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今国会で地方選挙権付与を



 永住外国人への地方選挙権付与法案が、自民党の一部議員らの反対によって先行きが不透明になっています。反対派に同調した報道も目に付くようになりました。

 いわゆる反対論の核になっているのは、外国籍のまま日本国民固有の権利である選挙権を付与するのは、日本の国益に反するというものです。さらに、選挙権がほしければ帰化をすればいい、との旧態依然の議論が蒸し返されています。このような思考停止の姿勢で、いつまで問題を先送りしようというのでしょうか。

 これらの論議を聞いて思い出すのは、80年代の外国人登録法改正運動における攻防です。同法の根幹をなす指紋押捺制度は著しく人権を侵害しているから撤廃を、と要求する私たち在日外国人に対して、法務省は「何度も指紋を採取することが公正な外国人管理」と強弁し、警察当局は「スパイ活動を未然に防ぐ」と、本来の制度の趣旨から逸脱し、はからずも外国人総体を治安の対象にしていることを暴露しました。

 周知の通り、指紋制度は民団などの地道な運動により、91年の韓日協議を機に廃止されていきました。そのことで、日本社会が混乱したという話は聞きません。反対論は杞憂に終わった事実は誰の目にも明らかです。


■冷静さ失う反対論

 日本の地域社会の中で、在日韓国人として日本人と同様に納税などの義務を果たし、これまで以上に地域社会に貢献するために一票を求めることが、なぜ「国益」という大仰な言葉でくくられて反対されるのかが理解できません。見えてくるのは、「日本人か外国人か」の二分法で国民感情に是非を訴える意図が根底にあるということです。そこには冷静さは感じられません。

 有事の際にはどちらの国に忠誠を誓うのか、という極論も飛び出していますが、不測の事態を招かないためにも、韓日間の「架け橋の存在」と両国首脳が認めた在日韓国人の力を活用するのが未来志向的です。外国人=害国人とばかりに、恣意的にマイナスイメージを振りまくのにエネルギーを浪費するのではなく、永住外国人といかに共生するかというプラス思考で21世紀の日本のあり方を模索するのが賢明な態度であることは言うまでもありません。

 帰化について言えば、権利と引き替えに国籍放棄を迫る圧力が、どれほど在日同胞の出自を否定し、基本的人権を脅かす行為であるかを熟慮すべきです。「庇(ひさし)を貸して母屋を取られる」作為を私たちは望んでいません。就職の際には国籍条項の壁をはじめ、今も帰化や日本名使用が強要されるという排他性を残したまま、帰化がすべてを解決するかのような小手先のテクニックでは、真の問題解決にはなりません。それは国際化を標榜する日本の進む道とも違うはずです。


■世界が注視する国会審議

 在日韓国人の誕生は、20世紀の不幸な韓日関係からもたらされました。紆余曲折を経て、今や韓日関係は国交樹立後、もっとも良好な関係にあります。両国首脳は未来志向のパートナーシップを確認し、永住外国人の参政権問題についても幾度も話し合ってきました。20世紀に起きたことは、20世紀のうちに解決していくことで合意したものと私たちは信じています。

 あと2カ月で21世紀を迎えます。地方選挙権付与法案を審議する今国会は、永住外国人のみならず、世界が注視していると言っても過言ではありません。国会議員の英知に次世紀の日本がかかっています。

(2000.11.01 民団新聞)



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