家を造るのに献身するということです。

 私は、一生を人権と民主主義実現のため尽くしてきました。これからも揺るぐことなく努力していきます。

 アジアで初めて「人権法」を施行いたします。国民の皆さんの共感を得て「国家保安法」を現実にあうよう改正しようと思います。弱者の権利を最大限保障いたします。「腐敗防止法」を早い時期に立法するよう積極努力いたします。人権が保障される国、不正が決して許されない国を必ず造ります。

 民主主義は確固たる法秩序の土台の上、発展できるのです。よって政府は国家と社会の紀鋼を乱す集団利己主義と不法、暴力行為に対しては厳重に対処していくことを誓う次第であります。

 第二に、四大改革と知識情報化を通じて世界一流国家を造ることです。

 金融・企業・公共部門・労使関係の四大改革を揺るぐことなく完成させます。これからは外的構造調整だけでなく、世界的な競争力を持つことができるよう、内的体質改善をいっそう徹底いたします。


 尊敬する国民の皆さん!

 私は、就任直後に1年半以内に通貨危機を克服すると、国民の皆さんに約束いたしました。今再び皆さんに約束いたします。来年2月には就任3年になります。私は、その就任3年となる日までに四大改革を完了させ、新千年のわが経済の堅固な発展の基盤整備を終えます。

 「政府革新推進委員会」を大統領直属で設置し、稼動することで公共部門が他の分野の改革に模範となるようにいたします。

 改革は選択の問題ではなく生存の問題であります。われわれ当代だけの問題ではなく、われわれの子孫の運命と直結した問題であります。当面の苦痛を避けようと改革を行わないならば、われわれに未来はありません。

 改革こそ、国民と時代が国民の政府に付与した歴史的役目であると信じ、私は改革の手綱を決して緩めません。

 四大改革を成功させるには知識情報化を促進させ接木しなければなりません。そのために優秀な人的資源を育成し発掘するのに、国家次元の努力と投資を惜しんではなりません。教育立国を通じ知識情報強国となるとき、韓国は世界一流国家の隊列に堂々と登場できるでしょう。

 超高速通信網など情報インフラを早期に建設し、お金の有無と関係なく情報化に疎外される人がないように、生涯学習のための社会的ネットワークを構築していきます。

 また、優秀なベンチャー企業に対し制度的改善を含むすべての支援を拡大し、中小・ベンチャーと大企業が二頭馬車で韓国経済を引っ張っていくようにいたします。既存産業はもちろん、情報通信技術産業と生命産業を含め、国家産業全体の世界的競争力を強化し、世界一流の経済を造りあげます。

 三番目に、生産的福祉の定着であります。生産的福祉は、国民各自の能力を開発し、低所得層も中産層に上昇可能な機会を与えようとする画期的な政策であります。まず生活能力のない人々の基礎生活は、すでに申し上げたように国家が保障いたします。働く能力がある人に対しては、情報化教育など自己開発の機会を提供して自力で高所得と安定した生活を実現できるようにいたします。

 政府は、このため学生と農漁民、主婦、軍人、障害者と老人、それに刑務所の在所者にいたるまで全国民を対象に情報化教育を積極推進しています。世界でもっとも先頭にいます。

 これと共に政府は、生活の質を高めるのに力を注ぎます。文化・観光・スポーツ・レジャーの拡充と環境の改善と保存に力を入れます。

 四番目は、国民の大和合を実現することです。不可能とばかり思われていた南北の和解協力を実現していっている私たちです。いわんや、私たち内部で国民和合を実現できない理由がありません。国民和合のために、何よりも与野党間の和合が実現されなければなりません。現在の状態は、国民に失望と憤怒をもたらしています。実に恥ずべき現実です。与野党間の真摯な対話と協力がなければなりません。

 私は、必要ならばいつでも各政党の代表と会い、国事を論議してきました。今後もそういたします。しかし、政治は国会の中でなされねばなりません。国会法に従い運営されるが、与野党間の対話と妥協の政治を実現していくことが、政治の安定と発展のためにもっとも望ましいと考えます。

 最後に五番目は、韓半島から戦争の脅威をなくし、南北が平和的に交流し協力して民族共生の時代を必ず実現いたします。そして、その土台の上に、われわれ七千万同胞の宿願である平和統一を準備していきます。

 さきの首脳会談の共同宣言にあるように、われわれの南北連合と北の低い段階の連邦制には相当な共通性があります。われわれは、これを土台に平和共存、平和交流を確立する統一の第一段階を実現するよう努力いたします。

 今後の長官(閣僚)級会談を通じて軍事、経済、社会・文化の三共同委員会を構成いたします。あわせて南北間の軍事直通電話の設置、国防長官級会談など緊張緩和のための措置を推進いたします。経済的には投資保障、二重課税防止合意書など、安全かつ効率的な協力の道を設けます。

