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慎武宏のコリア・サッカーレポート

「アジアの虎の鼓動」
五輪、20世紀最後の挑戦



韓国サッカー界の「ミレニアム・スター」
李天守(左)の活躍が期待される

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予選リーグ突破なるか
史上最強軍団、国民の期待膨らむ
韓国代表、14日キックオフ

 かつてオリンピックでのサッカーと言えば、それほど値打ちの高いものではなかった。ワールドカップ(W杯)などで活躍する世界のトッププレーヤーは参加せず、上位陣はステートアマで固めた旧社会主義国ばかりだった。

 しかし、今は違う。オリンピックのあらゆる種目でプロへの門戸開放が進むにつれて、サッカーもプロ選手の参加が解禁となり、1992年バルセロナ大会から23歳以下の世界大会として規定されるようになると、その位置づけも大きく様変わりした。

 多くの国々が2年後のW杯に向けた強化ポイントとして位置づけ、選手も自分の存在を世界市場にアピールできる絶好の機会と捉える。つまり、年齢制限のないW杯が世界最高のサッカー大会だとするならば、オリンピックは次の世界一、次代のスーパースターを占う上で、絶対見逃せない大会になったのだ。

 そのオリンピック・シドニー大会のピッチに、韓国代表が見参する。4大会連続通算6回目の出場。

 チームが目指すのは、まだ一度も達成したことがない決勝トーナメント進出だ。そして、そのために徹底した強化に取り組んできた。

 本格始動した99年1月から、オーストラリアへ出国した今年9月6日まで積み重ねてきた合宿日数は374日。その強化費用は18億ウォンに達すると言われている。

 国際マッチも36試合行い、黒星を喫したのは昨年9月の日本戦2連敗だけ。その日本戦で地獄を見たチームは自力で立ち直り、今年5月にはユーゴスラビア相手に大健闘。

 さる8月29日と9月1日にはアトランタ大会優勝国・ナイジェリアを相手に2試合連続の大勝を飾った。当然、国民の期待も膨らむばかりで、一部ではメダル獲得も夢ではないとされている。

 ただ、その道のりは決してラクではない。開会式に先駆けて9月13日に開幕するサッカーは全種目で唯一、シドニー以外の都市も会場となり、メダル獲得のためには19日間で最大六試合を戦わなければならない。それもIOC規定に基づいた18人の選手枠で、だ(W杯は22人)。

 しかも、韓国は一次リーグで、スペイン(14日)、モロッコ(17日)、チリ(20日)と同じB組に所属。いずれもFIFAランクでは韓国よりも上位にあり、激戦の地区予選を勝ち抜いたチームだ。

 とりわけ99年世界ユースを制したスペインなどは有力な優勝候補。シドニー大会では一次リーグ上位二チームが決勝トーナメントに進出できるが、回を重ねるごとにW杯レベルに近づくオリンピックだけに、まったく油断できない試合が続くのだ。

 とはいえ、韓国の戦力はそのライバルたちにも引けをとらない。

 金龍大、朴珍燮、李栄杓など実力派が粒揃いで、W杯も経験した高宗秀、李東國も名を連ねる。成長著しいミレニアムスター、李天秀も加わった。

 6月下旬に彼らを取材したが、シドニーをさらなる飛躍、つまり海外進出へのステップボードにしたいと熱く語る姿は大いなる可能性を感じさせてくれた。

 そして、忘れてならないのがオーバーエイジ枠だ。オリンピックのサッカーは、アトランタ大会から23歳以下(77年1月1日生まれ以降)の年齢制限を超える選手を3人まで起用できるが、このオーバーエイジ枠として洪明甫、金度勲といった百戦錬磨のW杯戦士たちが加勢する。まさに、韓国のオリンピックサッカー史上最強軍団と呼ぶにふさわしい陣容が揃ったのだ。出場エントリー22人中83%が「1次リーグ突破は確実」と予想したと言うが、それも過信ではない。

 20カ月に及んだ強化期間の過程で流した汗と涙が今、大きな自信となって彼らを駆り立てているのだろう。

 韓国サッカー今世紀最後の挑戦となるシドニー・オリンピック。果して、“アジアの若虎”たちは、そこで悲願の決勝トーナメント進出を達成できるだろうか。

 その戦いをしかと見届けるために、私も12日から決戦の舞台、オーストラリアへと向かう。もちろん、帰りのエアチケットは手配していない。彼らが勝ち進むまで、とことん追いかける覚悟だ。

(2000.09.06 民団新聞)



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