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チャゲアス、ソウル熱唱で韓日親善へ一役

姜誠の現地ルポ



韓国公演で熱唱する
CHAFE&ASKA

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「新しい関係を」呼びかけに
観衆一体となってエール
 8月26日夕刻、ソウル市の蚕室体操競技場はすでにCHAGE&ASKAを一目見ようという韓日のファンでいっぱいだった。

 コンサートの当初こそ、ライブに慣れない韓国ファンは戸惑いを見せていたが、「SAY/YES」「YAH/YAH/YAH」といったヒット曲がかかると、一気に盛り上がっていた。

 圧巻は何といっても最後の曲となる「On/Your/Mark」の時だった。「過去の悲しい傷痕に目を背けるのでなく、一緒に悲しむ世代でありたい。これから新しい日韓関係を築きましょう」

 とステージから語りかけたASKAが感極まり、歌に詰まってしまった。すると、客席から「チャル ハセヨ〜(がんばって)」という韓国語のエールが渦巻き、日韓の親善ムードは最高潮を迎えたのだった。


 ◇  ◆  ◇  ◆


◆韓国公演、4カ月早く実現

 「本当は12月にしたかったのですが、ぜひにという韓国政府の強い要望で8月末の開催になりました」

 CHAGE&ASKAが所属するリアルキャストの渡辺徹二社長は言う。韓国政府はなぜ、8月末のコンサートにこだわったのか。

 6月の首脳会談で、南北は和解と共存に向けて大きな一歩を踏み出した。しかし、それは一方で、韓米、韓日関係の相対的な後退をもたらすことになった。とくに韓日間には6月に発表された日本文化の第三次開放でCDや劇場用アニメの解禁が見送られ、文化交流が一歩後退したとのイメージも生まれつつあった。

 このような事情から、金大中政権としては、米日へのケアを必要とした。アメリカには駐韓米軍の維持の約束、そして日本へのケアが今回のCHAGE&ASKA日韓親善コンサートだった。

 ただ、金大中大統領の訪日が9月に予定されている。そのため、日韓関係の進展をアピールするにはどうしてもそれ以前、つまり8月内のコンサート開催が必要だったというわけだ。

 CHAGE&ASKAへのコンサート打診は昨年末だったという。つまり、その頃からすでに韓国は北朝鮮とのトップ会談を予見し、日本へのケアを考えていたことになる。その先行きを見通す姿に、いまの金大中政権のち密で骨太な外交戦略がかいま見える。


 ◇  ◆  ◇  ◆


◆日本でのコンサート中止してでも

 ASKAもCHAGEも8月はスケジュールで一杯だった。「だけど、日韓のために何かしたかった。それで決心したんです」(ASKA)

 その代償がCHAGEの仙台イベント、ASKAの代々木コンサートの中止だった。官民をあげて招致に動いた韓国に、一民間人にすぎないCHAGE&ASKAが日本を代表して応えてくれた格好だ。

 その構図からぽっかりと欠けている存在がある。日本の官だ。

 文化交流は双方向でなければならない。韓国側が官民あげて日本の文化紹介と交流に努めている以上、日本の官も民間任せにするのでなく、韓国の文化を自国内に向けて紹介する手立てを講じるべきではないか。「韓国の人々は文化交流に対して大きな関心を持っているのに、日本は無関心すぎる。日韓の温度差を感じました」(ASKA)

 日韓の文化交流は何のためにあるのか?日本の政治家や官僚の感性が問われているように思う。

(2000.09.13 民団新聞)



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