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日本の民主主義のあり方



 テレビをつけると、ある国会議員が永住外国人の地方参政権について持論を述べていた。いわく「日本国籍を拒絶する者、日本の将来と心中しない者に(選挙権)が与えられるか」というものだった。公共の電波を使って「心中」という不穏当な表現を使うことを恥ずかしいとは思わない、その無神経さに開いた口がふさがらなかった。

 「外国人か、日本人か」の切り口で白黒をつけたがるこの種の児戯は、「国民か非国民か」のモノサシで狂気の侵略戦争に駆り立てたかつての心性と同根である。出自を大切に韓国籍のまま正当な権利主張をする在日を、違法行為をしているかのように世論をミスリードする作為に、数年前のことを思い出した。

 それは川崎市の国籍条項撤廃を受け、ある大阪市議会議員がテレビで話したもので、「国籍条項の次は参政権を言い出す。そうなれば外国人議員の下に日本人が組み込まれるのか」と感情を露わにした一件である。問題は議員という立場が、市民の上に君臨するという物言いに象徴される傲慢さである。いつから議員は社会の木鐸ではなく、権力者になったのだろうか。

 いわゆる参政権反対派は、定住外国人の居住実態や地域社会への密着の度合いを意図的に隠蔽する一方、否定的な外国人イメージを拡散することによって外国人と日本人との対立構造をあおる。「参政権は亡国への道」と、ヒステリックに叫ぶ者がいるかと思えば、ありもしない国政参政権まで自ら議論を勝手に飛躍させて、世論を欺く。

 定住外国人をこれまで通りの上下関係で扱うのか、人権を共有し、地域を構成する一員として横の関係で見るのか。日本の民主主義のあり方を問う国会審議を、この目に焼き付けたい。(C)

(2000.10.11 民団新聞)



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