 南北間の平和と東北アジアでの安定を実現するには、国際社会の協力がきわめて緊要ということを、われわれは認識しています。

 このためにわれわれは、米・日・中・露など周辺四大国との協力関係を、いっそう強化いたします。また、米国・日本との緊密な共助関係もゆるぎなく維持していきます。

 駐韓米軍は韓半島での戦争抑止はもちろん、東北アジアの安定にもきわめて緊要な役割を遂行しています。東欧で共産脅威が消えた後にも欧州社会の安定のためにNATO(北大西洋条約機構)と米軍が存続しているように、韓半島と日本での米軍の存続は東北アジアの安定と平和のためにきわめて重要な役割を果たしています。


 敬愛する国民の皆さん!

 最後に私は、21世紀の劈頭でわが民族が守るべき歴史的使命を考えてみようと思います。その使命は、これまで申し上げました五大課題の中から二つを特別にあげることができます。まずは、知識情報強国を建設し、世界の一流国家を造ることです。もう一つは、南北の和解と協力を実現し、将来には民族の平和的統一を達成しなければなりません。

 100年前の19世紀末、わが民族は世界史の大きな流れに適応できず亡国の恨を招きました。

 当時のわが民族に与えられた歴史的使命は何でありましたか。内では国民が団結し、外には近代化を推進することであります。しかし、そのような使命を度外視したままわれわれは内部分裂で国力を使い果たし、鎖国主義に固執し、近代化を拒否して時代に遅れをとってしまいました。

 その結果、国権を失い日帝の支配を受けてしまいました。そのため、解放後も民族の分断と同族間の戦争と銃剣による半世紀間の対峙が続きました。1時の過ちが100年間の災いを子孫に残すことになりました。二度とそのような過ちを繰り返してはなりません。先に申し上げました二つの歴史の使命を忠実に奉じなければなりません。

 一つは、知識情報化の革命であります。21世紀は、人類の歴史上最大の激変期であります。その激変の中心には、知識情報化の大革命を行うようにとの歴史の要求が提示されています。

 産業化の今世紀には資本と土地、人間の労働力のような目に見える物質的要素が経済を引っ張っていきました。しかし、21世紀の知識情報化時代には知識と情報、文化創造力のような目に見えない人間の創意的な頭脳が競争力を創出する原動力になります。

 そのような点からわれわれには希望があります。われわれは、世界のどの民族、どの国民よりも高い教育熱と優秀な知的基盤、それに卓越した文化創造の伝統と資質があります。

 われわれには、また新しい情報化時代に適応しようとする非常な熱意があります。わが国民のうち、インターネット利用者数が今年末には二千万人に達し、2002年には三千万人になります。世界に類例のない速度で増えています。

 私たちは、このような長所を活かし、世界一流の知識情報強国を建設する自信がある、と私は皆さんに申し上げることができます。


 尊敬する国民の皆さん!

 南北間の和解協力が、もう一つの時代的使命であります。それは、わが民族の生存と平和と繁栄を約束するのに絶対必要な前提条件であります。赤化統一も吸収統一も、戦争と破滅をもたらします。平和共存、平和交流のもとで、南北が手を取り合い、民族の明日を開いていかなければなりません。

 特に経済分野で南韓の技術と資本、北韓の優秀な労働力と資源が一緒になれば、民族経済の均衡発展と大飛躍を実現することができます。われわれは、今まで南韓だけの舞台で生きてきました。しかし、南北が手を取り合えば韓半島全体に舞台が拡大されます。それだけでありません。アジアと欧州、そして太平洋へとわれわれの活動領域が広がっていきます。

 南北は、すでに京義線鉄道を再連結することに合意しています。京元線も連結されます。そうなれば、われわれは中国とロシアの二つの道を通じて欧州に至ることができます。二つの線の「鉄のシルクロード」が生まれます。

 わが国は、海洋から大陸に進出する拠点となり、大陸から海洋へと出ていく前進基地となります。アジア大陸の東端にある周辺国家が、いまや堂々と世界の中心国家の一つになります。まさに韓半島の時代がやってきます。

 これは、決して夢ではありません。われわれが充分に実現可能な明日の姿であります。


 尊敬する国民の皆さん!

 いま、われわれの前に歴史が提示する道がはっきりと開かれています。平和と飛躍を通じた誇らしい韓半島の時代を実現するのに総力を尽くしましょう。今日、われわれの幸福はもちろん、明日の子孫の安全と繁栄のために歴史の使命を忠実に奉じていきましょう。


 国民の皆さん!

 漢江の奇跡、外貨危機の克服についで、今一度三番目の奇跡を造るために立ち上りましょう。私は、国民と歴史に責任を負う大統領としての義務をまっとういたします。皆さんの応援をお願いしてやみません。

(2000.08.23 民団新聞)



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