| 9月1日に開かれた市民集会で 国籍条項の撤廃を訴える参加者 |
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県下自治体を巡回
市民とスクラム、集会も
【福岡】地方自治体の職員採用試験で、国籍による制限を廃止しようと福岡県弁護士会(春山九州男会長)は8月から福岡全県下の88自治体を巡回し、市町村に一般職を含めた速やかな廃止を求める活動を展開している。自治体職員採用試験の国籍条項撤廃を求めて日本の弁護士会が独自に活動するのは全国でも初めて。すでに七割近くの自治体を回り、手応えも感じているという。
福岡県弁護士会は、福岡県下に3万8000人の外国籍住民が居住しており、中でも韓日併合によって日本国籍者とされ、1952年のサンフランシスコ講和条約で一方的に外国籍者とさせられたなど歴史的背景を持つ在日韓国・朝鮮人が2万2000人(うち特別永住者2万500人)居住している事実を踏まえ、外国籍住民にも公務就任権の機会が与えられなければならないと活動を開始した。
調査の過程で、3万8000人の外国籍住民中、2万5000人が無職であり、主婦や学生、子どもなどを差し引いても無職人口が際だっていることも分かった。また公務就任権が無いことが民間企業の就職差別にもつながっている事実を重視し、在日外国人の就職問題のシンボルとして、自治体職員の大半を占める一般職を含めた早期の国籍条項撤廃を求めている。
そのための小委員会(伊達健太郎委員長)を設け、法的・実体的側面から検討を重ねてきた。8月からは県下98自治体のうち、すでに国籍条項を撤廃している10自治体を除く88自治体を対象に申し入れを重ねてきた。福岡県弁護士会会員569人のうち百余人が2人ペアで自治体を直接訪問し、速やかな撤廃を求める要望書を渡すと同時に理解を求めてきた。
すでに7割の自治体を回り終え、9月にはすべて終えるという。
春山会長は「地方自治体の公権力とは何か。印鑑証明を発行する業務が公権力に当たるのかなど一つひとつ分析してみる必要がある。すでに自治体業務を民間に外注する動きがある時代なのに」と業務を個別に分析してオープンな論議をして欲しいという。また、韓日の歴史を振り返りながら「自分のルーツを残したいと希望する人がいるならば、その道は残したい。国籍を捨てなければ就職の機会さえ与えられないのは理不尽」という。
福岡県下ではすでに、久留米市、小郡市、中間市、豊前市、芦屋町、水巻町、岡垣町、遠賀町、大木町、苅田町の10自治体が国籍条項を撤廃している。
同会では、地方自治体職員の国籍条項撤廃を土台に、将来は民間の就職差別撤廃にもつなげていきたいと活動を進めている。
1日には福岡市内の市民センターで「こころの壁の撤廃まで」と題した国籍条項撤廃を考える市民集会を開いた。集会には姜泰守団長はじめ民団福岡の関係者、市民らあわせて200余人が参加した。
日本市民と韓国人の精神的な交わりをテーマにした徐賢燮総領事と、これまで国籍制限が正当化されてきた理由の「当然の法理」など法的側面からアプローチした田中宏・龍谷大学教授が講演に立った。特に田中教授は憲法制定当初からの経過の中で外国人の人権が巧みにすり替えられていった経過を説明し、これまで言われてきた「当然の法理」について疑問を呈した。
(2000.09.06 民団新聞)
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