民団新聞 MINDAN
在日本大韓民国民団 民団新聞バックナンバー
「21世紀委員会・各部会の方針と展望」

活力ある同胞社会
英知を集めて構築を



■□■□■□■□■□
組織づくり部会
(部会長=徐海錫・民団愛知県本部副団長)

民団組織の機構改革し
若手・優秀な人材育成へ

◆3世が主人公に、帰化者・新渡日も包含し

 創団55周年を迎えるいま、21世紀委員会組織部会では民団が歩んできたこれまでの道程を振り返り、在日同胞社会で何が起きているかを分析し、今後取り組む課題について論議しています。

 半世紀余りにわたり、差別と偏見の根強い日本社会で「在日」が民族的矜持を守り、人間的尊厳を持って生き抜くことができたのは、民団という組織体の存在があったからこそでしょう。


◆在日の権益擁護で活動

 生活上の差別を解消し、子弟の教育や就職問題、あるいは結婚や葬儀に至るまで対応してきました。民団は、在日韓国人の権利擁護と団体であると同時に、時には「かけ込み寺」の役割も果たしてきたわけです。

 民族共同体ともいうべき民団はまた、韓国人と韓国文化の集積地であり、新しいコリア情報の発信基地でもあります。老いも若きも、男性も女性もここに集い、語らい、謳い、まさに民族のエネルギーを燃焼し続けています。

 しかし、組織機構そのものに制度的疲労が生じ、活力を失いかけているのも、また事実です。「在日」の若い世代の組織離れ現象が顕著なのは、社会や組織よりも、個人の生き甲斐が大切にされ、価値観が多元化してきたこともあるでしょう。「在日」の意識の変化とニーズの多様性を認めつつも、民族団体が新たな状況下における同胞の社会・経済・生活レベルまでコミットできなかったところにこそ問題が内包されています。

 そのような中で、全国の民団地方組織の中に、新たな目標に向かって果敢にチャレンジするところが現れています。

 神奈川県本部では、民団の歴史的、人的財産を地域社会に開放し、より積極的な対外活動を通じて相互理解の増進と協力態勢の構築をめざして「NPO法人・民団国際センター」を設立し、活動の幅を広げています。


◆構成や意識も多様に変化

 大阪の泉北支部では、会館の一階を開放し、同胞の高齢者を対象にした「街かどデイハウス事業」を展開しています。

 内外の激しい情勢変化の影響を受け在日同胞社会は、その人口構成、取り巻く経済環境、そして生活と意識などあらゆる面で構造的変化が起きています。

 在日同胞社会が、すでに高齢化社会に突入し、静岡、長野、三重、岐阜、山梨の各県では、在日同胞よりも日系ブラジル人の人口がはるかに多く、日本人との婚姻が8割を占め、帰化者は累計で23万人に達し、日本政府が特別永住者の簡易帰化策選択に一歩踏み出すなど、状況は過去とは変わりつつあります。

 このような劇的な変化が次々と起こり、規制の枠組みが崩れていく状況下で、民団は21世紀に向けた活力ある組織づくりのための新しい理念と精神を提唱していくべきでしょう。それとともに、民団の全面的な組織機構改革を断行し、若くて優秀な人材の育成に着手すべきであります。

 21世紀の民団組織のトップバッターは、在日3世であり、帰化同胞、ニューカマーも当然選手登録すべきである。


■□■□■□■□■□
人・文化づくり部会
(部会長=李明・京都韓学教頭)

各民族の「貢献する文化」が新しい社会つくる

◆最優先は人格教育、民族的な主体性を確立

 在日同胞が、希望のある21世紀を迎えるためには、20世紀に起きた問題は20世紀中に解決しておかねばなりませんでした。しかし、一方の当事者による地方選挙権法案の先送りに見られるような対応によって20世紀中の問題処理もままならない状況にあることも現実です。

