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臨時国会での法案成立を



 「参政権が与えられれば、在日韓国人が日本社会の善良な一員としていっそう寄与することになる」。23日、熱海で行われた韓日首脳会談で金大中大統領は、このように述べながら私たちが熱望している地方選挙権の年内成立を強く要望しました。

 これに対し森首相は、「国会での審議促進を期待したい」と答えるにとどまり、法案成立に向けての明言を避けました。

 私たちとしては森首相の「決断」がなかったことを残念に思っています。


■「今世紀の立法化」注視

 現在、国会に提出されている「永住外国人に対する地方選挙権付与法案」は、与党である公明・保守2党のものと、民主党から提出されたものとがあります。

 昨年10月、与党3党は法案を「成立させる」ことで合意しましたが、自民党は党内の結論が出ていないとの理由で合同での法案提出を見送り続けています。

 このような中、金大統領の訪日日程が確定した8月下旬、自民党の野中広務幹事長をはじめとする執行部は、「このまま党内論議を続けても意思統一は不可能」として、今臨時国会で党議拘束をはずし、自主投票で採決に臨む方針を固めました。

 これは、法案処理が遅くなると日韓関係を損ねてしまうとの危惧から、「両国間の関係をより発展させるためにも今こそ決断し、大統領に明確に伝えることが望ましい」との判断から出たものです。

 また、自民党以外の政党が基本的に賛同しており、自民内においても中堅、若手を中心に一定の賛同が見込まれることから、党議拘束をはずせば、今臨時国会で成立する可能性が大きくなるとの判断からです。

 私たちはやっとこれによって「約束通り今世紀中の立法化が実現する」と期待に胸がふくらみました。


■共生望まぬ一部の動き

 ところが、この党議拘束はずしの方針決定以後、自民党内の一部反対派の動きが激しくなり、臨時国会の開会日である9月21日、「外国人参政権の慎重な取り扱いを要求する国会議員の会」が設立されました。彼らの反対論の骨格は、地方参政権といえども外国人に参政権を与えるのは「憲法違反」の疑いがある。欲しければ「帰化」せよ、というものです。

 これは95年の最高裁判決以前に主張していた「国民主権」論と何ら変わりません。最高裁判決以後は、「保障はされていないが、永住外国人等に地方自治体選挙権を付与しても違憲ではない」とした司法判断に立つのが自然であり、常識なのです。

 最高裁判決は、国政レベルと地方自治体レベルを区分し、国政は憲法15条の「国民固有の権利」からして外国人には付与できないが、憲法93条の「住民」規定から見るとき、永住外国人は住民であるから地方自治体の選挙権を付与しても禁止されないというものです。

 開かれた社会の実現へ

 日本は法治国家です。一部反対派が最高裁の判断を尊重せず、憲法15条のみを意図的に強調するのはフェアでありません。

 私たちが住んでいる自治体の多くが立法化を国に求める意見書を採択しております。民主主義の原理からいって、この地方の意見を国会議員は国会で正しく反映させる義務があります。

 私たちは「住民」としての権利を求めており、世界が日本の決定を注視しています。20世紀最後の今臨時国会での法案成立を私たちは心から望んでいます。

(2000.09.27 民団新聞)



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