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根強い就職差別・集団面接で"カヤの外"

本籍わかり試験受けられず



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大阪府教育委員会
外国籍卒業生の進路調査

 【大阪】大阪府教育委員会は府立高校を巣立っていった在日同胞をはじめとする外国籍生徒の就職・転職状況を95年から5年間にわたって追跡・調査、その結果をこのほど『在日外国人生徒進路追跡調査報告書』(A4版、48ページ)にまとめた。報告書は、民間事業所における根強い民族差別状況が依然として変わっていないことをあらためて裏付けている。報告書を受け取った民団大阪府本部(金昌植団長)は府に対し、引き続き企業への啓発・指導などの対応策を講じるよう求めている。

 今回の調査は在日外国人生徒に対する進路指導の充実、及び事業所への指導・啓発資料とすることを目的としている。91年3月から94年までの4年間に卒した生徒を対象に卒業後4年経った時点での進路を毎年、7月から9月にかけて継続的に調査してきた。対象者は府立高校を卒業した5275人でこのうち2024人から回答を得た。

 これまで高校卒業時の進路統計や差別事例はあったが、大学や短大、専修学校に進学した卒業生の就職活動や入社後の問題点、転職について調査したのはこれが初めて。


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最終面接でいつも不合格

 希望する企業に就職ができなくても、一概に民族差別が原因だったのかどうかは判断しにくい。しかし、「集団面接で、私だけ何の質問もされなかった」(高校、女性)、「(履歴書には本籍を書くスペースがなかったが)入社試験を受け一次二次と進むにつれ、本籍がわかった時点で試験を受けることを拒んだ企業が二社ありました」(高校、男性)という事例は明らかな民族差別ではないかと思われる。なかには「最終面接までいってもいつも落とされた」ため、「別に国籍で落とされたとは限らないけれど、落とされていくにつれそう考えるようになってしまった」という女性もいた。


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入社後も心ない発言に苦しむ

 希望する企業に入っても社内教育が進んでいなければ、雇い主や同僚の心ない発言に苦しめられる。

 「(上司と言い争いになり)外人とは話せえへん」(高校、就職)と言われたり、「社長が日常会話の中で、韓国人なのに雇ってやってるんだと思わせるような発言」(短大、転職)も。例え、日本国籍を取得していても「会社の中での話題が差別のことで、帰化したことなど言えなくて、帰化したものの、こういう差別的なことを聞くのがつらかった。まるで自分に言われているように感じ…やめました」(短大、転職)という事例もあった。


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生徒の適性・希望は二の次

 就職を急ぐ余り、これまで外国籍者の採用実績のあるところに当てはめ、生徒の進路を結果的に閉ざしてしまうことも珍しくない。

 回答の中には、高校卒業時、就職担当の先生に「あなたみたいな人は同族系銀行に就職するのがいいのよ」といわれたのが「いちばんショックだった」と振り返るものがあった。「外国籍の人が就職した企業の話ばかりして、私が希望する職種にはほとんど耳を傾けてもらえなかった」(短大、就職)という例も誤った指導の一例といえる。


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就職差別に立ち向かう

 就職差別は厳然としてあるが、公正な採用選考を行う企業も増えている。

 大手建設会社を志望、履歴書を提出しながら約束の試験日の通知が「友人たちの中で自分だけ無かった」在日韓国人のAさん(大学・短大・専修、就職)。「就職差別がいったいどれ程あるのか見てやろう」と丹念に五十社回った。結論としては「国際市場の中で常に競争している会社や、またその業界を引っ張る立場のトップカンパニーは、もはや『日本』という枠組みを超えて、採用に関しても国籍にとらわれず、『実力本位』でやっている」と結論づけている。


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「就職差別110番」開設

 大阪府教育委員会は中・高校生の就職選考が解禁となった9月16日に合わせて「高校生のための就職差別110番」を設置した。府立高校生の就職差別をなくすため、民団大阪府本部が企業と学校への啓発を要望してきたことに応えた。これまで就職差別事例があっても、学校から報告される例は少ない。当事者が声を上げやすいようにと、府教委では98年から毎年実施している。昨年は2日間でゼロだったこともあり今年は10月17日までの1カ月間、実施する。

 電話番号は06(6944)6210。受付時間は午前10時から午後5時。

(2000.09.27 民団新聞)



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