 しかし、在日同胞の希望ある21世紀に向けての解答づくりはすでに始まっています。


◆人権や平等の理念が大前提

 人間がつくったもの全てが文化であるということを前提とするならば、最優先すべきは「人づくり」であり、「人づくり」のためには家庭、学校、地域、社会での教育が大きな役割を果たします。特に、在日同胞にとっては、民族教育を経た人格教育が必要であり、90年代に入り、日本で在日同胞の民族教育権確保の主張が高揚してきた背景には、民族的アイデンティティの確認が、人格教育の根幹をなしていると認識されてきたためです。人格教育は新世紀を担う個々人の人間の主体性を構成する言語、文化を数量に関わりなく、違いをそのままに認め、尊重する多文化教育を要求し、同化と分離主義のいずれも拒否し、「多様性の中の統一」を求めながら、個の解放を図ります。

 つまり、同化教育を排し、民族的アイデンティティを確認する統合教育を経て、多文化教育へと進むこの道筋は、在日同胞だけでなく、統一された本国国民や日本国民にも要求される道筋でもあります。

 「統合」は、社会内に共存する各民族集団が文化的個性を維持し、互いに交流しながら積極的に社会に参加することを意味します。「人権」や「平等」の理念が前提となり、相互依存が求められ、各民族集団の文化がお互いに、新しい社会をつくるために「貢献する文化」になります。「差異」は、否定されないのです。


◆社会参加には参政権が必要

 21世紀において、多文化共生をめざすためには社会参加が必要で、さらに社会参加のためには参政権の必要性は論を待ちません。開かれた日本社会を構築するためには、定住している外国籍市民に参政権を与えるための法整備が急がれなければなりません。

 在日同胞は、希望ある21世紀を迎えるために、日帝の残滓(し)である通称(日本)名を払拭しなければなりません。名前は本来、個人の存在のそのものを示すものですが、日本名が自分自身を表すと言い始めている2、3世の民族的アイデンティティは、クライシスの状態にあります。同化と棄民化にさらされ続けた結果、多くの在日同胞は日本の価値観に身も心もゆだねているのです。韓日の狭間で揺れ動き、呻吟してきた多くの在日同胞は民族教育の洗礼を受けることもなく育ち、在日韓国人として集団の一員意識や自覚がないままに、国籍にこだわらないと言いながら、日本国に帰化して生きようとしています。在日コリアンの文化をつくり出すとも言っています。

 さて私は、祖国が統一されるまで、あえて少数派になってゆくであろう在日韓国人として、この21世紀をスタートします。


■□■□■□■□■□
暮らしづくり部会
(部会長=李清一・イカイノ保育園園長)

多民族・多文化共生社会の実現めざし

◆多文化の価値観求められる「異なる豊かさ」

 在日同胞の暮らしを考える上で大きな変化に少なくとも次の3つが上げられます。

 1つ目は、昨年六月の歴史的な南北首脳会談の実現と「共同声明」の発表によってもたらされた、同胞社会の変化です。

 それによって在日同胞社会の至るところで南北同胞の新たな交流が始まっています。在日同胞社会を規定していた枠組みが大きく変わり始めました。


◆在日取り巻く周辺状況変化

 2つ目は、日本社会の変化です。

 昨年4月1日より、すべての外国人に指紋押捺制度が撤廃されたことに象徴されるように、ここ30年間の在日同胞による基本的人権獲得運動は大きな成果をあげ在日同胞のみでなく、在日外国人の人権確立にもつながり、日本政府の外国人政策に影響を与えています。

 3つ目は、在日同胞社会の変化です。

 アジア地域や南米からの人々の増加に伴い、現在、外国人登録総数に占める韓国・朝鮮籍数は40%程になっています。

 在日同胞社会の構成は、戦前からの定住者およびその子孫である2世、3世、4世、新渡日同胞、日本国籍取得者、国際結婚による家族およびダブルの子供の増加などと多様化している。また、在日同胞社会も日本社会と同じく、少子化・高齢化の時代を迎えています。

 暮らしづくり部会は、在日同胞社会やそれを取り巻く状況の変化およびその実態をより正確に把握し、従来のライフスタイルを問い直し、新しい時代における在日同胞社会のビジョンを提言することを目指しています。

 部会で検討を予定しているテーマは(1)同胞のライフサイクルとライフスタイルの現状と課題(2)同胞の世代別価値観と指向性(3)地域社会での「共生」の実態と課題です。


◆地域住民として共に生きていく

 すでに、李節子氏(東京女子医大助教授)により、『在日外国人の人口動態―韓国・朝鮮』(40ページ)が提示され、在日同胞社会の状況を示す基礎資料として、今年の3月に資料集として出版が予定されています。

 李漢ケイ氏(大阪泉北支部支団長)は民団の建物を使用した地域での同胞老人福祉への取組みの報告を通して、民団の今後のプロジェクトの在り方に新しい提言もしています。

 在日同胞社会が歴史は100年になろうとしている今日、ライフスタイルの見直しや意識変革が求められています。

 キーワードは「男女共同参画」「地域社会への参加」「共生社会の実現」などです。

 私たちの住む日本社会が、多様な民族や文化によって成り立っているという価値観を大切にし、民族的・文化的な独自性や異なることの豊かさを指向することが私たちに求められています。

 在日同胞が地域住民として受け止められ、日本人と同じ人権を享受できるのが当たり前となるような共生社会の形成に積極的に参与することが期待されています。


■□■□■□■□■□
基盤づくり部会
(部会長=李起昇・公認会計士)

インターネット時代に対応したグローバルな視点を

◆コリアネット構築へ世界経済に目を向ける時

 基盤づくり部会では、商銀の銀行化問題について、主に議論してきました。そして12月19日に、提言を提出しました。

 緊急なテーマなので、部会長が叩き台を作り、それを委員で討議するという形で研究を重ねました。

 今後、部会では21世紀のあるべき企業活動について討議をしていくことになると思います。ここから先は個人の見解です。


◆在外コリアンのつながりが必要

 今後は最早、在日というくくりで経済活動を議論すべき時ではありません。インターネットの影響で、経済は世界を一つの単位として動いています。そのような時代に必要なのは、在外コリアンのネットワークの構築であり、教育の充実です。

 民族学校といっても、ウリマルをまともに話せない程度の教育しかできないような学校は、今後は淘汰される可能性があります。

 世界経済の流れから言えば、アジアに於いては円通貨圏および、自由貿易圏を作るのが自然な流れです。ただ、日本が世界戦略を持ってない以上、中国がそれをできるくらいの経済力を持つまでは、アジア地域経済の混乱は続くと見なければなりません。

 混乱を乗り切る力は、ネットワークであり、ネットワークを支えるのは、人の繋がりです。人の繋がりを支えるのは、価値観の共有です。究極は、人としての価値観で勝負できますが、教育というもので共有できる部分があれば、それは非常に楽です。

 私は、アメリカで在日のための教育を行おう、としている人たちと繋がりがあります。彼らは学校を、アジア人のための学校とすることを目指しています。日本では色んな規制のせいで、まともな教育をできません。であるならば、できる場所、アメリカでやってしまえという発想です。経済にしても、いずれそうなると思っています。

 この点民団系の人は、まともな民族教育を受けていません。韓国や韓国人を悪く言う人はしこたまいますが、良いところを見ようとしない弊害があります。こんな事では、コリアンネットワークに乗り遅れてしまいます。


◆分かりあうには意思疎通が必要

 韓国で騙され、痛い目にあったという人に、私はこういいます。「どこの国でもそうですが、外国語を操って、近づいて来る者には、ろくな奴が居ないことが多いのです。あなたは、韓国人が嫌う韓国人としか付き合っていないのです。韓国人が好きになるような韓国人と付き合ってみて下さい」

 本当に分かり合うには、意思の疎通が必要です。上手下手かは問題ではありませんが、言葉は必須です。

 韓国で、あるベンチャー企業が上場しました。その社長は、立ち上げの頃、社員に給料が払えなくて、日本で土方仕事をして社員の給料を払いました。いよいよ給料を払えないとき、ある人が、黙って50万円貸してくれました。社長はその恩を忘れず、公開の前に日本に来てその人を捜し出し、値上がり確実の株を上げました。こういう人と付き合わないと、ビジネスはうまく行きません。

(2001.0101 民団新聞 新年特集号)



この号のインデックスページへBackNumberインデックスページへ


民団に対するお問い合わせはこちらへ